性善説と性悪説の違いは?詳しい中身や共通点を詳しく解説!

決めてしまうと危険でもある

朝鮮半島では儒教はたびたび弾圧の対象になった
出典:Wikipedia

では、無理矢理にでもどちらが正しいかを決めてしまうことはできないのでしょうか。白黒はっきりさせたい人にとって、「決着がつかない」という結論では居心地も悪いことでしょう。

しかし、よく考えてほしいのです。

仮に全員が性善説の考えを持ったとすれば、この世から犯罪はなくなるでしょう。全員が全員を信頼する思想が出来上がるだけに、誰かを裏切るなどという考え方そのものがなくなるかもしれません。しかし、それは表面上の話であって、誰かが悪いことをしても許してしまう文化が出来上がってしまいます。つまり、下手をすれば無法地帯が出来上がってしまうのです。

一方の性悪説の立場に、全員が立ったとなれば、それはそれで大変な世の中になります。法の支配によってガチガチに固められた社会の中で、誰がいつ自分を裏切るのかにおびえながら生きていかなければなりません。これによって犯罪そのものはなくなるでしょうが、ギクシャクした世界になってしまう可能性もあります。

こちらも極端なイメージでのお話ではありますが、どちらか一方に偏りすぎるというのもよくないのです。あえてグレーのままで残しておいた方が、性善説と性悪説の場合はいいのかもしれません。

ビジネスでは使い分けられている

性善説と性悪説をめぐる論争は、ヨーロッパでも行われている
出典:朝日新聞GLOBE+

どちらかに傾きすぎると危険な性善説と性悪説ですが、意外にもビジネスの現場では使い分けられています。使い分けされるタイミングは、ビジネスの相手が、日本か海外かによる違いです。

日本相手のビジネスであれば、こちら側は性善説の立場に立つことがほとんどです。「お客様は神様です」という言葉が示すとおり、日本人はただお金のやり取りをするだけではなく、相手との関係性を非常に重視します。そのため、接待などの付き合いを通じて関係を作り、「○○さんのお願いだったら仕方ないなぁ」という風に言わせることがビジネスの付き合い方だと思っています。相手がいい人だと思っていないとここまでの行動は出来ません。

対して海外とのビジネスになれば話しが変わってきます。「ビジネスライク」という言葉があるように、海外においてビジネスとは非常にドライなもので、そこに人と人の関係はありません。あくまでモノとモノ、会社と会社の付き合いがあるだけなのです。しかも、第三者がより良い条件を提示してくれば、海外の企業は手のひらを返してくることさえあります。この考え方の違いに、日本のビジネスマンは性悪説の考え方を借り、相手がいつ裏切ってもおかしくないという前提でいるのです。

このように、ビジネスそのものの考え方を性善説・性悪説の考え方に置き換えているのがビジネス現場なのです。もちろん、双方に一部例外もあるので、すべてにこの条件が当てはまるわけではありません。

性善説性悪説が学べる書籍

性善説・性悪説の考えをより深く学ぶための書籍は数多く出ていますが、その両方を一緒に学べるものはそう多くはありません。今回はそんな数少ない書籍の中から、特におすすめしたい3冊の書籍をご紹介します。

知っていると役立つ「東洋思想」の授業

性善説・性悪説はもちろん、諸子百家の考え方がこれ1冊で学べる本です。各章ごとに、前半で思想とキーワードを説明し、後半でその思想を深堀していくという2ステップで理解度を深められる構成となっています。

ビジネスに効く教養としての中国古典

ビジネスの基礎知識として中国古典を抑えたいならこちらがおすすめです。作者の守屋洋氏は東洋思想研究の第一人者と合って、分かりやすい解説で読者に東洋思想の奥深さを伝えてくれます。

史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち

生真面目な本はちょっと…と思うのならこちらがおすすめです。哲学者の面白いエピソードやたとえ話の分かりやすさは、普段本を読まない人でもすぐに惹き込まれることでしょう。インド哲学も学べるボリューム満点の1冊です。

性善説性悪説に関するまとめ

性善説と性悪説の考え方の違いや共通点、なぜ結論が出ないのかについてお話してきました。思想ゆえ、結論が出ないのは仕方がありません。しかし、人の本性は果たしてどちらなのか、気になる人も当然います。今後の研究や論争で、新たな解釈や知見が見出されれば、決着がつくかもしれません。

しかし、あまりどちらかに偏りすぎてしまうのもよくありません。バランスよく性善説と性悪説の考え方を持ってこそ、良好な人間関係や社会秩序が守られることはいうまでもないでしょう。

性善説と性悪説、あなたなら、どちらを信じますか?

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