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社会契約論とは?意味や誕生した時代背景、与えた影響まで解説

社会契約論の内容が知りたい!
社会契約説との違いがわからない…
社会契約論は世の中にどんな影響を与えたの?

とこの記事を訪れたあなたは思っているのではないでしょうか?

社会契約論とは、18世紀に哲学者ルソーが説いた「社会契約説」の解説書です。「社会は人々との自由かつ平等な契約によって成立する」とルソーが説いた社会契約論は、哲学者をはじめ多くの人々に1789年のフランス革命に影響を与え、現代における民主主義社会の原理を示した貴重な著書となっています。

しかし現代の基盤をつくった思想にもかかわらず社会契約論という名前を知っているだけで内容があいまいだったり、改めて勉強しようにも正直めんどくさい、著書を読まずに知れたらと思っている人もいるはず。

この記事で社会契約論の内容はもちろん、世の中に与えた影響やの違い、社会契約論がわかるおすすめ本まで網羅的に解説していきます。現代の基盤をつくった哲学者ルソーの思想をのぞいてみましょう。

社会契約論とは

社会契約論の表紙

社会契約論とは、18世紀のフランス哲学者ジャン=ジャック・ルソーが1762年に書いた社会契約説の解説書です。フランスで出版されたのち、英語圏でも“Social contract”というタイトルで翻訳され全世界で読まれるようになりました。

社会契約論には社会の成り立ちをはじめ自由かつ平等な社会を築くための政治の在り方が細かく説明されており、現在の民主主義社会形成の基盤を描いているともいえます。

18世紀当時のフランスでは多くの哲学者や思想家たちがさまざまな概念を説いていました。啓蒙時代と呼ばれ、人々は神学から知性で世界全体を見ようとしていた時代です。中でも「人々の契約によって社会は成立する」というルソーの社会契約説が注目を集めました。

ルソーは社会契約説を詳しく紐解きながらも「一般意思」の概念も組み込んで学説を展開、後に完成したのが「社会契約論」です。

※一般意思:国の人民が持つ考えをまとめた意思のこと

社会契約論を翻訳した人たち

東洋のルソーと呼ばれた中江兆民

社会契約論は多くの国で翻訳版が発売されています。日本でもルソーに影響を受けた思想家や作家、社会運動家を中心に社会契約論が広まり、1877年は日本初のルソー本「民約論」が発売されました。

そして、1882年には思想家であり政治家の中江兆民が翻訳した「民約訳解」が出版。漢文の翻訳ではありましたが当時の社会に大きな影響を与えました。

社会契約論を理解する3つのポイント

ポイント①一般意志という理念

社会契約論では一般意思の理念のもと国民の政治参加を促した

ルソーは社会契約論の中で「一般意志」を基礎的な理念として挙げ、「国家が成立するには一般意志が必要である」と述べています。

一般意思は当時18世紀フランスで理念とされていた絶対王政社会(国王の権力によって支配された政治社会)を批判する形で誕生しました。絶対王政のもとでは国民の意見が政治に反映されにくく、国民の平等と自由が根付いた社会は程遠いものだったのです。

そのためルソーは「国民を平等かつ自由に扱う社会の成立」について考え、一般意志という理念を生み出します。個人的な事情や利益を除いた国民全員の共通意志こそが平等かつ自由な社会を成立させると考えたのです。

一般意志は国民の政治意志!

一般意志における重要なポイントは「国民全員の共通意志」が政治的な意志であり利益目的ではないという点になります。

国民全員が理性を持ちながら個々の利益を放棄し政治へ参加して生まれるのが「国民全員の共通意志」です。ルソーは「一般意志」にもとづいて政治を行えば理性的な社会行動が増え、国民の平等と自由が確立されるとしました。

ルソーの掲げる平等かつ自由な社会成立には「一般意志」が欠かせない条件、必ずおさえておきましょう。

ポイント②自然状態からの社会発展

人間も昔は自然とともに暮らしていた

社会契約論では、社会発展または国家の成立の仕組みを自然状態、社会契約や政治の在り方などの観点から説いています。自然状態とは、政治体制など人為的な制度のもとではなく人間がありのまま好き勝手にしている状態をさしており、ルソー以外にジョン・ロックやトマス・ホッブズなどの哲学者も唱えた思想です。

しかし3人の自然状態に対する捉え方は異なっており、ロックやホッブズが自然状態は人間にとって良くない状態と捉えていたのに対し、ルソーは自然状態では自己防衛本能や同情心が無意識のうちに働くため平和な状態であると捉えていました。

社会発展の源となった農業

平和な自然状態から農業生産を行う農業社会への発展によって財産という概念が生まれます。財産が特定の個人に集まったことで権力者が誕生、専制国家(権力者が独裁的に政治を取り仕切っている社会)の成立です。

ルソーは専制国家が戦争や格差社会の温床になると考え、専制国家による戦争や格差社会から抜け出すためには「社会は国民との契約のもとに成立している」とする社会契約説が重要であると説きました。

ポイント③社会契約は自由社会の原理

現代の社会を作るのも簡単ではなかった

ルソーは社会が国民との契約によって成立すれば人々が自由社会で暮らせるようになると信じ、社会契約により人間は自然状態の頃の本能を理性的な方へ変化させ、平等かつ自由で平和な共同社会を作れると論じました。

また、国家や政府が国民の権利を守る義務を持つとする社会契約は民主主義運動を大きく後押ししました。

こうしたルソーの社会契約論は数多くの哲学者や思想家、革命や現代の社会思想に影響を与え、民主主義社会や社会福祉制度を生み出したのです。

社会契約論が与えた3つの影響

①フランス革命

フランス革命の始まりであるバスティーユ襲撃(民衆が牢獄を襲撃した)

ルソーが説いた「社会契約論」の概念は世界史でも有名なフランス革命にまで影響を与えました。フランス革命とは1789年に権力者であった王族や貴族をフランスの民衆が攻撃し、絶対王政を倒した市民革命です。

社会契約論では絶対王政や専制政治を強く批判しており、冒頭部分には「人間は生まれつき自由だが、いたるところで鎖につながれている」という文章があります。この文章は、革命のスローガンに使われフランス革命を起こした民衆たちに影響を与えました。

フランス革命後のフランス人権宣言はルソーの思想を基盤とし、ルソーはフランス革命において重要な役割を果たしたのです。

英雄ナポレオンとはどんな人?生涯・年表まとめ【フランス革命の活躍や功績、逸話や死因まで紹介】

②思想家のバイブルになる一方で悪用されたケースも

社会契約論を間違った方向に使用したナポレオン・ボナパルト

社会契約論は当時の社会政治を批判する内容だったため、徐々に出版が禁止されていきましたが、多くの哲学者や思想家に影響を与えました。社会契約論を日本語に訳した中江兆民や民主主義運動運動家たちは社会契約論に深く感銘を受けたのです。

しかし一方で、社会契約論を利己的に使う人もいました。かの有名なナポレオン・ボナパルトです。彼はルソーの社会契約論で述べられている「一般意志」を盾に、国民の代表を自称し独裁的な政治を行いました。

ナポレオンはフランス国民の投票によって皇帝に選ばれたのち、侵略国には血縁者を王に就かせてイギリスに対抗するためだけに諸外国との貿易を禁じるなど横暴な政策を講じたのです。その結果、国民の反感を買いフランス各地で反乱が多発し皇帝の座を退位させられ、南大西洋に浮かぶイギリス領のセントヘレナ島に監禁されました。

ルソーも幸せな社会の実現を目的に書いた社会契約論を悪用されるとは思っても見なかったでしょう。

③現代社会へ新たな課題を残す

人々が自由を謳歌しているように見える現代都市

ルソーの社会契約論は「いかに現代社会へ適した形にできるか」という課題を哲学者たちに与えました。

もちろん、社会契約論はフランス革命を経て社会契約を根幹とする民主主義社会の成立のきっかけとなった思想です。しかし、現代社会は本当に自由な社会といえるのでしょうか?

日本やアメリカをはじめとする先進国でさえ格差の問題が解決せず、国民は政府に対する不満を募らせています。ルソーの描いた社会契約を根幹とする社会では人が理性的に行動すると説いていましたが、これはあくまで1つの国家を前提にしたものでした。

現代のように国家同士が繋がるグローバル社会では世界全体を一つとして考え、そのうえで自由な社会をつくらなくてはなりません。かといって、全世界の人が自らの利益を放棄して共通の政治思想を持つのは非常に困難ですよね。

ルソーの意思を受け継いだ現代哲学者たちは「社会契約論をいかに現代に適応できるか」を課題に置き、今日も奮闘しています。

社会契約論と社会契約説の違い

著書と思想という違い

結論から言うと、社会契約論はルソーが社会契約説を解説するために書いた「著書」、社会契約説はルソーの「思想」です。

社会契約説とは17世紀から18世紀にかけてヨーロッパで広まった「人々の契約によって社会は成立する」という政治思想のこと。ルソーは社会契約説の思想を世に広めるため本へまとめ、社会契約論というタイトルをつけ出版したというわけです。

社会契約説は17世紀以前の「王権神授説」という政治思想とは正反対のものであり、社会契約論は絶対王政から民主主義社会の在り方を世に広めた著書といえるでしょう。

王権神授説とは

ルイ14世に触れることで病を癒そうとする人々

王権神授説とは「絶対王政による国家権力は神からの授かりものである」という政治思想です。国王の権力は神様から与えられたもののため、国民が国王に反抗するのは許されないという考え方。

ヨーロッパで広まっていた思想であり、社会契約説が誕生するまでは王権神授説が当たり前の理念として知られていました。国王の権力が国家権力と同等であり、政治的にも王族が力を行使した絶対王政の社会にはぴったりの政治思想だったのです。

しかし、絶対王政によって王族に権力が集中すると農民をはじめとする国民は不満を募らせ、ヨーロッパ各地で市民革命が起こりました。革命をきっかけに国家は王族や神学に委ねていた思想から国民と知性に委ねる思想へと変化していきます。

こうした革命期に誕生したのが社会契約説でありルソーの著書『社会契約論』です。「人間の契約によって社会は作られる」とした政治思想は市民革命を後押しました。

社会契約説を唱えた3人の思想家

「経験論」を生み出したジョン・ロック

社会契約説を唱えてきた思想家はルソーだけではありません。ジョン・ロックやトマス・ホッブズも独自の社会契約説を唱えた思想家として知られています。

ここではルソー、ロック、ホッブズという3人の思想家が説いた社会契約説について解説します。

ジャン=ジャック・ルソー

ジャン=ジャック・ルソー

ジャン=ジャック・ルソーは18世紀フランスで活躍したジュネーヴ共和国出身の哲学者です。本記事の主題である『社会契約論』の著者ですね。

幼少期から奉公に出され孤児として孤独な日々を過ごしましたが、ヴァランス男爵夫人に助けられたのをきっかけに独学で哲学や文学などさまざまな学問を学びました。その後30歳でフランスに赴き、数多くの名著を執筆します。

中でも「社会契約論」は18世紀当時フランスにに根強く浸透していた絶対王政やキリスト教的価値観を強く否定する内容であったため、ルソーは弾圧を受け亡命生活を送ることとなりました。

しかしルソーの死後、改めて社会契約論が見直され市民革命に大きな影響を与えたのです。その結果、ルソーの遺骨はフランスの偉人たちの霊廟に葬られました。

ルソーが本当の意味で報われたのは生涯を終えたあとだったのですね。

ジョン・ロック

ジョン・ロック

ジョン・ロックはイギリス出身の哲学者で「イギリス経験論の父」「自由主義の父」と呼ばれる人物です。ルソー登場以前の17世紀に活躍していました。

裕福な貴族階級の生まれで育ったロックは好きなだけ学問に励み、オックスフォード大学に進学します。哲学や古典を学んだのち科学を専門とする団体王立協会に入りました。

1688年に起こった名誉革命(立憲君主政治を確立させた革命)の経験から社会契約説に基づいた「統治二論」を執筆、国民は国家に対する「抵抗権」「革命権」を持つという概念を確立します。政府や国家は国民の権利を守る存在、主権自体は国民にあり政府の権利侵害に抵抗する権利があると説きました。

ロックの思想は人民主権の源となり、後のアメリカ独立革命などにも影響を与えました。

トマス・ホッブズ

トマス・ホッブズ

トマス・ホッブズは16世紀から17世紀にかけて活躍したイギリス出身の思想家です。牧師の家に生まれ、ロックと同じくオックスフォード大学を卒業後に家庭教師となります。

ピューリタン革命(絶対王政から共和政へと移行した革命)に否定的だったロックは一時フランスに亡命し、社会契約説を基盤とした「リヴァイアサン」を執筆しました。

ホッブズの社会契約説は自然状態のあり方という点でルソーの概念と大きく異なっています。ルソーが自然状態を「平和な世界」の状態としたのに対し、ホッブズは「戦争の絶えない世界」の状態としました。

そこで、処罰権を有した国家権力を成立させ国民が抵抗できないようにすれば争いはなくなり、戦争状態から抜け出せるという概念を作り出したのです。

しかし、ホッブズの概念はルソーやロックと違って絶対王政の下で国民の主権を認めるという矛盾に満ちた思想だったため、各方面から批判を浴び著書は刊行禁止になりました。

社会契約論がわかるおすすめ本

社会契約論 (まんがで読破)

社会契約論という難しい哲学・政治思想を漫画でわかりやすく解説した一冊。本文の第1章から6章までが漫画になっており、ルソーの概念や思想がつくられる過程を作品調で楽しみながら理解できます。

活字が苦手な人におすすめの一冊です。

別冊NHK100分de名著 読書の学校 苫野一徳 特別授業『社会契約論』 (別冊NHK100分de名著読書の学校)

タイトル名の通り社会契約論を100分で理解できる一冊。要点が分かりやすくまとめられているので、哲学史を学んでいる学生はもちろん参考書としても活用できますよ。

社会契約論に関するまとめ

一見、難解だと思われがちな社会契約論ですが、中身を紐解いてみると到底理解できないようなものではありません。むしろ、現代の民主主義に親和性の高い思想が多く論じられています。

ルソーが理想とする社会を実現させるのは決して簡単ではないでしょう。しかし、ルソーの生きた18世紀フランスと同じく現代を生きる1人ひと誠実に治につい向き合うようになれば、フランス革命のように何かが変わるかもしれません。

社会契約論でルソーが描いた理想の社会が訪れる日を願って。

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