北斎漫画の中身は?
気になるのは北斎漫画の中身。一体どんなものが描かれているのでしょうか?
北斎が晩年まで続けて描いており、非常に人気が高かったものなだけに気になる人も多いでしょう。ただその内容に関しては毎度異なっていて、彼の発想力や着眼点に目を見張る部分も多いのが北斎漫画なのです。
では、北斎漫画の詳しい中身や概論について説明していきます。
全15編で枚数は4000枚以上
北斎漫画はすべて合わせて4000枚以上のスケッチからできています。これらはすべて本になっており、全15編です。
しかし、14編・15編に関しては北斎の作ではないという説もあります。葛飾北斎の研究で第一人者と呼ばれた飯島虚心はこの2編を北斎の作とすることに否定的な立場を表しています。
その理由として、14編と15編が北斎の死後に編纂・出版されているからです。確かに最後の出版が、北斎の死後30年後というのもおかしな話。もしかすると弟子や別の人物が北斎の名を借りて描いたのかもしれませんね。
白黒とカラーの2種類
「気の向くままに描いた」というだけあり、その描き方は一定していません。色のついたカラーのものもあれば、筆を走らせただけであろう白黒のものまでさまざま。色がついていたといっても朱色が追加されたぐらいで、どの作画も非常に単純化されています。
その理由は、北斎漫画は絵の描き方を集めた、いわゆる指南書だったからです。北斎は筆だけを使った簡単な画法から、当時「ぶんまわし」と呼ばれていたコンパスを使った絵の描き方まで北斎漫画で公開していました。
もちろん自身の真髄の部分には迫っていないでしょうが、これがそののち絵手本として北斎漫画が活躍する最大の理由となるのです。
出てくるものはいつもバラバラ
北斎が参考にした鍬形の『略画式』は動物や昆虫がメイン。一方の北斎漫画の方は、人が描かれているかと思えば動物もおり、中には神様が登場したりとさまざまです。北斎の得意分野である波も当然描かれており、1つのものに固執しない感性の豊かさには目を見張るものがあります。
中には、今でいうパラパラ漫画もあり、妖怪を紹介するようなページもあり、四天王や風神雷神といった神様もありで、見ていて読者を飽きさせません。なぜこれほどのテーマが描かれているかというと、これもまた絵の指南書だったからという理由に尽きます。北斎漫画1冊でさまざまな構図の絵を描くための手本としたのでしょうね。
北斎漫画が与えた影響
北斎漫画が与えた影響とはどのようなものだったのでしょうか?
北斎は有名な浮世絵画家でありながら、読本の挿絵であったり、美人画であったりとさまざまな方面で活躍し、その才能の豊かさを発揮しています。では、その中にあって唯一「漫ろ」に描いた作品である北斎漫画は、発表後どのように受け入れられていったのでしょう。また、これを見た他の人たちにどのような影響を与えたのでしょうか?詳しく見ていきましょう。
日本に与えた影響
日本国内では言わずと知れた葛飾北斎ですが、北斎漫画についてはあまり触れられる機会がありません。しかし、やはりこの作品に感化された人は後世にも多く存在したことは間違いありません。
では、日本国内の北斎漫画の影響はどんなものだったのでしょう?ここでは日本国内での影響を紹介していきます。
日本の画家のお手本に
北斎漫画は娯楽のために出版されたと思っている人が多いのですが、実は北斎はあまりそんなことを考えていませんでした。北斎が北斎漫画を出版したその理由は、画家になりたい人向けの教本でした。
先にも少し書きましたが、筆を用いた画法の他、コンパスを使った描き方などにもフォーカスしているあたりはその裏付けとも言えます。
実際、北斎漫画は浮世絵とは違って非常に高額で、一般市民が手軽に購入できるものではありませんでした。制作過程で時間がかかるのはもちろんなのですが、本気で画家を目指す人に向けて作ったものだと考えれば納得がいきますね。
映画化へ
北斎漫画は、映画へと形を変えていきました。タイトルそのままの「北斎漫画」は緒形拳主演で1981年に公開されています。
スランプに陥っていた鉄蔵(北斎)がお直という不思議な雰囲気を出す女性の絵をどうやったら描き上げられるかにフォーカスした作品です。直接北斎漫画とは関係ないのですが、お直を描く過程でさまざまな技法を打ち出した北斎の姿を描き出しています。
時代が時代なだけにほんの少しだけ過激なシーンがありますが、タコが女性に絡みつく構図を生み出したのも北斎です。観察力はもちろん、想像力も強かったのですね。