アーリマン(アンリマユ)とは?実在した?ゾロアスター教の悪神について簡単解説

アーリマン(アンリマユ)について扱っている作品

作品1「『Fate』シリーズ」

『Fate / stay night』で描かれるアンリマユは、実は話の本筋に大きくかかわっている

「アンリマユ」という検索でこのページに行きついた方の中には、おそらくこの作品シリーズから「アンリマユ」という神格を知った方がかなり多数いらっしゃるのではないでしょうか?

歴史上の事物や人物を扱う作品である『Fate』シリーズにおいて、アンリマユと呼ばれるキャラクターはある重要な役回りを果たすキャラクターでもあります。「世界全ての悪を司る」というアーリマンの特徴から、ろくでもないポジションなのは想像できますが、実はそういう側面が描かれるだけではなく……。

「アンリマユ」という神格の特徴をきっちりと押さえたうえで、『Fate』らしいアレンジも加わったキャラクターとして仕上げられているのがこの作品のアンリマユですので、神話上のアーリマンや、あるいはこの記事から興味を持った方は、ぜひシリーズをプレイしていただければと思います。

作品2「『コブラ』」

『コブラ』に描かれる悪役、クリスタル・ボーイは、アーリマンの力を得てパワーアップする

往年の名作漫画である『コブラ』にも、実はアーリマンの名前が登場しています。

本作のアーリマンは、主人公であるコブラの最大の宿敵、クリスタル・ボーイが手に入れた”強大な力”の名前として登場。アーリマンの力を手に入れたクリスタル・ボーイは、人を結晶化するなどの強大な力を得ますが、その分非情さと残酷さを増してアーリマンの眷属と化してしまいます。

”アーリマン”を名乗る人物は作中に登場しませんでしたが、物語上の宿敵を更に上から操る圧倒的な力として、「暗黒の邪神」の名前に恥じない凶悪さを見せつけてくるのが、この作品の”アーリマン”という存在だと言えるでしょう。

『コブラ』という作品自体が名作であることはもちろんですが、読み進めていくとゾロアスター教に縁深い事物の名前が多数みられるなど、元ネタを知っているとより楽しめる要素もありますので、皆様ぜひご一読ください。

作品3「『左門君はサモナー』 」

本作に描かれるアンリ・マユは、悪神でありながら非常に俗っぽくピュア(?)な女の子として描かれている

神々や悪魔などを扱うギャグマンガである『左門君はサモナー』にも、アーリマンを元ネタとしたキャラクターが描かれています。

しかし本作に描かれるアーリマンは、なんと「アンリ・マユ」と言う名前の女の子。出来ることや司る悪性などはゾロアスター教で描かれているアーリマンと同じですが、「どんな悪事でもできるからこそ、長い月日の中で悪事をやり尽くしてしまった」という設定の、非常に俗っぽいサブヒロインとして描かれているのが、本作のアンリ・マユの大きな特徴です。

小難しい部分ではなく、「まずは概略としてアーリマンについて知りたい」という方は、まずはこの作品からアーリマンという神格に触れてみることをお勧めします。

ゾロアスター教の簡単年表

ゾロアスター教が発生

この時期、原イラン多神教の祭司・ゾロアスターによって、原イラン多神教の善神であるアフラ・マズダーを信仰するゾロアスター教が誕生します。とはいえゾロアスター教の成立については殆ど謎に包まれた状態であり、詳しい発生時期や原因については分かっていません。
マゴス族によって、ゾロアスター教の儀式の原型が作られる

メディア王国の神官だったマゴス一族との関わりによって、ゾロアスター教独自の拝火儀礼や鳥葬儀礼などが誕生。これによって現在まで残るゾロアスター教の原型が形作られました。
アケメネス朝ペルシアの誕生

キュロス2世によってメディア王国が滅ぼされ、アケメネス朝ペルシアが建国。このキュロス2世はゾロアスター教を信仰していたという説が有力ですが、アケメネス朝ペルシアには様々な宗教が混在していたようであり、キュロス2世の信仰対象については不明な部分も残されているのが現状です。

アケメネス朝ペルシアの滅亡

アレクサンドロス大王の遠征によって、アケメネス朝ペルシアが滅亡。その領域にはギリシャの文化が流入し、ゾロアスター教にもギリシャ神話的な要素が付け加えられることになりました。

ミスラ崇拝の勃興

アルメニア王国を中心に、アフラ・マズダーの子とされるミスラ神への信仰が発生。ギリシャ神話のアポロン神と同一視されるミスラ神への信仰を主体としたゾロアスター教の一派は、次第にゾロアスター教の本流とは異なる「太陽信仰」を育てていくことになりました。

ササン朝ペルシアの建国

ササン朝ペルシアが建国され、ゾロアスター教はその国教となる形で全盛期を迎えました。この頃には、隊商などの影響でゾロアスター教は中国などにも伝播しており、ゾロアスター教は様々な国家の文化に影響を与えました。

ゾロアスター教の聖典である『アヴェスター』の編纂や、教義の確立などが行われたのもこの頃です。

キリスト教世界との戦い

ローマ帝国などのキリスト教勢力との戦いが本格化。この頃になるとゾロアスター教からキリスト教への改宗者が続出し、ゾロアスター教の権勢には陰りが見え始めることになってしまいました。

善悪二元論的な教義が確立

ササン朝ペルシアの王としてホスロー1世が即位し、彼の手でゾロアスター教は再び盛り返すことになります。

この頃に「善のアフラ・マズダーと、悪のアーリマン」という二元論的な価値観が生じたとされており、この段階でようやく現在に伝わるゾロアスター教の教義が完成したと言えるでしょう。

イスラム教徒の戦いにより衰退

ササン朝ペルシアがアラブ人から侵攻を受けたことにより実質的に滅亡。これによって多くのゾロアスター教徒がイスラム教への改宗を迫られることになりました。

当初こそイスラム教への反乱などが起こっていましたが、9世紀半ばごろにはその反乱の息吹も終息。これによってゾロアスター教は歴史上における役目を終えることになったのです。

アーリマン(アンリマユ)の関連作品

おすすめ書籍・本・漫画

原典訳 アヴェスター

アーリマンの登場するゾロアスター教の教典である、アヴェスターを現代語訳、解説した一冊です。

ある程度の知識が前提とされており、読みにくさや難しさを感じる部分はありますが、本記事やWikipediaなどの情報と突き合わせつつ読んで行けば、多少時間はかかりますが読んで理解することができる書籍ではあると思います。

アーリマンやゾロアスター教そのものに興味を持った方にはぜひ読んでほしい書籍です。

『COBRA』

『アーリマンを扱っている作品』でも紹介した、往年の名作漫画です。

内容そのものが非常に面白い名作であることはもとより、ゾロアスター教に着想を得たと思しき描写も時折存在しているため、そういった部分の創作を楽しみたい方にもオススメした作品となっています。

左門くんはサモナー

これも『アーリマンを扱っている作品』の項で紹介させていただいた作品です。

コメディタッチの作品のため、ゾロアスター教やアーリマンという存在そのものに興味を持った方にはおすすめできませんが、今風なノリのギャグマンガを楽しみつつ、”なんとなく”神話上のアーリマンという存在の概略を掴みたい方にはぴったりの作品です。

おすすめのゲーム作品

Fate/hollow ataraxia

先に紹介した『Fate』シリーズの中でも、アンリマユがメインキャラの一人として活躍することになる作品です。

作品としては本編である『Fate/stay night』の後日談、あるいはファンサービス版という感じですが、”アンリマユ”という存在だけにフィーチャーするなら、この作品だけでも十分に楽しめると思います。

「この世全ての悪を象徴する悪神」という概念的な存在であるアーリマンを、非常に魅力的なキャラクターに仕上げている作品ですので、興味のある方はぜひプレイしてみてください。

アーリマン(アンリマユ)についてのまとめ

序文でも触れさせていただきましたが、歴史を知るにあたって”宗教”というものの存在は必要不可欠です。宗教の教義の変化や宗派の分裂などが歴史上の大事件と重なっていたり、あるいはそれ自体が大事件として記録されているあたりからも、それは読み取ることができるでしょう。

そして、そんな部分から考えると「この世全ての悪を司る邪神」であるアーリマンは、一体どのような理由付けのためにそのような存在として描かれるようになったのか。そういった部分にも、ある種の必然的に疑問が生じることになります。

創作としては「盛られすぎ」とも言えるその神格としての能力や、インド神話との興味深い相関関係などが、いったいどんな理由から必要とされたのか。そういった部分について、様々な歴史上の出来事から考察してみるのも面白いかもしれません。

それでは、少々小難しい記事でしたがお付き合いいただきありがとうございました。

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