タージマハルとは?いつ、どこで、誰が作った?【意味や由来、歴史、現在の姿について紹介】

タージマハルはインドの北にある、ウッタル・プラデーシュ州最大の都市・アーグラにある美しい建物の名前です。その美しさがいろいろな場面で紹介されているため、一度はタージマハルの姿を見たことがある人も多いのではないでしょうか。

タージマハルの美しさは一度見たら忘れられない

しかし、タージマハルという名前の意味や、誰が何のために、いつ建てたのかを知っている人は少ないはずです。宮殿やホテルのようにも見えるタージマハルは実は意外な目的のために建てられました。

今回は、そんなタージマハルについて、建物が持つ意味や歴史から現在の姿まで詳しく解説していきます。詳しく知れば知るほど、今自分が住んでいる地球上にタージマハルが存在していることに、きっと感謝したくなりますよ。

この記事を書いた人

一橋大卒 歴史学専攻

京藤 一葉

Rekisiru編集部、京藤 一葉(きょうとういちよう)。一橋大学にて大学院含め6年間歴史学を研究。専攻は世界史の近代〜現代。卒業後は出版業界に就職。世界史・日本史含め多岐に渡る編集業務に従事。その後、結婚を境に地方移住し、現在はWebメディアで編集者に従事。

タージマハルとは何か?

タージマハルはインド北部、ウッタル・プラデーシュ州最大の都市・アーグラに建てられている美しい建物で、宮殿でもホテルでもなく、大きな墓廟(墓の入った建物のこと)です。

墓廟だけでなく、敷地内には庭園が整備され、モスクや集会所も建っていますし、そもそも門だけでも見る価値のある美しさを誇っています。

これらすべてを含む、タージマハル全体の施設が完成したのが15世紀半ばのことです。

いつ、誰によって造られたの?

タージマハルを建てた皇帝、シャー・ジャハーン

タージマハルは、16世紀から19世紀にかけてインドを治めたムガル帝国の5代目の皇帝、シャー・ジャハーンによって建てられました。タージマハルが建っている都市、アーグラはムガル帝国の都でした。

大理石を使って建てられた白い姿は遠目からも美しく、贅沢なことからも分かる通り、時間と費用をかけて作られています。タージマハルの建設が始まったのは1632年、すべての工事が終わったのは1653年と言われています。

実は王妃のお墓だった

王妃の名前はムムターズ・マハル ペルシア系貴族のアーサフ・ハーンの娘だ

タージマハルはシャー・ジャハーンの妻、ムムターズ・マハルの墓廟です。貴族の娘だったムムターズ・マハルがシャー・ジャハーンと結婚したのは1612年のことでした。彼女は亡くなるまでに、シャー・ジャハーンの子どもを14人も生みましたが、亡くなった時にはまだ36歳という若さでした。

タージマハルを造った目的は愛する妻のため

1631年、ムムターズ・マハルは妊娠中にもかかわらず、夫の戦に同行していました。しかし、出産後まもなく、病のために亡くなってしまいます。このときに彼女は、後の世に残る墓を欲しがったと言います。1度は亡くなった土地(ブルハーンプル)で葬られましたが、このとき既に、愛する妻のためにタージマハルの建設が計画されていました。

遺体がアーグラに帰ってくるまで、週に1度はシャー・ジャハーンがムムターズ・マハルのもとを訪れていたと言いますから、愛する妻のために何かせずにはいられなかった彼の気持ちが伝わってくるようです。

タージマハルの名前の意味とは

タージマハルは、ムムターズ・マハルのムムが取れて、インド風の発音になってできた名前だそうです。ムムターズ・マハルはペルシャ語で宮殿の光、つまり宮廷で選ばれた者という意味があります。これは先代の皇帝が彼女に与えた称号でしたが、彼女がいかに美しく魅力的だったのかが想像できる名前だと思います。

タージマハルは王冠宮殿、宮殿の王冠などと直訳できますが、それもうなずけるほどの美しさを誇っています。美しい墓廟は、シャー・ジャハーンの王妃への愛の証だったのです。

タージマハルはこんな造り

タージマハルが建つ独特の細長い敷地
(薄赤色の部分に墓廟が建つ)

タージマハルが建っている敷地は、南北560m、東西303mの長方形をしており、もっとも北側の奥に墓廟が建てられています。

これはムガル帝国では他にはない建設方法です。ムガル帝国の2代目、3代目の皇帝の墓の敷地は正方形で、墓廟は中央に建てられており、四方の門のどこから入っても同じ景色が眺められるのが特徴です。

シャー・ジャハーンは愛する王妃のために、唯一無二の墓廟を建てたかったのでしょうか。

際立って美しい!王妃が眠っている墓廟

尖塔の1つ・今も王妃に仕えている?

敷地の北の奥・中央に高さ5.5mの段が作ってあり、その上に王妃の墓廟が建てられています。白大理石で作られたタージマハルが5.5m高くなることで、一層美しく光り輝くように感じられます。

段の周りには親族などの墓石が置かれることが多いのですが、タージマハルではそれがありません。タージマハルははあくまでも王妃1人のため、ということなのでしょう。

また、墓廟を取り囲むように4本の尖塔が建っています。正方形の四隅を切り落とした変形八角形の建物の上に、丸い屋根が乗っている墓廟は、近くから見ると威厳がありますが、遠くから見たときのバランスが良くありません。

段の周りに4本の塔を建てることで、遠くから見たときに全体のバランスを良く感じさせる働きもあるそうです。4本の塔は王妃に仕える4人の侍女を表しているとも言われています。ここにも死後の王妃を労るシャー・ジャハーンの心が感じられます。

独特!モスクと集会所を備えたお墓

こちらは集会所・モスクもまったく同じ作りだ

墓廟の西側にはモスク、東側には集会所が建っています。どちらも赤砂岩造りの建物で、向かい合って建っており、白い墓廟との色のコントラストも美しく感じられます。

モスクと集会所は建物の外観はそっくりですが、中には大きな違いがあります。モスクには礼拝のためにミフラーブ(聖地の方角を示すための壁の隙間)があり、集会所には客を迎えるために使える広いスペースがあります。

ところで個人のお墓になぜ、モスクや集会所が必要なのでしょうか。

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