魔女裁判(魔女狩り)とは?起こった経緯や結末、関わった人物まで紹介

魔女裁判に関わったとされる人物

マシュー・ホプキンス

「魔女狩り将軍」と呼ばれたマシュー・ホプキンス

イングランド東部で活動した、「魔女狩り将軍」と呼ばれた人物であり、おそらく「魔女狩り」という行為の醜悪さを最も体現した人物です。

彼は「自分はイギリス政府から『魔女狩り』の認可をもらっている」と吹聴しながら街を渡り歩き、その街にいる手近な女性を魔女に仕立て上げて処刑。その謝礼として多額の金銭を受け取るという、あまりにも醜悪な方法で「魔女」を利用した人物だと伝わっています。

彼自身の「魔女狩り」がでっち上げだったのはもちろん、「イギリス政府からの認可」も実体のない自称だったことが明らかになっており、正直なところ「悪」というにも生温い詐欺師であり殺人者が、このマシュー・ホプキンスだと言えるでしょう。

ハインリヒ・クラーマー

ハインリヒ・クラーマーが著した『魔女に与える鉄槌』

ドイツの宗教裁判官であり、魔女狩りによる凄惨な拷問や処刑を加速化させた人物です。

彼は『魔女に与える鉄槌』という著書を執筆して「魔女の撲滅の必要性」を社会に知らしめましたが、その中で誤った「魔女の見分け方」を多数紹介したことで、凄惨な拷問や処刑が横行する、陰惨な「魔女狩り」の加速化を招きました。

ハインリヒ・クラーマー自身も、決して模範的な裁判官とは言えず、議事録の改ざんや拷問による自白の強要などを行っていた記録が残っており、魔女狩りに際しては同僚から「耄碌して幼児退行しているように見えた」とすら評されています。

『魔女に与える鉄槌』を著した理由は、単純な利益を求める感情だったのか、歪んだ正義感だったのか。どちらにせよ、彼もまた魔女裁判を加速化させた加害者であることには違いありません。

アビゲイル・ウィリアムズ

ゲーム『Fate/Grand Order』にてキャラクター化されたアビゲイル

セイラム魔女裁判の元凶である少女です。スマートフォン向けゲーム『Fate/Grand Order』にてキャラクター化されたため、名前をご存知の方も多いのではないでしょうか。

セイラム魔女裁判が始まるきっかけを作り、何人もの罪のない人々を「魔女」として告発して処刑台に送ったことが記録されており、「魔女狩り」という「無知ゆえの狂気」を象徴する人物だとも言えます。

そもそもが奇矯でヒステリックな少女だったことが記録されていますが、彼女の記録はセイラム魔女裁判の最中、1692年時点からすっぽりと抜け落ちており、その後半生については全くの謎に包まれています。一説では船でセイラムを去ったともされていますが、信ぴょう性のある記録から彼女の足跡をたどることは、現在では不可能だと言わざるを得ません。

魔女裁判で「魔女」とされた人物

ティテュバ

セイラム魔女裁判の最初の被害者・ティテュバ

セイラム魔女裁判にて、最初に魔女として告発されたネイティブアメリカンの女性です。セイラムの悲劇の元凶の一人であるベティ・パリスの父親に仕える奴隷であり、オカルト的な技術を数多く知っていたことから悲劇に巻き込まれることになりました。

とはいえ、彼女は告発こそされましたが、魔女裁判の重要な証人として処刑を免れ、最終的には釈放されています。しかし裁判以降の彼女の人生は全く記録に残っておらず、アビゲイルの行く末同様に、彼女の行く末もまた、セイラム魔女裁判が残した謎の一つとなっているようです。

アグネス・サンプソン

ノース・ベリック魔女裁判を描いたとされる絵画

ノース・ベリック魔女裁判で特に厳しい拷問を受けた、助産師の女性です。

前進の大望をそられた挙句、舌を圧迫するくつわを付けられたまま鞭打ちの拷問を受けた彼女は、拷問に耐えきることができずに自白。53にも及ぶでっち上げの罪状と、悪魔と契約したことを認めさせられた挙句に、火あぶりに処されてしまうという悲劇に見舞われました。

彼女の死によって魔女狩りの風潮が加速してしまったこともあり、もしかすると「魔女狩り」という迫害の一番の被害者だと言える人物かもしれません。

ジャンヌ・ダルク…?

ジャンヌ・ダルクは「魔女」として処刑された?

ジャンヌ・ダルクもまた、「魔女の疑いを掛けられて処刑された」とも言われる人物です。しかし厳密に言えば、彼女を裁く裁判は「魔女裁判」ではなく、あくまで教会主導の「異端審問」だったと言えます。

凄惨な拷問や処刑など、ジャンヌ・ダルクを襲った悲劇と魔女狩りは似通っていますが、厳密には異なる形の悲劇ですので、その辺りは混同しないように注意が必要です。

魔女裁判に関するまとめ

知識のない民衆が、不安をあおる一部の人間の悪意によって暴走し、やがて取り返しのつかない悲劇を生み出す。まさに「人間社会故の悲劇」とでも言うべき、魔女裁判という事件。

一応は終息したと言ってもいいこの悲劇ですが、これに類似するような動きは、現在でもそこかしこで散見されています。フェイクニュースやSNSでの炎上騒ぎなどは、ある意味でこのよう事件の前段階のようなものだとも言えるでしょう。

「歴史に学ぶ」ということは、過去に起こった”良い事”を繰り返し、”悪い事”を繰り返さないこと。

「魔女」という非科学的なものの存在が薄れている現代ではありますが、だからこそこの「魔女裁判」という悲劇をもう一度学び直し、現代の社会生活に活かしていってほしいと思います。

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