飛騨地方では英雄だったと考えられている
日本書紀では悪鬼のような書かれている両面宿儺ですが、飛騨地方では神仏の化身として名を残しています。そんな神仏として伝説が残る両面宿儺は、飛騨地方の英雄的な豪族だったのではないかと考えられています。
古代大和朝廷は、自分たちに従わなかった部族を「土蜘蛛」「熊襲」などと、「蜘蛛」や「熊」などの生き物の名前をつけ異形のものと貶めて呼んでいました。そして両面宿儺も大和朝廷の支配に抵抗したために、「悪」であり異形のものとして日本書紀に描かれたのであろうと推定されています。
しかし飛騨地方で「英雄」として描かれている両面宿儺は、人々から強奪を繰り返す悪などではなく、飛騨の民にとっては英雄であり、時を経てモデルとなった人物を基に伝説や信仰が混ざっていき、現在に残る「両面宿儺」が生まれたのではないだろうかと考えられています。
両面宿儺の伝説や逸話
両面宿儺には伝承以外にも、都市伝説が話題になったり、新たな説が出たりもしています。ここでは、両面宿儺に関する都市伝説や新説を紹介します。
ネット掲示板で話題の「両面宿儺」の話
もともとマイナーだった「両面宿儺」が多く知られるようになったのは、2005年に2ch(現在の5ch)に投稿された話が話題になったためともいわれています。話は以下のようなものです。
とある建設業の人が投稿した話で、投稿者がとある岩手県の古い寺院を解体している時に、仲間がお堂の奥に木箱を発見しました。木箱は黒ずんでいて2メートル程の大きさがあったといいます。箱は住職に「絶対開けるな」と釘を刺されますが、外国人スタッフ2人が箱を開けてしまいました。
すると中には「頭が二つ、足と手が二つずつある奇怪なミイラ」が入っていたといいます。ミイラを見てしまった投稿者を合わせた3人は住職に「ミイラを見た人は長生きができない」といわれ、お祓いをうけたといいます。しかし結局ふたを開けた2人は帰らぬ人となり、投稿者は釘を踏み足を5針縫う大けがをしてしまったそうです。
後日住職の息子にミイラのことを聞いてみると、大正時代にカルト教団が作ったものだと判明。見世物小屋に出ている特異な姿をした人間を購入し、その人間たちで蟲毒(複数の虫や動物を箱に入れて戦わせて生き残った者を心霊とする)という呪術を行って生き残った一人をミイラにしたものだという話でした。
そして生まれた「リョウメンスクナ」は国家を呪うために生み出され、教団の移動に伴って多くの災害を引き起こしたといいます。しかし教祖が死亡し災害は沈静化、以後ミイラは行方不明だったものの今回開かれてしまった…。
という話です。結局このミイラはどうなったのかというと、住職親子と現在連絡が付かないために再度行方不明になったということで話が終わります。こうした怖い話は、ネットを中心に噂となって広まっていったといいます。
両面宿儺は結合双生児がルーツだった?
両面宿儺は頭部や腰が結合した、結合双生児だった可能性も指摘されています。結合双生児とは、一卵性双生児の遺伝子が分裂している段階で、完全に分裂しなかった場合に起こるといわれています。
結合性双生児には、両面宿儺と同じように手が4本、足が4本という姿の人もいるために、医学的な見地から両面宿儺が「結合性双生児」の可能性はあるといえます。大和政権に逆らう者として「異形の姿」で形容したのではなく、本当にそういう姿をしていた可能性も完全に否定できないものであるようです。
真実はわかりませんが、もし結合双生児であったならば、飛騨の人には「仏」に、大和政権には「鬼」に見えたのかもしれません。
両面宿儺に関する作品
呪術廻戦 1 (ジャンプコミックス)
両面宿儺が有名になった作品といわれています。作品の中で宿儺は「呪いの王」として登場し、「宿儺の器」である主人公を取り込んでストーリーが展開していく漫画です。作中の宿儺は、日本書紀に登場する「鬼」をイメージしたような設定になっています。作品も絵が美しくて、お話も面白いのでマンガ好きの人に是非おすすめしたい作品です。
安吾の新日本地理 07 飛騨・高山の抹殺──中部の巻──(ゴマブックス大活字シリーズ)
1951年の作品なので情報が古い部分もありますが、それでも筆者が「皇国史観」の目からではなく、支配された側の目から切り込んでいった意欲作です。敗者の歴史として、これまでの歴史観をに一石を投じた著書となりました。作中では筆者が両面宿儺の墓を考察しているので、岐阜県に行く機会があったら一度訪れてみたくなるような本です。
呪術廻戦 Vol.1 DVD (初回生産限定版)
大人気コミックス「呪術廻戦」のアニメ化作品です。作者の愛の深さを感じると評判のようです。バトルもかっこよくて最後まで魅せられる内容となっています。呪術開戦の原作を読んだことがなくても、アニメからはまった人もいるほどの美しい作画が魅力の作品です。
両面宿儺の実在に関するまとめ
今回、両面宿儺という鬼が実在したのかに焦点を置いて調査しましたが、調べていけばいくほど知らなかった伝承を知り、歴史の裏側を見たような気がした執筆となりました。
私の想像にはなりますが、きっと両面宿儺は飛騨の人にとっては特別な存在で、だからこそ多くの伝説が残されており仏として祀られているのだろうと感じることができました。日本の歴史の中に、こういった人物が昔存在ことも少しでも知っていただけたら幸いです。
丹=辰砂=赤色硫化水銀
丹生川=赤色硫化水銀が採れた川
水銀毒に侵された妊婦から生まれた結合双生児=両面宿儺
=赤色の体に炎の衣を纏い、二面二臂で七枚の舌を持つ火神アグニ
びっくりΣ( ºωº )!!