ロマネスクとは?建築・様式について簡単に解説【ゴシックとの違いや代表作も】

ロマネスク建築とゴシック建築の違い

ロマネスク建築の流行が過ぎ去った後、新たな建築様式として出来たのがゴシック建築です。ロマネスク建築とゴシック建築。この二つを比べてみると、次のような違いが分かります。

1:壁と建物の高低

ロマネスク建築で作られたサン・ミリャン教会(スペイン)

ロマネスク建築とゴシック建築の建物の外観を見て、すぐに分かる違いは壁と建物の高低差です。ロマネスク建築は壁が厚くて低い建物が多いですが、ゴシック建築は壁が薄くて建物の高さは高く作られています。

なぜこのような違いができたのか。それは、それぞれの建築技術が大きく関係しています。ロマネスク建築では天井を支えるために壁を分厚く作らねばなりませんでした。そのため、どうしても建物を高く建設することができなかったのです。

ゴシック建築で作られたケルン大聖堂(ドイツ)

しかし、ゴシック建築時代には重さを逃す建築技術が向上していたため、壁が薄くて高い建物を作ることができました。これは、ロマネスク建築とゴシック建築の一番わかりやすい違いですね。

2:窓の大きさ

窓の大きさもロマネスク建築とゴシック建築では違います。ロマネスク建築では建物の強度を保つために小さい窓が主流になっていますが、ゴシック建築は大きな窓が多いです。

こちらも建物の強度を保つ建築技術がゴシック建築時代に進んでいたことが理由として挙げられます。

巨大なバラ型の窓が特徴的なゴシック建築の聖ヴィート大聖堂(チェコ)

ロマネスク建築では飾り気のない小さな窓でしたが、ゴシック建築ではステンドグラスを使用した豪華で大きな窓に様変わりしたのです。

3:内観の装飾

内観の装飾も、ロマネスク建築とゴシック建築では違いが見られます。ロマネスク建築は装飾品が少なく、質素な内観が特徴的です。しかし、ゴシック建築では重厚な雰囲気はそのままでありながら豪華な装飾品が増えました。

例えば、大きな窓を作ることができるようになり、窓のガラスに色彩豊かなステンドグラスを使用するようになったのです。

サント・シャペル教会のステンドグラス(フランス)

このステンドグラスには聖書の物語が描かれており、聖書の内容に詳しくない人や文字が読めない人でも聖書を分かりやすく学べるようになっています。

また、天井の重みを逃がすために作られた斜めのアーチ状の梁(フライング・バットレス)や天井に筋をつけたリヴ・ヴォールトなどもあります。これらもゴシック建築の華やかな雰囲気を醸し出す要素です。

ロマネスク建築が与えた影響

ロマネスク建築は冒頭でも述べたように、主にヨーロッパで広まった建築です。しかしその影響は日本にも届いています。

日本キリスト教団の本拠である大阪教会は、ロマネスク建築風に設計されました。他にも東京商科大学や神戸商業大学もロマネスク建築風の建物です。

ロマネスク建築の歴史

960年又は1000年「ロマネスク建築の誕生」

ザンクト・ミヒャエル聖堂(ドイツ)の内観

ロマネスク建築が誕生した年には諸説ありますが、一般的には960年頃か1000年頃とされています。東ローマ帝国の元で発展したビザンティン建築と同時期に西ヨーロッパで流行しました。

それ以前の建築にもロマネスク建築の特徴が見られるため、960年以前の建築は「プレ・ロマネスク」と呼ばれます。

ロマネスク建築は、9世紀頃から始まっていた侵略や紛争が終わった後に誕生した建築様式です。異なる文化や宗教観との対立を経ていたために、ロマネスク建築は教会建築を主流としました。

11世紀末「フランスやドイツにて建築が活発に」

ル・トロネ修道院(フランス)

11世紀からは、フランスやドイツを中心にロマネスク建築の建設が活発に行われるようになります。そして、フランスとドイツ、それぞれの特色に合わせたロマネスク建築物が多く建てられました。

フランスでは、各地域の材料を利用した多様なロマネスク建築物が建設されます。しかし、多様な建物でありながらもキリスト教の表現を用いることは共通していました。

ドイツは内観に三つの祭室を作る様式を取り、数多くの大聖堂や修道院を建設します。そして、今でも在存しているドイツのロマネスク建築物のほとんどが世界遺産に登録されているのです。

12世紀半ば「ロマネスク建築の最盛期」

トリーア大聖堂(ドイツ)

11世紀末から建設が活発化したロマネスク建築は、12世紀半ばまでに最盛期を迎えます。

西ヨーロッパがそれ以前よりも安穏した時期に入り、経済や農業活動によって人口が増えたことが理由の一つです。

人口が増え、安定した生活を送ることができれば人々はそれまでより芸術や信仰に目を向け始めます。それにより、ロマネスク建築による教会建設に拍車がかかりました。

12世紀半ば「ゴシック建築への移行」

ロマネスク建築が最盛期を迎えた後、その特徴を併せ持ったゴシック建築が誕生しました。ゴシック建築はロマネスク建築よりもさらに技術を高めたものであり、大聖堂の建築に多く利用されています。

ドゥオモ大聖堂(イタリア)

ゴシック建築が誕生したことでロマネスク建築による建物は少なくなってきましたが、ゴシック建築以降の建築様式の基盤をロマネスク建築が作ったことは間違いありません。

ロマネスク建築に関するまとめ

いかがでしたでしょうか?この記事では、ロマネスク建築の代表的な建物や特徴、様式、歴史までを詳しく解説しました。

ロマネスク建築は、ヨーロッパの宗教的な争いを経て生まれた古い建築様式です。そのため、現在の教会や大聖堂と比べると一見質素で地味な建物に見えるかもしれません。

ノートルダム・ラ・グランド教会(フランス)

しかし、簡素でありながらも重厚な壁や天井を見れば、当時の修道士たちの生活やキリスト教の信仰を思い浮かべることができます。また、ロマネスク建築以降に誕生したゴシック建築と比較する楽しみもありますね。

あなたもロマネスク建築の建物を見て中世ヨーロッパの雰囲気を味わってみませんか?

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