最悪なタイミングで世界大恐慌の余波を受けた日本
世界大恐慌は、日本にとって最悪なタイミングで発生し、他国を侵略しようという考えを加速させました。
世界大恐慌が起きる前、日本は関東大震災や昭和金融恐慌により経済の立て直しに追われていました。ようやく経済が立ち直り、1929年2月に各国から急かされていた金本位制を復活します。しかし、同年の10月に世界大恐慌が起こり、金解禁による不況とあわせて日本経済は二重の打撃を受けました。
日本はアメリカに向けて生糸の輸出をしていましたが、大恐慌が起きてアメリカは日本の製品を購入する余裕がなくなってしまいます。当時の日本では、生糸が輸出品の多くの割合を占めていたため、生糸の輸出減も、日本の経済にとって大きな痛手でした。
1930年には生糸や鉄鋼、農産物などの物価が急激に下がり、中小企業の倒産や労働時間の短縮が相次ぎます。他国と同様に、街には失業者があふれ、物を買うお金もないため経済は衰退していきました。
もはや自国だけで景気を回復するのは不可能という結論にいたった日本は、広大な土地を持つ満洲（中国東北部一帯）を占領・開拓して景気を回復させようと考えました。こうして日本は、第二次世界大戦へ進んでいきます。
世界大恐慌への対応
雇用回復を目的としたニューディール政策
ニューディール政策は世界大恐慌から抜け出すことを目標にしたアメリカの経済政策の総称です。
1933年にフランクリン＝ルーズヴェルト大統領が示した新政策で、「救済」「回復」「改革」の3つを理念にアメリカ経済の再建を目指しました。具体的には、生産の管理や雇用の創出、労働者保護、銀行の監視が主な内容となります。
今までアメリカの経済は完全に市場に委ねられ、政府はこれをコントロールしてはいけないという慣例がありました。しかしニューディール政策ではこの慣例を打ち破ったのです。ニューディール政策により、アメリカ経済は一時的に活気を取り戻しました。
世界貿易を衰退させたブロック経済
多くの植民地を持ち自国だけで経済が回る大国は、自国の経済を保護するためにブロック経済を構築しました。
ブロック経済とは、自国の植民地、または同じ通貨を使っている国同士が低い関税でやりとりするための同盟を結ぶことです。対して、同盟を結んでいない他国に対して、高額の関税や貿易協定などで輸出入を制限します。
輸出入を制限する目的は、自国に他国の商品を入れないことです。なぜなら、他国の商品が入ってきてしまうと、自国の商品と競争になってしまいます。好景気ならば競争は経済の発展につながるため、ある程度なら良いのですが不景気化では、自国の企業を衰退させてしまいかねません。
自国の経済を考えると、ブロック経済は有効な手段と当時は考えられていました。しかし世界経済にとってはブロック経済は国際分業体制を崩すため、良い状況ではありません。実際、ブロック経済は植民地を持たない国々にとって、多大な悪影響を与えたのです。
世界大恐慌の影響
『独裁国家』ファシズム
世界大恐慌はファシズム台頭のきっかけを作りました。
ファシズムとは、独裁者によって国民を主体とした政治が否定され、強力な軍事力によって国民の権利や自由が制限される国家の形を言います。昔の天皇を中心としていた日本や、ドイツのナチスなどが例に挙がります。
第一次世界大戦後、さらに激しくなった帝国主義（強力な軍事力によって植民地や勢力の拡大を目指す政策。個人の自由は制限され、国家の利益が最も優先される）の各国では利害の対立が起きていました。
帝国主義の動きは、イギリスやフランス、アメリカなど国力のある国が協力して抑えこんでいましたが、世界大恐慌が起こると国力に富む国はそれどころではなくなり、協力体制が取れなくなってしまいます。
さらに世界大恐慌により、経済的にもともと不利だった帝国主義国家は破綻、もしくは苦しい状況へと追い込まれました。ドイツは第一次世界大戦の莫大な賠償金に苦しみ、植民地も国内資源も少ないイタリアは経済破綻し、日本は農村不況により経済不況に陥っていたのです。
これらがきっかけとなり、帝国主義国家では資源と経済力を他国に求める動きが強まります。ドイツではヒトラーが首相になって独裁政治を開始し、イタリアではムッソリーニが独裁権を握り、日本では天皇信仰を利用した軍部中心の政治となり、各国にファシズムが台頭したのです。
