A級戦犯とは誰だったのか？主な人物まとめ【戦犯の定義も解説】

「A級戦犯って聞くけど何だろう？」
「A級戦犯の基準って何？」

A級戦犯とは第二次世界大戦に勝利した連合軍（米・英など）が、日本などの軍事裁判にかけた被告の総称です。戦後の極東国際軍事裁判により、「平和に対する罪」を問われ裁かれた人達のことをいいます。

毎年終戦記念日には首相が「靖国神社を参拝するかどうか」が注目され、参拝となると他国から批判されるのは、靖国神社にA級戦犯が合祀されているからです。私たちもA級戦犯と聞くと、犯罪人として裁かれたことはわかるものの、実際どういった罪で裁かれた人たちか知らないのが現状です。

そこでこの記事ではA級戦犯を含めた戦犯たちは何の罪で裁かれたのか、誰がA級戦犯かなどを解説していきます。

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A級戦犯とは？定義やランクの決め方

A級戦犯は最も重い罪の人を指すと思われがちですが、一概にそうとも言い切れません。まずそれぞれの定義は以下の通りです。

• A級戦犯：平和に対する罪
• B級戦犯：通常の戦争犯罪
• C級戦犯：人道に対する罪

要するに、戦争に対する罪を分類しているのです。日本では何となく「犯罪のランク」として認識されていますが、実は裁判時の日本の誤訳だといいます。英語では「Class-A war criminal」といい、このAはどちらかというと種別や部門といったニュアンスが強いそうです。そのため本当は「A項」「B項」「C項」という翻訳の方が正しいといえます。ただし東京判決裁判文で、

「侵略戦争を遂行する共同謀議、または侵略戦争を遂行することよりも、いっそう重大な犯罪は、まことに想像することができない」

という判決が出ており、戦争を先導した罪としてA級戦犯は最も重い刑罰が下っているのが事実です。

これらを決める判断基準ですが、第二次世界大戦時の戦時国際法での決まりは以下の通りでした。

• 一般市民・非戦闘員に危害を加えてはならない
• 軍事目的以外に攻撃をしてはならない
• 不必要な苦痛を与える残虐な兵器を使ってはならない
• 捕虜を虐待してはならない

一応国際的に決められていましたが、日本を含めほとんど守られていないのが現状でした。そして敗戦国の日本は、ポツダム宣言の「戦争責任を追及する」という文言を受け入れたために裁かれることとなったのです。

A級戦犯とされた人物は誰？

A級戦犯指定された人物は誰だったのか紹介します。

4回に分けられ約100名以上が逮捕された

A級戦犯は4回にわけて約100名以上の逮捕命令が出ています。代表的な人物は上記の通りです。第一次戦犯は1945年の9月11日に逮捕命令が出ました。この時は主に太平洋戦争開戦時の内閣官僚だった「東條内閣」の官僚16名に逮捕命令が出ており、内2名が自殺しています。

次に第二次戦犯は、主に大臣や軍上層部に逮捕命令が同年11月19日に出ました。この中には軍人で総理大臣にも就任した小磯国昭や、日独伊三国同盟を締結した松岡洋右が含まれています。そして第三次戦犯指名は軍の高官だけでなく、政財界にも広く逮捕命令が出ました。この時には総理大臣を務めた平沼騏一郎や廣田弘毅も含まれています。

第四次戦犯には国際検察局が追加逮捕しており、14名に逮捕命令が出ました。中には総理大臣だった近衛文麿も含まれており、逮捕前に自殺しています。

28名が起訴され7名が死刑に

約100名以上が認定され逮捕命令が出されましたが、裁判が行われたのは28名です。他の人物は逮捕されたものの不起訴になり釈放された人物、その他病気により不起訴になった人物もいれば、自殺した人物もいました。また、A級戦犯として逮捕されたものの、結局BC級戦犯として裁かれた人物もいます。

28名の内2名は判決を待たずに病死、1名が病気で免訴されたために計25名が有罪判決を受けました。内7名に死刑宣告が下されています。死刑は1948年の12月23日（皇太子・明仁親王の誕生日）に執行されました。そして終身刑となった18名の内4名は獄中で死亡、しかし残りの14名は恩赦により1955年までには皆釈放されています。

死刑になったA級戦犯7名一覧と詳細まとめ

死刑となった7名の詳細を紹介します。

※松井石根はA級戦犯たちとまとめて起訴され、死刑になりましたが、実際はA級戦犯ではなく「B級戦犯」です。

東條英機

日本の陸軍大将だった人物で、第40代内閣総理大臣などを兼任しました。陸軍を主導し、内閣総理大臣就任中に太平洋戦争が開戦しています。連合国の東京裁判では、開戦の罪（A級）その他殺人の罪（B、C級）の罪で起訴されました。

東條は裁判では一切自己弁護せず、この戦いは自衛の戦いであり侵略戦争ではなかったと主張しますが、敗戦の責任は負うと証言しています。そして1948年の11月12日に平和に対する罪で死刑判決が言い渡され、同年12月23日に刑が執行されました。後に靖国神社に合祀されています。

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板垣征四郎

日本の陸軍大将で、関東軍参謀長・陸軍大臣などを務めています。関東軍では石原莞爾とともに満州事変を起こし、第二次世界大戦では第7方面軍司令官を務めました。日本降伏後は「1928〜1945年における戦争に対する共通の計画参議」の罪と、米・英・蘭に対して太平洋戦争の遂行の罪、そしてソ連・中国・シンガポールの罪を問われて死刑判決を受けました。享年64歳で、後に靖国神社に合祀されています。

木村兵太郎

日本の陸軍大将であり、1944年にはビルマ方面軍司令官を務めています。ビルマ戦線では多くの兵士や日本の盟友の外国人などを置いて戦線を逃走。そのためビルマ戦役の生還者を含めた日本人から、厳しい批判をされている人物でもあります。

東京裁判では第三次近衛内閣・東條内閣で東條陸軍大臣の次官を務めていたために、A級戦犯指定されています。享年61歳であり、靖国神社に合祀されています。

土肥原賢二

日本の陸軍大将で、満州国建国及び華北分離工作に中心的役割を果たしていました。満州事変の時には、甘粕正彦を使い清朝最後の皇帝・溥儀を天津から脱出させ、その後華北分断政策を推進していきます。

日本降伏後はA級戦犯容疑で逮捕され、裁判時には中国が強固に極刑を主張していました。最終的には死刑が宣告され、刑が処されています。享年66歳で、その後靖国神社に魂と殉国七士廟に位牌が祀られました。

武藤章

陸軍中将で、日中戦争や対米交渉・フィリピン戦などに従事しました。降伏後は陸軍軍務局長を務めていた時の、フィリピンやスマトラでの虐殺の責任が有罪となっています。他の死刑判決者の中で中将だったのは武藤だけであり、虐待や虐殺事件の罪が重く見られたと考えられています。

東條は死刑判決後に、「巻き添えをくわせて気の毒だ、まさか君を死刑にするとは思わなかった」と語ったといいます。刑が執行され、享年57歳でした。1978年に靖国神社に合祀されています。

松井石根

※松井はA級戦犯とまとめて起訴され、死刑になりましたが、実際にはB級戦犯です。

陸軍大将であり、「日志提携」や「アジア保全」の活動に熱心な人物でした。しかし敗戦後は「南京事件」の責任を問われて逮捕されました。そして南京事件での防止や関係者の処罰を行わなかった問題を指摘され、死刑判決を受けています。

松井は南京事件について、「大虐殺は公的な報告を受けておらず、終戦後米軍の報告で初めて知った」と述べていますが同時に、

「日露戦争のときは、支那人に対してはもちろんだが、ロシア人に対しても、俘虜の取り扱い、その他よくいっていた。今度はそうはいかなかった。政府当局ではそう考えたわけではなかったろうが、武士道とか人道とかいう点では、当時とはまったく変わっておった」

と話していたといいます。その後死刑が執行され、後に靖国神社に合祀されました。

廣田弘毅

日本の外交官であり、第32代内閣総理大臣を務めた人物でもありました。A級戦犯として逮捕された理由は、組閣時に軍の干渉を受けていたこと、首相時代に軍部大臣現役武官制が復活したためだったといいます。そして「対アジア政策の共同謀議」や「非人道的な行動を黙認した罪」により起訴されました。

その中でも最も大きな罪は、「日中戦争を始めたことだった」といいます。そして死刑判決が出て、刑が執行されました。享年71歳で、後に靖国神社に合祀されています。

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Ａ級戦犯は誰なのか？に関するまとめ

今回A級戦犯の事を掘り下げて解説しましたが、自分が間違って認識していた部分もあり、きっと多くの人が勘違いしているところもあるのではと感じています。歴史の負の遺産に目を背けるのではなく、この記事を見て再度見直しするきっかけになってくれたらと願ってやみません。