佐川一政はどんな人?なぜパリ人肉事件を起こした?【彼の生い立ちや性格についても紹介】

佐川一政の年表

1949年 – 0歳「佐川一政、誕生」

幼少時の一政・線が細く内向的な感じだ
出典:ワラウクルミ

一政の家族

一政の父は明(あきら)といい、結婚して佐川家に婿入りをしました。一政の前に長女に恵まれましたが、この子は生後10日で亡くなったそうです。一政が無事に成長するように、妻とともに過保護とも言える育て方をしましたが、1人子どもを失っていることを考えると、無理もないことだったでしょう。

明は伊藤忠商事から出向して栗田工業(水処理装置・薬品の製造開発が主な業務)の社長として、再建に力を尽くしたため、再建の達人とも呼ばれていました。事件後はパリで弁護士を雇い、息子のために力を尽くしますが、心労のために脳梗塞で倒れてしまいました。

一政と1歳違いの弟、純(じゅん)は東京デザイナー学院を卒業後、大手広告代理店に就職しますが、50歳で退職、油彩画家に転身しました。2013年からは兄の介護をする生活をしていますが、2017年には一政とともに仏米合作の映画「カニバ」に出演しています。

聖ミカエル学園

一政は聖ミカエル学園の小学校を卒業しています。聖ミカエル学園は神奈川県鎌倉市の旧三井財閥の所有地で、幼稚園から高等学校までを運営していました。女優の前田美波里さんは、一政と一年違いで同じ小学校を卒業しています。

聖ミカエル学園では、現在も残っているのは幼稚園だけです。一政が聖ミカエル学園でどんな子ども時代を過ごしたのか、とても気になります。

1964年 – 15歳「佐川一政、高校入学」

昭和3年創立の歴史ある県立鎌倉高等学校
出典:Wikipedia

自らの嗜好を疑問に思い始める

幼い頃から一政は叔父から童話を聞かされていました。その内容が、魔法使いが誘拐した子どもを鍋で煮込んでは食べるというもので、小学生の頃には人肉を食べることについて興味を持っていたということです。

グリム童話には子どもを食べようとする魔女がたくさん登場します。決して一政の環境が特殊だったとは考えられませんが、何か自分の中に目覚めるものがあったのでしょうか。

高校入学後は自分でもおかしいと思い、何度か精神科医に相談しましたが取り合ってもらえなかったということです。こうしてパリ人肉事件を防ぐきっかけは失われてしまったのです。

大学時代に起こした事件

和光大学に在学中、一政はある事件を起こします。それがドイツ人女性の家への侵入でした。当時は強姦が目的だったと考えられていましたが、そうではなく人肉を食べるのが目的でした。何の手も打たなかった高校時代を経て、一政の嗜好はついに表に現れたのです。

この事件も父が示談金を支払い、相手の女性がそれを受け取ったために訴えられることはありませんでした。ここでもまた、事件を防ぐきっかけが失われてしまったのです。

1977年 – 28歳「佐川一政、フランス留学をする」

フランス留学で何を学んだのか?

事件の発生まで

1980年一政はパリ第3大学大学院の修士課程を修了し、そのまま博士課程へと進みます。そして同じ大学に留学していたオランダ人女性、ルネ・ハルテヴェルトさんと顔見知りになります。

1981年6月11日、ルネさんを自宅に招いた一政はカービンという小銃で背後から撃ち殺します。その後遺体を解体して写真撮影をした後、肉を食べるという行動を取ります。

6月13日には残った遺体を捨てるためにブローニュの森に行ったところを目撃され、逃走しますが、目撃者が遺体を発見、通報された一政はついに逮捕されるのです。

大統領選挙で湧いていたフランスだったが…

1981年当時、フランスは大統領選挙戦の真っ最中でした。50年ぶりに社会主義政権が誕生するのではないかと人々は熱狂していました。

この後実際に社会主義政策を掲げるミッテラン新大統領が誕生。有給休暇の拡大や法定労働時間の削減を始め、テレビ・ラジオの自由化や大学入試、死刑制度の撤廃などの政策を次々に実行していきます。

フランスという国の大きな転換点となった大統領選挙の熱狂に、日本人・佐川一政が水を差す結果となったのはとても残念なことでした。

1984年 – 35歳「佐川一政、日本に帰国」

日本でも罪を償うことはなかった

第2の人生が始まった?

帰国後すぐに精神病院に入院した一政でしたが、逮捕も裁判もなしと決まり、15カ月で退院をします。晴れて一般人としての生活が始まりましたが、マスコミでは有名人として扱われ、小説家としても活動を始めます。

特に1989年の連続幼幼女誘拐事件の犯人が逮捕されたときには、犯罪者の心理がわかる人物として脚光を浴びました。月刊誌への連載や講演会などの仕事が途切れることはなく、多くの収入があり、生活には困らなかったようです。

しかし、堂々と生活をする一政に対して、法で裁かれないなら社会的な制裁を与えろといった厳しい声も多く寄せられました。父は退職を余儀なくされ、母は神経症になるなど、家族への影響も大きく、一政よりも先に両親が社会的制裁を受けた形となりました。

忘れられた一政

2001年頃までには一政の存在は徐々に忘れられていき、仕事もほとんどなくなります。経済的に困った一政は闇金に手を出し、借金を抱えることになりました。弟のチェロまで勝手に売り飛ばす有様でしたが、2005年に両親が相次いで亡くなってしまいます。

親の遺産で借金を返し、公団住宅でひっそりと暮らすことになった一政は持病の糖尿病が悪化して、一時は生活保護を受けていました。履歴書を書いて就職活動をしたり、小説を書いて出版社に持ち込んだこともありましたが、すでに一政はどこからも相手にされなくなっていたのです。

2013年 – 64歳「佐川一政、脳梗塞で倒れる」

父の明も脳梗塞を発症している

弟に介護されることに

かねてから糖尿病の持病があった一政は、脳梗塞で倒れ、歩行が困難になりました。弟の純は兄のアパートの通って介護を続けていましたが、2018年には誤嚥性肺炎となり、胃ろうをつけることになりました。それまでは、何とか自力で歩けたのですが、胃ろうをつけてからはそれもできなくなり、寝たきりの状態になりました。

そのため、現在は神奈川県の病院に入院をしています。一政が入院をすることになり、命に限りが見えてきた時に、純は兄に生きていて欲しいと思ったそうです。幼い時の仲が良かった2人の姿に戻ったように思っているのかもしれません。

純はなるべく病院を訪ねて顔を見せるようにしていますが、一政はその手を握ってくるといいます。一政にも子どもの頃の思いが蘇っているのかもしれません。

兄と弟の姿

2017年にはフランスとアメリカが合作でパリ人肉事件の真実を描く映画「カニバ」を制作、現在の純と一政の姿を見ることができます。短い予告編の中にも2人の幼少期と現在の姿が登場します。一政の過去を振り返る姿と、その一政にずっと問いかけるような目を向けている純の姿が心に残ります。

あの事件から40年が経とうとしていますが、純は一政の唯一の家族として、ずっとなぜあのような事件を兄が起こしたのかと考え続けているように思われます。その長い年月を考えるにつけても、幼少期の2人の無邪気な笑顔が胸を締め付けてきます。

日本の映画ではありませんが、2人で出演することは大きなバッシングを受ける可能性があります。それを敢えて実行したところに純の覚悟が現れているようです。

佐川一政の関連作品

おすすめ書籍・本・漫画

霧の中

文章に読みにくい点がありますが、それがかえってパリ人肉事件についての一政の生の声を伝える結果となっています。その迫力にグイグイと引き込まれて、つい読み切ってしまったという感じです。ただ、被害者の立場に立つとこれほどやり切れない作品もないと思わされます。

業火

佐川一政が自分の家族について書いた作品。読んだ人の多くが、一政からは家族に対して何の感情も読み取れない、と薄ら寒い感触を覚えているようです。しかしだからこそ、犯罪が起きたのではないかと納得できる作品でもあります。弟の純さんはこれを読んだのだろうかと気になります。

おすすめの映画

カニバ

佐川一政と弟の純が共演しています。予告編だけでもいろいろと考えさせられる作品になっているので、事件が気になる人も、犯罪加害者の人生について気になる人もぜひ見てほしいと思います。きっと純は今でもなぜ事件が起こったのかを考え続けていると思います。

関連外部リンク

佐川一政についてのまとめ

佐川一政の家族、人生について振り返り、なぜパリ人肉事件が起きたのかを考えてきました。返す返すも高校生のときに話を聞いてくれる人がいれば、と思わずにはいられません。彼はそのとき、自分がおかしいのではないかと思っていました。しかし、相手にされなかったことで自分で何とかしなくてはならなくなりました。

彼は自分で自分の恐ろしさに蓋をしてしまい、自分はおかしくないと思い込んだのではないでしょうか。自分がおかしいかもしれないと思いながら生きていくことは、恐ろしいことです。誰でも自分は正常なのだと思っていたいです。そうでなければ、自信を持って生きていくことは難しいでしょう。

彼のしたことは決して許されることではありませんが、私たちは皆彼と同じ部分を持っているように思います。私たちは自分の命のために犠牲にしている命があることを普段考えません。佐川一政はその事実を私たちに突きつけたのです。

だから、私たちは彼に興味を惹かれるのかもしれません。興味本位ではなく、真正面から佐川一政に向き合うべきときが来ているのではないでしょうか。

1 2 3

コメントを残す