ルネ・マグリットはどんな画家?生涯・年表まとめ【代表作品も紹介】

1939年 – 41歳「第二次大戦とマグリット」

侵略されても祖国にとどまる

「黒い旗」(1937年、スコットランド国立近代美術館蔵)

1939年、マグリット41歳になるこの年の9月にドイツ軍はポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が勃発します。多くの画家がフランスへと避難する中、マグリットもまた一時的に南フランスのカルカソンヌにたどり着きます。しかし、マグリットは妻・ジョルジェットが虫垂炎でブリュッセルにとどまっていたため、妻の元へと戻りました。パリのシュルレアリストたちはアメリカへと亡命しますが、マグリットたちベルギーのシュルレアリストは祖国にとどまっています。

画家・マグリットの戦い

「幸福の兆し」(1944年、ブリュッセル・バーガー・コレクション蔵)

その後のマグリットは、ファシズムに対抗するかのように明るく柔らかい画題が増えてゆきます。加えて、多くの個展、グループ展に出品するようになりました。1943年頃から1947年頃までのちに「ルノワール」の時代と呼ばれる作品群を制作しています。1944年9月、イギリス軍がベルギーを開放。1945年5月にはドイツが降伏。ヨーロッパでの戦闘はようやく収束へと向かいました。

「省略」(1948年、ベルギー王立美術館/マグリット美術館蔵)

1947年、パリのシュルレアリスムを牽引するブルトンとの対立から、シュルレアリスム国際展への招待が取り消される事態に見舞われたマグリット。翌1948年のフランスでの個展を復讐の機会とするため、のちに「ヴァッシュ」の時代と呼ばれる作品群を制作、1948年にはパリで初の個展をひらきヴァッシュ様式の連作を出品しました。

1950年 – 52歳「戦争を超えて、晩年のマグリット」

石化した世界の表すもの

「自然の驚異」(1953年、シカゴ近代美術館蔵)

1950年以降、石化した世界を描いた作品が増えてゆきます。代表的なものは「会話術」「自然の驚異」など。冷たく硬い世界を描くことで、移ろいやすく無常な現世を表現しているとも考えられます。これらの作品は、二度の世界大戦を終えた世界に平和の尊さを訴えかけているかのようです。

回顧展

「魅せられた領域」(1953年、ベルギー、クノッケ・ル・ズートのカジノ蔵)

1954年、マグリット56歳になる年に最初の大回顧展が行われました。この前後の時期には有名な2点の壁画制作を行っています。1953年のクノッケ=ヘイスト市営カジノの壁画「魅せられた領域」、1957年シャルルロワのパレ・デ・ボザールの壁画「無知の妖精」です。

1961年~62年にかけてはフランスのシュルレアリスト画家イヴ・タンギーとの共同展を巡回にて行います。1962年にはクノッケ=ヘイストで大回顧展、1965年にはニューヨークで回顧展が行われました。

1967年 – 68歳「ルネ・マグリット、逝く」

「騎手のいる風景」(1967年、個人蔵)は未完のまま残された遺作として知られる

1967年8月15日、ルネ・マグリットはすい臓がんのためベルギー国・ブリュッセルにて死去しました。享年68歳。その謎めいた、しかし奥底に人類への愛と未来への希望をたたえた作品は、いまなお多くの人を魅了しています。ルネ・マグリットは今この瞬間もブリュッセル・スカールベーク墓地に、愛する妻のジョルジェットとともに眠っています。

ルネ・マグリットの関連作品

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マグリット 光と闇に隠された素顔

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ルネ・マグリットについてのまとめ

今回は、シュルレアリスムの代表画家であるルネ・マグリットについて、その生涯を概観しつつ各時代の代表的絵画をご紹介しました。生真面目で自律的な性格のマグリットは、芸術家にイメージされがちな奔放さとは異なる個性を持っていました。それなのに、作品はまた全然イメージが違っていて、その冷静と情熱のギャップがマグリット最大の魅力ではないでしょうか。

人類史に残る第二次世界大戦が世界中の人々の人生を翻弄した時代にあって、マグリットはコツコツと自身の信念--人間愛を作品に描き出していきました。今回ご紹介した他にも、たくさんの素晴らしい作品があります。この記事を読まれた方が、マグリットの絵画に興味を持たれ、1点でも多くのマグリット作品に出会っていただけたら嬉しいです。

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