16:リンドヴルム
リンドヴルムとは、ドイツや北欧で語り継がれる伝説のドラゴンです。長い頭と尖った尻尾、牙を持った姿をしており、コウモリのような翼を持っているとされています。ただし、翼に関しては「持っていない」と伝えられている地域もあるのが特徴的です。
ドイツの伝説では、旅人を襲うリンドヴルムが登場します。このリンドヴルムは川に住み、近くを通った旅人を襲っていました。しかし、数人の若者たちによって川から釣り上げられて殺されてしまいます。
北欧のスカンジナビアの伝説では、リンドヴルムは海のモンスターとして知られ、船を沈めることが出来るとして漁師たちに恐れられていました。ドイツと北欧の両方の伝説とも、リンドヴルムは水に関係した場所に住んでいることから水を好むドラゴンだと思われます。
17:ギータ
ギータとは、スペインの北東部に位置するカタルーニャ地方で語り継がれているドラゴンです。名前の意味は「足を蹴り上げるラバ」であり、長い首に緑色の体をしており、顔は真っ黒で牙を持っています。
口から炎を吐くことが特徴的なドラゴンであり、伝承ではもともと悪いドラゴンとして知られていました。しかし、時が経つにつれて守護竜として人々を悪霊などから守る存在となっていったのです。
特にカタルーニャ地方のベルガという街では、カトリック教会の祝日(聖体の祝日)に開催されるパトゥムという祭りで大きなギータの人形が登場します。花火を使って口から火を吹いているように見せる演出がギータの特徴を生かしているといえるでしょう。
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18:マラク
マラクとは、スペインのカタルーニャ地方の南西部に位置するリェイダの街に伝わるドラゴンです。マラクは紀元前5世紀ごろからリェイダの街に根付いており、20世紀にはマラクを模した山車が作られるようになりました。
マラクの姿は、緑色の体をした翼のないドラゴンであり、鼻の部分はねじれて口からは牙がのぞくという非常に恐ろしいものです。さらに、大きな口は人間を丸呑みにできるほどで火も吹けるとされています。
ただし、この容姿と特徴は20世紀ごろと比較的新しいものです。実際は子供のしつけ話やカトリック教会の祝日に山車の題材として使われています。とはいえ、マラクがリェイダの人々に馴染みのあるドラゴンとして現在も生きていることは間違いないでしょう。
19:クエレブレ
クエレブレとは、スペインの北西部に位置するアストゥリアス地方に伝わるドラゴンです。非常に丈夫で堅い翼を持っており、森や洞窟に住んでいるとされています。
伝説によるとクエレブレは人間や家畜を襲って食する凶悪なドラゴンであり、人々はクエレブレを鎮めるためにパンを捧げていました。中には、クエレブレを退治するために針入りのパンや熱した石を食べさせたという話もあります。
また、財宝や美しいものを好むこともクエレブレの特徴です。その証拠として野蛮な伝説の他にも「クエレブレの雄が美しい金髪の女性シャナに恋をし、洞窟で幸せに暮らしている」というロマンティックな伝説も存在しています。
20:ヴァヴェルの竜
ヴァヴェルの竜とは、ポーランドの南部に位置するクラクフという都市に伝わるドラゴンです。川近くの丘にある洞窟に住み、伝説では牛などの家畜や年若い女性を襲い食べていたとされています。
ヴァヴェルの竜に関する伝説は時代ごとに多少違っていますが、最も有名なのは生贄に選ばれた国王の娘を助けるためにドラゴンを退治した靴職人の話です。靴職人はエサとなる家畜の皮に硫黄をつめてドラゴンに食べさせました。
すると、ドラゴンは喉の渇きを癒すために大量の水を飲み死んでしまったのです。こうして悪の象徴のように伝えられてきたヴァヴェルの竜ですが、現在ではクラクフの有名なキャラクターとして人気があります。
ドラゴンの種類をよく知れるおすすめ書籍
最後に、ドラゴンの種類をよく知ることができる2冊のおすすめ書籍を紹介します。
- 幻想ドラゴン大図鑑
- ドラゴンの教科書:神話と伝説と物語
子供だけでなく大人でも読み応えのあるものですので、ぜひ参考にしてみてください。
幻想ドラゴン大図鑑
本書は、77体のドラゴンをそれぞれの特性ごとに分けて紹介した図鑑形式の1冊です。緻密で美しいイラストとドラゴンの特徴をゲームのような図式で解説しており、子供から大人まで楽しめるようになっています。
ドラゴンの教科書:神話と伝説と物語
本書は、作家である著者が世界各地のドラゴンや龍に関する神話や伝説をまとめた1冊です。古代から現代に伝わるドラゴンだけでなく、物語やゲームに登場するドラゴンをイラストとともに詳しく解説しています。
ドラゴンの種類に関するまとめ
今回は、世界におけるドラゴンの種類を一覧表をもとに解説しました。現在の私たちがよく見る恐竜のようなドラゴンだけでなく、世界の伝説や神話を見てみるとヘビやトカゲに近い姿のドラゴンも存在することが分かります。
多くのドラゴンが悪者として描かれている一方で、守護者として描かれているドラゴンもいました。国や地域によって伝承や伝説は異なり、神話もそれぞれに特徴があるドラゴンが登場します。
日本や中国など東洋の龍と比較しても面白いのではないでしょうか。この記事を通して、皆さんがドラゴン伝説や神話に興味を持ち、ドラゴンが登場する映画や小説をより楽しめたなら幸いに思います。
ゲームなどとは違って当時の絵はなかなか生々しいんですね!
やっぱり悪を表したものみたいなのだからなのかな?でもかっこいいです!
ありがとうございたしたイク
今回もとても勉強になりました。
ウェールズの旗にもなっているドラゴンにはそのような謂れがあるのですね。
ヨーロッパのドラゴンは悪の象徴と言われているのに、なぜ旗に描かれているのだろうと不思議に思っていたのです。そもそもドラゴンではなくて、ワイバーンなのですね。
元ゲーム好きなので、「Skyrim」というゲームを思い出しながら拝読いたしました。
昼夜を忘れてやっていたものです。
砂川さんへ
今回もご覧くださってありがとうございます!毎回、本当に励みになるお言葉をいただき、嬉しいです。
おっしゃる通り、西洋のドラゴンは「悪の象徴」というイメージが強いですが中には良い意味で伝承されているドラゴンといます。また、一口にドラゴンといっても地域によって「ワイバーン」「ファイアードレイク」など名称が異なるところが興味深いですね。
ゲームに登場するドラゴンは素晴らしいイラストレーターさんによって美しく描かれています。私も昔ハマっていたゲームに登場するドラゴンにワクワクしたものですよ!歴史上の文献に描かれているドラゴンと比べてみるのも楽しいですね。
また次回の記事も楽しみにしていただけたら、幸いです。
本当にありがとうございます!