ロマネスクとは?建築・様式について簡単に解説【ゴシックとの違いや代表作も】

ロマネスク建築の特徴

ロマネスク建築は厳密な建築規則があるものではありません。しかし、各地方でデザインが違っていても、次のような共通の特徴が見受けられます。

1:分厚い壁

スペインのロマネスク建築物

ロマネスク建築の特徴として、まず挙げられるのは分厚い壁。この特徴は、ロマネスク建築様式の一つである「ヴォールト建築構造」の天井が関係しています。

後述で詳しく説明しますが、「ヴォールト建築構造」で作られた石造りの天井は構造上外に開こうとする力が働きます。

そんな天井を支えるために、ロマネスク建築で建てられた建物の壁は非常に分厚くなっているのです。ロマネスク建築物の中には、壁の厚さが約1mになる建物も存在します。

また、この分厚く重厚な壁は、ロマネスク建築が流行した時代に活動していた修道士たちの禁欲的な生活を思い起こさせる一つの要素にもなるでしょう。

2:小さな窓

シュパイヤー大聖堂の中央通路の一部

小さな窓が多いことも、ロマネスク建築の特徴です。分厚い壁と同じく建物を支えるために窓を小さく作っています。そのため、ロマネスク建築物は自然光が入りにくい内観です。

また、他の建築様式と比べて技術が未発達な時代にできた建築様式であることも理由の一つになっています。

ロマネスク建築以降の建築様式では建物の強度と窓の作成を上手く両立した技術が出来あがりました。しかし、ロマネスク建築時代はまだそこまでの技術がなかったため、小さな窓が主流になったのです。

3:半円アーチ

スペインのサント・ドミンゴ・デ・シロス修道院

半円のアーチもロマネスク建築の特徴として挙げられるでしょう。ヨーロッパ建築では様々な形のアーチが用いられていますが、ロマネスク建築ではローマ風の半円形のアーチを使用しています。

重厚な壁と半円アーチが組み合わさった外観と内観は、荘厳かつ美しい姿です。この風景が観光客たちの目を惹く要素になっていると言っても過言ではありません。

4:豪華な柱頭

スペインのサンタ・フリアナ聖堂の柱頭

基本的に簡素な内観であるロマネスク建築。その中で、唯一豪華に出来ている柱頭はロマネスク建築の内観における最大の特徴といえるでしょう。

多くの柱頭には、植物の模様や物語をモチーフにしたデザインが使われています。植物の模様としては編み籠や蔓草(つるくさ)などが多く、そこに動物を組み合わせたものもあります。

モチーフにされた物語には、悪魔から人々の魂を守る天使や十字架の降下、騎士の話が多いです。いずれもキリスト教を思わせるものであり、宗教信仰の活動が激しかった時代を感じることができますよ!

ロマネスク建築の様式とは

カルブロゼのバシリカ

ロマネスク建築の様式には、初期のキリスト教建築の要素が多く含まれています。代表的なロマネスク建築の様式を三つ紹介しましょう。

ヴォールト建築構造

ヴォールト建築構造は、石造りのトンネル型の天井のことです。ヴォールトとは、かまぼこ形のような半円型の天井様式の総称になります。

トンネル型の天井が続いているものや交差しているものなど、建物によって異なるヴォールト建築構造が使われているのです。

美しいヴォールト建築構造の天井

ロマネスク建築の特徴でも述べたように、このヴォールト建築の天井を支えるためにロマネスク建築の建物は壁が分厚くなりました。

ヴォールト建築構造は、ロマネスク建築の次に流行したゴシック建築でも用いられています。

バシリカ式の内観

バシリカとは、ローマ帝国時代に教会建築に利用された建築様式です。かつては、教会や修道院の他にも商業施設や集会所、裁判所としても使われていました。

平面で長方形の構造をしており、バシリカ式の内観は連結された柱と高い位置に作られた窓が特徴的です。

サン・パオロ・フォーリ・レ・ムーラ大聖堂(五大バシリカの一つ)

初期のロマネスク建築は、バシリカ式の中でも天井と屋根は木造で壁は石造りといった非常に簡素な作りでした。

その後、ヴォールト建築構造による石造りの天井などが増えていきます。しかし、長方形のデザインは変わらずそのままでした。

西構えの入り口

ロマネスク建築では、西側を正面とする西構えの入り口が建築様式の一つとなっています。初期のロマネスク建築から発展していきました。

その後、複数の塔を組み合わせた様々なデザインが出来上がります。そして、11世紀から13世紀かけて各地で西構えの入り口を持つ建物が増えていったのです。

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