アメリカ
アメリカの帝国主義は南北戦争後に顕著になりました。南北戦争後、アメリカは初めて1つの国家としてナショナリズムを得て、北部を中心に工業国家建設を押し進めます。アメリカの工業生産の成長は著しく、1880年にはイギリスを抜いて世界一の座に輝きました。
ここまで成長するまでに、イギリスと同様の過程を進んでおり、重化学工業が発展すると巨大な資本を必要とするようになり、独占資本が形成されます。そうして資本主義経済は帝国主義の段階を迎えました。
特にロックフェラー、カーネギー、モーガンなど一代で財を築いた大財閥が政治へと干渉します。それに危機感を持った政府は、独占の侵攻を食い止めるため、それを抑制する法律として反トラスト法を制定しますが、無力でした。
1890年代になるとフロンティア(未開拓の辺境)はなくなり、アメリカは海の向こうに領土を求めました。
1898年にアメリカ初の帝国主義戦争である米西戦争に勝利し、プエルトリコ・フィリピン・グァムを手に入れ、キューバ独立を認めさせて支援しながらも保護国化します。また同じ時期にハワイを併合し、アジア進出のための拠点としてフィリピンを得ました。
これにより、かつて植民地だったアメリカは一躍、植民地を持つ大国となったのです。
ロシア
イギリスで帝国主義思想が強まった1870年代、ロシアでは社会主義革命運動「ナロードニキ運動」が始まりました。この運動は農民への革命参加を促す目的で行われましたが、保守的な農民を動かすことはできませんでした。
これに絶望した革命運動家たちはテロリズムやニヒリズム(虚無主義)に走り、1881年に皇帝アレクサンドル2世が革命家によって暗殺される事件が起きると革命運動は一気に弾圧されました。
露土戦争後のベルリン会議で、バルカン半島方面への南下政策を取りやめなければいけなくなったロシアは、代わりに東アジアでの勢力拡大を進めました。
すでにウラジヴォストーク港を拠点に日本海方面・満洲・朝鮮半島へ進出の動きを見せていましたが、さらに1891年シベリア鉄道の建設を開始して、より十分な準備を始めます。この鉄道はロシアの資本主義形成にとって必要不可欠でしたが、フランスの援助を受けた不完全なものでした。
時はすぎ、1894年に即位したニコライ2世は旧来の制度や低い生産力など古い体制のまま、西欧列強に対して帝国主義的な膨張政策を展開します。他国と違い、資本主義が発達しないまま帝国主義へと移行しました。
ロシアは中国分割に参加し、旅順・大連を得て東方進出の足掛かりにします。また列強の侵略に反発した中国民衆を鎮圧するために満洲へ出兵。ここまではよかったのですが、なんと事態解決後も兵をそのまま駐屯させ、一気に勢力圏を拡大してしまおうという動きを見せました。
これを見た日本とイギリスは反感を抱き、特にイラン方面でも対立していたイギリスは1902年に日本と日英同盟を締結します。ロシアと日本の対立は深まり、1904年には日露戦争へと発展しました。
当初はロシアが勝つと思われたこの戦争ですが、この戦争をきっかけにロシアの民衆の不満が爆発します。というのも、ロシアの帝国主義的な政策は、民衆の犠牲によって行われていたからです。日露戦争をきっかけに国内では第一次ロシア革命が勃発し、ロシアは敗北します。
日本
日本の帝国主義は、主に第一次世界大戦〜第二次世界大までの政策を指します。
黒船が来航し、海外の驚異を身をもって知った日本は明治維新以後、西欧の列強諸国に追いつくために急速に近代化が進みました。富国強兵や機械工業を押し進め、西欧列強の植民地政策に食らいつきます。
結果として、日本は日清戦争や日露戦争、韓国併合、第一次世界大戦を通じて大陸への進出を達成します。台湾や朝鮮、関東州、南洋群島などを支配し領地を広げて行った日本。支配領域では皇室への忠誠や同化を目的とした教育が行われ、他国を日本色に染めていきました。
大韓民国では、この時代を「日帝時代」と呼んでいます。
努力の末、列強諸国の仲間入りを果たした日本ですが、第二次世界大戦で敗北すると日本の帝国主義は崩れ去りました。
第一次世界大戦
列強諸国で高まった帝国主義ですが、第一次世界大戦が終結すると緩み始めます。しかし、この時期は大戦に敗北した国の植民地が戦勝国に分配されるなど、帝国主義の再構築・強化につながる動きは残っていました。
帝国主義が崩れたのは、第二次世界大戦後です。
列強諸国が植民地側の独立要求を跳ね除けることができなくなり、世界各地ではたくさんの独立国家が誕生しました。
帝国主義の現状や影響
第二次世界大戦が終結し、帝国主義が崩れて約80年が経ちました。現在の世界では帝国主義的な侵略、つまり植民地支配を許さない国際秩序が生まれました。これは経済面でも同じです。
もちろん、独占資本主義自体の侵略性や拡張欲がなくなったわけではありません。しかし現在の時代の変化では、植民地支配や領土を争っての戦争、という形でそれが現れる条件はなくなりました。
今や帝国主義は古い時代のものとなったわけですが、その影響は今日にも残っています。わかりやすいのは、アフリカの地図です。
帝国主義列強により植民地となっていたアフリカの各国境線は、まるで定規で引いたような直線になっています。普通、国境と言えば山や川の辺りに引かれるのが通常で、きれいな直線にはなりません。
では、なぜアフリカの国境線が直線なのかというと、ヨーロッパの列強たちが勝手に相談しあって地図の上に定規で国境線を引いたからです。筆者が高校生の頃、なぜ一部分だけきれいな国境線になっているんだろうと疑問に思いましたが、植民地分割の影響だったんですね。
帝国主義がよくわかるおすすめ書籍
帝国主義と世界の一体化(世界史リブレット)
帝国主義の歴史や理論、移り変わりについて書かれた総合的な本で、これを読めば大体のことがわかります。
広く深く紹介しているため、全体的に知りたい方におすすめの本です。
帝国主義(ヨーロッパ史入門)
ヨーロッパの帝国主義について書かれた本で、政治や経済、外交、思想、文化と幅広い視点から帝国主義について論じています。
社会主義論や世界システム論などさまざまな理論が出てくるため、それらに興味のある方におすすめです。
帝国主義に関するまとめ
帝国主義について解説しましたが、いかがでしたか?最後に本記事の内容について簡単にまとめます。
- 帝国主義とは、政治や軍事、経済などで他国を支配する思想を指し、学者たちによって使われた用語
- 帝国主義が広まった理由はナショナリズムの高まりと技術の発展により侵略が容易になったこと
帝国主義は今や過去のものですが、しかし実は現代にも帝国主義的な活動をしていると度々批判を浴びる国があります。世界の警察であるアメリカ合衆国です。アメリカは中東の戦争に何度か介入しており、親米の国には優しく、反米の国には厳しい態度を取ってきました。
アメリカの大統領選はよくニュースで取り沙汰にされますが、その理由の1つとして上記が挙げられるのです。アメリカは大統領によって方針が変わります。そのため、大統領によってはガラリと世界が変わることもあるため、みんなが注目しているのです。
歴史を学ぶことによって日々の何気ないニュースからさまざまな憶測を立てることができるようになります。もっと歴史について知りたい!という方はぜひ他の記事もご覧ください。
長くなりましたが、ここまで読んでいただきありがとうございました。