「オウム真理教は現在どうなっているの?」
「現在のオウム真理教への対策は?」
地下鉄サリン事件や松本サリン事件を引き起こしたことで有名な宗教団体「オウム真理教」。2000年にオウム真理教は消滅していますが、現在も後継団体が活動していることをご存じですか?
この記事ではオウム真理教の後継団体を3つ紹介し、現在の活動拠点や信者の人数などを紹介します。
この記事を書いた人
一橋大卒 歴史学専攻
Rekisiru編集部、京藤 一葉(きょうとういちよう)。一橋大学にて大学院含め6年間歴史学を研究。専攻は世界史の近代〜現代。卒業後は出版業界に就職。世界史・日本史含め多岐に渡る編集業務に従事。その後、結婚を境に地方移住し、現在はWebメディアで編集者に従事。
そもそもオウム真理教とは
オウム真理教とは1988年から2000年にかけて活動した、麻原彰晃こと松本智津夫を教祖とした日本の新興宗教団体でありテロ組織です。ヨーガ教室から始まったオウムは宗教団体へと変化していき、着実に信仰者を増やして1995年には15,400人もの信者を獲得していました。
しかしオウムは宗教団体としての活動の裏側で、反社会的な活動も行っていました。これは教祖であった麻原の倫理観の欠如と社会への不満によるもので、麻原のカリスマ性により信者たちも取り込んで過激な思想は加速していきました。
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その結果、「松本サリン事件」や「地下鉄サリン事件」を引き起こして多くの犠牲者を出しました。一般市民をターゲットとした化学兵器を使用してのテロ事件に、世界中が震えあがり恐怖したのです。
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これらの事件が原因で、オウムは信者の激減と資金難により活動休止を余儀なくされます。その後、2000年に破産し「オウム真理教」は消滅しました。
オウム真理教の現在は?3つの後継団体
アレフ
「アレフ」はオウム真理教が消滅した2000年に発足したオウムの後継団体で、のちにアーレフに改称し現在は「Aleph」と名乗っています。この記事ではアレフと表記します。
元オウム幹部の上祐史浩を代表とし、上祐の考えで「脱麻原派」を掲げていました。しかし根強い麻原の信奉者たちとの内部争いにより上祐が失脚すると、再び麻原を神格化し信仰する団体へと変わっていきます。
このことから公安調査庁は現在でもアレフをオウム真理教の影響下にある組織と認識し、団体規制法に基づいて観察処分を続けています。
活動拠点
現在アレフは埼玉県越谷市に本部を構え、北は札幌から南は福岡まで全国に拠点を持っています。特に本部のある埼玉と東京に数多くの施設が集まっていて、最大の居住拠点である東京の足立入谷施設には50~60人程度の信者が生活しているとみられています。
また拠点のある各地域では、たびたび地元住民によるアレフの立ち退きや解散を求めて署名活動やデモ行進が行われ、地域とアレフの確執は深まるばかりです。
信者の人数
2011年11月17日、公安調査庁はアレフからの報告による信者数が1000人を超えたことを明らかにしました。2019年の段階では約1470人の信者が確認されています。
信者増加の背景には、地下鉄サリン事件などのオウム事件を知らない若い世代のアレフへの入信が大きく影響しています。不景気による社会不安や東日本大震災などの災害によって引き起こされる精神不安などを利用し、アレフは着々と信者数を増やし続けているのです。
ひかりの輪
ひかりの輪はアレフの代表を務めた上祐史浩が、アレフを脱退して設立した哲学サークルです。オウム真理教の行ってきたことに対する反省や総括を基に、上祐がアレフ時代から推進していた「脱麻原派」を掲げています。
ひかりの輪では特定の崇拝対象を持たず、宗教・思想・哲学・科学および芸術などを幅広く研究・実践し公開することを主たる活動目的としています。2013年ごろからは祭壇なども排除し、仏教哲学や心理学を学ぶサークルのような活動にシフトしています。
またアレフが拒否しているオウム真理教の賠償問題をひかりの輪が引き受けるなど、オウムが抱えている社会的責任を果たす役割も担っています。
しかし、公安調査庁は「脱麻原派」はあくまで見せかけで、麻原の影響が無いように振る舞う「麻原隠し」だとしてひかりの輪の観察処分は継続しています。
活動拠点
ひかりの輪は東京都世田谷区に本部を構えていて、アレフには及ばないもの仙台、名古屋、大阪、福岡などの主要都市に活動拠点を設けています。
東京都世田谷区の本部が入るマンションでは、上祐代表による「仏教・ヨーガ勉強会」、「心理学講義」、「悟りのヨーガ瞑想講座」などが開催されています。
しかしマンションの壁面には「我々はあのサリン事件を忘れない」、「ひかりの輪・アレフ反対解散せよ」などの横断幕が住民たちによって設置されています。
信者の人数
2019年の公安調査庁の調べによると現在ひかりの輪には約150人の信者がいます。中でも出家信者が17人おり、その全員が元オウム信者であるようです。
ひかりの輪設立当時の2007年には出家信者56人、一般の信者106人の総計162人の信者がいたとされているので、年々減少傾向にはあります。
山田らの集団
山田らの集団はアレフから分派した団体で、オウムの古残信者である山田美沙子(ヴィサーカー師)を中心としています。アレフの金沢支部から独立したグループですが正式な名称は不明で、「山田らの集団」という名称は公安調査庁が便宜上取り決めたものです。
2013年頃、アレフ内部で次期後継者を巡って派閥争いが起こります。麻原の次男を推す麻原の妻・松本明香里の一派と麻原の三女・松本麗華の一派が対立し、その結果松本麗華がアレフを離れます。
この時に同じく意見が対立していた金沢支部の山田美沙子らもアレフから離れたのが、山田らの集団が発足した発端となりました。山田らの集団は現在も麻原への帰依を貫いており、2017年より公安調査庁の観察対象となっています。
活動拠点
山田らの集団はもともとアレフ金沢支部があった石川県金沢市と、東京都武蔵野市に拠点を構え活動を続けています。
2020年7月12日に武蔵野施設に立ち入り検査を行った公安調査庁は、麻原彰晃の写真が飾られた祭壇や説法を収録した教材などが多数保管されているのを確認しています。2018年3月には金沢施設から麻原の誕生日を祝い、信者らが大声でオウムソングを合唱する様子が報じられました。
信者の人数
山田らの集団は現在約30人の信者がいるとされています。信者たちは麻原がまつられた祭壇に向い、オウム真理教のころと同様の教材を使用して勉強会を行っています。中には殺人を肯定する教義が記載された教材も確認されていて、公安調査庁は警戒を強めています。
現在のオウム真理教への対策
公安調査庁はオウム真理教の影響下にある「アレフ」「ひかりの輪」「山田らの集団」の3団体を観察対象とし、それぞれの施設周辺におけるパトロール等の警戒警備活動と立ち入り調査の実施を続けています。
また組織の地方進出に伴う施設の確保において、組織名を伏せるなどの詐欺行為が無いかチェックと摘発を行っています。一方、オウム真理教の時代にできたロシアなどの海外支部の警戒を続けてきました。
団体施設のある地域の自治体や住民たちによる反対運動も続けられていて、立ち退きを求める民事訴訟なども度々行われています。
オウム真理教の現在に関するまとめ
いかがでしたか?
オウム真理教はもうありませんが、その教義を受け継ぐ宗教団体がまだ存在しています。これは再び「地下鉄サリン事件」や「松本サリン事件」のような、悲惨なテロ事件が引き起こされる可能性がゼロではないことを示しています。
二度とあのような悲惨なテロ事件が起こらないよう、警察や公安だけでなく我々も注意して観察する必要があるのではないでしょうか?
オウム怖い