ロゼッタストーンとは?意味や内容、解読者について詳しく紹介

「ロゼッタストーンってなに?」
「ロゼッタストーンにはどんな内容が書かれているんだろう?」
「ロゼッタストーンを解読したのは誰?」

この記事を読んでいるあなたはこのように思っているのではないでしょうか。

ロゼッタストーンとは1799年に発見された古代エジプトの遺物です。巨大な黒い岩に古代の文字が刻まれており、1822年にイギリスの学者シャンポリオンによって解読されました。解読されて以降、古代エジプトの資料を読み解けるようになり、歴史という学問に新たな分野を創造しました。

ロゼッタストーン

この記事では、ロゼッタストーンとはなんなのかについて解説します。他にも、ロゼッタストーンの内容や発見、解読者についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

この記事を書いた人

一橋大卒 歴史学専攻

京藤 一葉

Rekisiru編集部、京藤 一葉(きょうとういちよう)。一橋大学にて大学院含め6年間歴史学を研究。専攻は世界史の近代〜現代。卒業後は出版業界に就職。世界史・日本史含め多岐に渡る編集業務に従事。その後、結婚を境に地方移住し、現在はWebメディアで編集者に従事。

ロゼッタストーンとは?

ロゼッタストーンとは紀元前2世紀の石碑

推測されるロゼッタストーンの原型

ロゼッタストーンとは、古代エジプト研究が進歩するきっかけとなった紀元前2世紀の石碑です。

高さ114cm、幅73cm、厚さ28cmの巨大な岩で、重さは762kgあります。材質は黒い花崗閃緑岩(かこうせんりょくがん)でできており、当初は花崗岩や玄武岩でできていると勘違いされていました。

花崗閃緑岩とは

花崗閃緑岩とは、花崗岩と閃緑岩の中間に位置する性質を持った石のことです。現在では御影石の1種として建築用に使われています。

文字が刻まれている表側はきれいに磨かれていますが、側面は滑らかにされている程度で裏側に至ってはほぼそのままの状態となっています。石碑であったため、石をまっすぐ立ててしまえば裏側は見えなくなるからでしょう。

持ち運びに苦労する大きな石でしたが、実はこれでも石碑の一部であり、破損前の高さは150〜160cmはあったのではないかと推測されています。歪な形からもわかる通り、ロゼッタストーンに書かれている文章はわずかに失われています。

ロゼッタストーンは神聖文字ヒエログリフ)解読の鍵となり、古代エジプトの歴史研究が大きく進みました。

どこで発見された?

考古学的に大きな価値を持つロゼッタストーンは、1799年にエジプトの都市ロゼッタ近郊の川で発見されました。発見したのはナポレオン率いるフランス軍です。エジプトで軍事活動を行うために遠征してきていたのですが、この遠征軍には、167人の技師からなる学者集団も一緒にきていました。

エジプトの港湾都市ロゼッタについたフランス遠征軍は、守りを固めるために要塞を建設します。その作業中、ピエール・フランソワ・ブシャール大尉は黒い大きな岩に文字が刻まれているのを発見しました。

この石はとても重要なものなのではないか、と思ったブシャール大尉はたまたまロゼッタにきていたメヌー将軍に報告します。ロゼッタストーンは調査のためにフランスの研究所があるカイロへと運ばれ、検分が行われました。

結果、石には3つの文章が書かれていることがわかります。この頃には、発見された石はすでにロゼッタストーンと呼ばれていました。

文字ごとに文書が分かれている。上から順に神聖文字・民衆文字・ギリシア文字

さらに調査が進み、2つの古代言語が使われていることがわかるとロゼッタストーンは民衆の関心の的になります。模写や金属板への象り直しが行われ、博物館や学者たちの間を飛び回り、研究が盛んに行われました。

後にロゼッタストーンはイギリスへと渡ってしまうのですが、石碑に書かれた文章の模写は終わっていたため、フランスでも解読ができました。もし、このときに大尉がロゼッタストーンを見逃していたら、古代エジプトについては今でもわからなかったかもしれません。

「ロゼッタストーン」は全体をとらえる鍵の象徴の意味もある

ロゼッタストーンという鍵により、古代エジプト文明についての理解が進んだ

ロゼッタストーンにより神聖文字の解読ができるようになったことから、ロゼッタストーンという言葉は「謎を解く重要な鍵」という意味を持つようになり、比喩として使われるようになりました。

このような使われ方は、1902年版の『ブリタニカ百科事典』でグルコースの化学分析について使用されたのが最初でした。それ以降は小説の慣用句として、SFの父ウェルズの人気作にも使われ始めます。

科学の分野で有名な使用例は、1979年のアメリカのサイエンス誌です。ノーベル賞を受賞したテオドールが分光学(プリズムなどで分解した光を研究する物理学の分野)について述べた記事では

水素原子のスペクトルが現代物理学のロゼッタストーンだということが証明された。線のパターンさえ解読してしまえば、あとはどれだけ数が多くとも難解ではないからだ。

と言っています。このように、ロゼッタストーンと言う言葉はさまざまな分野の文脈で用いられるようになりました。

専門的な書を読んだときにロゼッタストーンと言う言葉がでてきたら、それについてしっかりと理解すると簡単に読めるようになるかもしれませんね。

ロゼッタストーンは一つだけではない!?

ギリシア文字

実はロゼッタストーンはフランス軍が発見したもの以外にも存在しています。初めてロゼッタストーンが発見されて以降、まったく同じ内容が書かれた石がエジプト北部の都市ダマンフルやヘルモポリス・パルヴァなどからも発見されました。

ロゼッタ近郊の川で見つかったものは、後世の時代に要塞を建造するための建築素材として神殿から運び出されていたと考えられています。

ロゼッタから発見されたロゼッタストーンは3つの言葉で書かれていましたが、ギリシア人が住んでいなかったエジプトの地域から見つかった石にはギリシア文字は使われていませんでした。その土地に住む人の言葉に合わせて、それぞれの文字で同じ内容の碑文を刻んでいたようです。

ここまでの話でわかると思いますが、ロゼッタストーンは文字ごとに内容が異なるわけではなく、すべて同じことが書かれています。

違う文字で同じ内容が書かれているため、当時明らかになっていなかった神聖文字の解読のきっかけになったのです。解読可能な文字が、解読不可能な文字の辞書代わりになったんですね。

1 2 3

コメントを残す