現在のアッピア街道
ローマ帝国の崩壊後、街道はしばらく利用されていませんでしたが、1784年にピウス6世の命でアッピア街道に並行する新道が作られ、これまでの街道は旧街道となりました。
現在ではその歴史的価値が再評価され、断片的に旧街道周辺を観光名所として保存する動きがあります。ここでは、アッピア街道の古の姿を知る方法を一部紹介します。
徒歩でアッピア街道州立公園を散策
アッピア街道の起点であるカペーナ門は現存していませんが、その先のサン・セバスティアーノ門(アッピア門)から10kmにわたってローマ帝国時代の石畳が保存されています。特に前半は、アッピア街道州立公園として整備されており、緑地の中を散策しながら街道を歩くことができます。
道中には初期キリスト教の地下墓所であるカタコンベや、マクセンティウス帝の競技場などがあり、往時の雰囲気を堪能できます。
車や自転車でローマ郊外へ
ローマ市内のアッピア旧街道以外は、往時の姿を留めている箇所は少ないですが、旧街道に沿って拡張された車道が整備されています。特にローマからカプアまでは、初期に整備された直線道路に沿って道が作られているので、当時どれだけ最短距離で道を作ろうとしたかがわかる貴重な区間です。
また、街道沿いには城跡や要塞跡などの古代の建造物が点在しており、かつての様子を思い描きながら街を訪問していく楽しみもあります。車や自転車が趣味の方は、イタリア中南部を街道を利用して周遊するのも良いかもしれません。
新アッピア街道が整備
ローマ市内では、旧街道の北東を並行するように「新アッピア街道(Via Appia Nuova)」が整備されています。この道路はローマ市街地からローマ・チャンピーノ空港前を通過し、トラピスト修道院のあたりで旧街道と合流します。
石畳ではなくなりましたが、アッピア街道は今でも主要な幹線道路の一つとしてローマの交通を支えています。
アッピア街道の見どころ
アッピア街道は、古代ローマが誇る土木技術の集大成です。街道沿いには法王や貴族の墓、祠、廃墟が続いており、在りし日のローマを感じられます。見どころにあふれたアッピア街道ですが、特におすすめのスポットが以下の6つです。
- カラカラ浴場
- マイルストーン
- ドミネ・クォ・ヴァディス教会
- サン・カッリストのカタコンベ
- チェチーリア・メテッラの墓
- クィンティーリ荘
効率よく見学できるよう、アッピア街道の入り口近くから順に、それぞれ詳しく紹介します。
世界最大の浴場「カラカラ浴場」
カラカラ浴場は、217年に第22代ローマ皇帝カラカラが建設を命じた世界最大の浴場です。豊かな広い庭園があり、その周囲には浴場や貯水所へ水を引き入れるための水道が巡っています。
浴場には、冷室と温室、熱室と温度の異なる3つの浴槽があり、さらに今でいうジムのような部屋もありました。また、浴場やジムの周囲には図書館や講義を行う広間、商店などが並んでおり、浴場というより娯楽施設としての性格が強い場所でした。
現在では一般公開されており、遺跡の内部を見学できます。また、サマーシーズンになると美しい星空の下、ライトアップされた古代遺跡の中でオペラやバレエ、コンサートなどが開かれ、多くの人で賑わいます。
お手頃な価格となっているので、気軽に楽しめますよ。ちなみに、月曜日は短縮営業となっており、午後は中に入れませんので、気をつけてくださいね。
距離標識の原点!現存するローマ帝国の「マイルストーン」
カラカラ浴場からサン・セバスティアーノ門へ向かい、ドミネ・クォ・ヴァディス教会方面へ少し歩くと第1マイルストーンがあります。
マイルストーンは、ローマ帝国が紀元前120年ごろに敷いた道路関連法に基づいて設置されたのが起源です。主要な街道に1ローマ・マイルごとに設けられました。1ローマ・マイルとは、1000歩分の距離です。
アッピア街道にある第1マイルストーンは76年に建てられたものの複製で、実物はカンピドリオ広場にあります。現在では距離だけでなくビジネスや人生・歴史の節目、医療などさまざまな分野で使われる言葉ですが、ローマ帝国時代に起源があったとは驚きですね。