現在の紙幣価値は20億円?
三億円事件で強奪された「三億円」とは、もちろん当時の価格を指します。では、現在の紙幣価値に換算すると、およそいくらになるのでしょうか?
一般的には、現在の価値で10億円以上と言われています。しかし、当時の大卒初任給と照らし合わせると、大きな誤差があるのです。
1968年の大卒初任給は約36,000円。2016年時点での大卒初任給がおよそ203,000円です。両者を比較し現在の紙幣価値を計算すると、なんと約20億円相当にもなります。
この数字は国内強盗事件の歴代最高額であり、今なお超える出来事はないのです。
三億円事件による金融への影響
昭和を代表する事件である「三億円事件」ですが、これをきっかけとして変わったことがいくつかあります。それは、給料の口座振込制度の普及と現金輸送時の警備強化でした。
三億円事件による金融への影響を、下記で詳しく解説します。
給料の口座振込制度
三億円事件による有名な金融への影響は、給料の口座振込制度の普及です。著者の父親世代となると、会社からの給与は手渡しが一般的でした。給料袋にお金を入れて機嫌よく帰宅する父。多くの人が、漫画やメディアで目にしたことがある光景でしょう。
しかし、現在では給与の受け渡しは銀行口座への振り込みが主流です。慣れ親しんだ給与の支払い方法ですが、実は三億円事件が深く関係しています。
口座振込制度の重要性は、昭和40年代には徐々に浸透していました。しかし、昭和43年に発生した三億円事件により、口座振込制度への意識変革は急速に加速します。
そして、口座振込制度が普及すると銀行にお金が集まるようになり、企業への貸し出しが増加。結果的に、日本経済へ好影響を与えたのです。
輸送時の警備強化
三億円事件をきっかけに、輸送時の警備強化も行われました。大量の現金を輸送することや、銀行員が運ぶことに対する危機感が高まり、警備の強化が成されたのです。
そして、同時に警備会社が発展しました。1962年(昭和37年)に日本初の警備会社を立ち上げたセコムは、東京オリンピックや三億円事件の影響を受けて、一気に認知が進んだのです。
また、前述した銀行振込制度の普及により開発されたのがATM。ATMは無人窓口が多かったことから、同時期に防犯カメラの重要性も提唱され、一気に防犯の意識が高まるきっかけとなったのです。
三億円事件は、日本の経済や金融、防犯面でも大きな影響を与えました。
三億事件お金の行方に関するまとめ
三億円事件は、誰も傷つけることなくすばやい犯行であったために、現在でも高い注目を浴びています。お金の行方は現在でも不明な点から、「犯人の本当の目的は何だったのか?」という憶測も途切れません。
犯人逮捕に至らず未解決のままの事件ですが、この事件をきっかけとして、日本の仕組みが大きく変わったことも事実です。
当記事をきっかけに、現在当たり前に利用する金融機関の制度や警備会社の存在について、改めて歴史の認知に繋がればと願っています。