いくつ答えられる?ダヴィンチクイズ

純文学のおすすめ本・小説19選【近代文学から現代作家、海外作品まで】

「純文学と呼ばれる作品を読んでみたいけど、どれが面白いんだろう」
「日本や海外の名作を読んでみたい!」

このように考えて、図書館や本屋の本棚の前で考え込んでしまった人も多いのではないでしょうか。日本の純文学の歴史は明治維新後から始まったといっても、今までの作品は数え切れないほどありますし、海外の名作も合わせれば気が遠くなるほどです。

この記事では、純文学好きが高じて大学で日本文学や世界文学を学んだ筆者が、日本の純文学や海外文学の不朽の名作を合わせて19冊ご紹介します。実は、「純文学」というくくりが存在するのは日本だけで、海外では小説を区別していません。けれども、日本の名作に触れたら海外の作品も気になりますよね。

ここでは、「近代文学編(日本)」「近代文学編(海外)」「現代文学編(日本)」「現代文学編(海外)」の4つの切り口でご紹介します。純文学初心者さんにも読みやすいものを選んだので、1冊でも気になってくれたら嬉しいです。

近代文学編(日本)

坊ちゃん

読んでみて

夏目漱石の中編小説『坊ちゃん』は、漱石の作品の中でも特に多くの人に愛読されている小説です。1906年に発表された100年以上前の小説ですが、個性豊かな登場人物のいきいきとした描写からか古臭さがありません。夏目漱石は『吾輩は猫である』『こころ』なども有名ですが、『坊ちゃん』はほかの作品と比べて大衆的で読みやすさは1番です。

主人公は四国の旧制中学校に赴任したばかりの数学教師「坊ちゃん」。赴任先の同僚たちは俗物ばかりで、曲がったことが大嫌いな主人公は数々の事件を巻き起こしていきます。漱石自身が愛媛県尋常中学校に赴任していたときの経験をもとに後年書かれた小説です。

みんなのレビュー

檸檬

読んでみて

『檸檬』は梶井基次郎が1925年に発表した短編小説です。この小説を表題作とする短編集『檸檬』は31歳の若さで亡くなった梶井の生涯で唯一の出版作品でした。知性と感覚を融合させた詩情あふれる作品で、梶井は日本文学史のなかでも特異な位置を占めています。

得体のしれない不安につぶされそうになっていた主人公が京都の街をさまよい歩いていると、1軒の果物屋で美しいレモンを見つけます。レモンを買った彼はある小さないたずらを仕掛け、愉快な気持ちになって新京極通を下っていきました。要約してしまえばたったこれだけの話なのですが、胸を占める重苦しい不安とふと沸いてきたいたずらな気持ちを1つの鮮やかなレモンを中心に描き出す手腕は見事です。

みんなのレビュー

読んでみて

芥川龍之介の『鼻』は、1916年に発表された芥川初期の短編小説です。発表当初、芥川の師であった夏目漱石からとても褒められた作品で、芥川はそのことから自分の小説に自信をもったと言われています。

池の尾の僧・禅智内供は18センチほどもある大きな鼻をもっているために、人々にからかわれたり悪口を言われたりしていました。ある日、弟子の仕入れてきた方法を試してみるとなんと鼻が小さくなり、内供は大変喜んだのですが…。人間のちょっと意地悪な心理を描き出した、短いながらも味わい深い小説です。

みんなのレビュー

風立ちぬ

読んでみて

スタジオジブリの宮崎駿監督がアニメ映画化したことでも有名な『風立ちぬ』は、堀辰雄の中編小説です。アニメはこの小説と零戦の設計士・堀越二郎の生涯をミックスしたものなので、内容がほとんど違います。『風立ちぬ』というタイトルをもとに宮崎監督がアニメを作り上げていった感じですね。

こちらの小説は、堀辰雄本人の実体験をもとに書かれたといわれています。重い結核に冒されている婚約者に寄り添う主人公の「私」が、恋人に忍び寄る死を覚悟しながらそれに裏打ちされて輝く2人の「生」を美しく描いた小説です。高原に建つサナトリウムや周囲の自然と、人間の死生を詩情にあふれる筆致で描いています。

みんなのレビュー

伊豆の踊子

読んでみて

『伊豆の踊子』は、言わずと知れた文豪・川端康成の初期の代表作です。川端が19歳の時に伊豆を旅した経験をもとに書かれたといわれています。これまでに6回も映画化されていることからも日本人からの人気の高さがうかがえます。

孤独感や憂鬱な気持ちから逃げ出すように伊豆へやってきた青年が、旅芸人の一座と道連れになることから物語は始まります。青年が踊り子の少女に抱く淡い恋心がテーマではあるのですが、修善寺、天城峠、下田へと続く主人公たちの旅が旅情に溢れていて、昔の旅はこんな風だったのだなぁと思わせます。明治から昭和にかけての時代の風俗が分かるのも近代文学のいいところです。

みんなのレビュー

女生徒

読んでみて

太宰治といえば『人間失格』『斜陽』などが有名ですが、この『女生徒』も根強いファン人気をもつ作品です。主人公の14歳の女の子が、朝起きてから夜眠るまでの1日が日記のような独白体で続いています。思春期に特有な自意識の揺れる様子と、どこか斜に構えたような心理が描かれていて、読んでいると自分にも身に覚えのある感情に気が付くはずです。

この小説は太宰のファンであった有明淑(しず)が、太宰へ自分の書いた日記を送ったことをきっかけに書かれました。淑の日記を題材に太宰は『女生徒』を書いたのですが、それにしても14歳の女の子の心理描写が見事です。当時30代の男性が書いたとは思えないほどいきいきとしていて、読んでいるうちに作者の存在を忘れてしまいそうになります。

みんなのレビュー

近代文学編(海外)

風と共に去りぬ

読んでみて

1936年に出版されたマーガレット・ミッチェルの長編小説『風と共に去りぬ』。執筆におよそ10年もかかった壮大な名作です。南北戦争時代のジョージア州アトランタを舞台に、スカーレット・オハラという南部の白人女性の半生を描いています。

1939年に映画化されたときにはアカデミー賞で9部門を受賞するなど世界的大ヒット作となりました。けれども、アメリカ南部の白人の立場から書かれたこの作品には、「奴隷制度を正当化している」という黒人の人たちからの根強い批判もあります。その批判も含めて、アメリカという国の成り立ちや根底にある思想が分かる良書です。

みんなのレビュー

月と6ペンス

読んでみて

イギリスの小説家サマセット・モームの『月と6ペンス』は、画家のポール・ゴーギャンをモデルに書かれた小説です。安定した生活を捨て画家となった男・ストリックランドの生涯を、友人の視点から描いています。実際にはゴーギャンはフランス人でしたし、亡くなったのもタヒチではありませんが、ストリックランドとの間には多くの共通点があるためゴーギャンがモデルとみなされています。

モームはこの『月と6ペンス』で人気作家となりました。執筆にあたり実際にタヒチを訪れ、ゴーギャンの作品を手に入れたというから熱の入れようが分かります。日本語訳はいくつかありますが、金原瑞人の訳がおすすめです。

みんなのレビュー

変身

読んでみて

フランツ・カフカの中編小説『変身』は、カミュの『ペスト』と並んで「不条理文学」の代表作と言われています。カフカは現在のチェコ出身の作家で、どこか不安定で孤独を感じる幻想的な作品を多く残しました。しかしそのうち少なくない数の作品が未完に終わっていて、カフカの文学世界はかなり謎に包まれています。

『変身』は、主人公グレーゴル・ザムザがある朝起きると巨大な虫になっていたという不条理な出来事から物語が始まります。ちなみにこの主人公が変身する生き物、大抵「虫」と翻訳されていますがドイツ語の原語「Ungeziefer」は鳥・小動物を含んだ「有害生物」を指します。カフカが意図した生き物は何だったのかを考えながら読んでみるのも面白いでしょう。

みんなのレビュー

阿Q正伝

読んでみて

中国の小説家・魯迅の小説『阿Q正伝』は、1920年代に発表された中編小説です。魯迅は中国でも早い時期にヨーロッパの手法を使って小説を書いた作家で、その作品は東アジアで広く読まれています。日本でも中学校の国語の教科書に作品が掲載されています。

中国のある小さな村の、本当の名前もはっきりしない「阿Q」という男が主人公です。村の中でも最下層にある男を縦横に活躍させることによって、魯迅は社会の中のさまざまなタイプの人間を描くことに成功しています。毛沢東もこの小説を気に入り、談話で何度も言及したため魯迅の人気が高まりました。

みんなのレビュー

現代文学編(日本)

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド

読んでみて

『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』は、村上春樹が1985年に発表した長編小説です。「ハードボイルド・ワンダーランド」の章と「世界の終り」の章が交互に進み、それぞれ世界が異なる一人称で語られます。この「別々の物語(に見える世界)を1章ごとに交互に進める」方法は村上の『海辺のカフカ』『1Q84』などでも使われています。

「ハードボイルド・ワンダーランド」の方法は「計算士」という特殊な職業の「私」が、自分自身に仕掛けられた謎を探し求める物語です。対して「世界の終り」では、壁に囲まれた「街」に入ることになった「僕」が、「街」の謎とその生まれた理由を探し求めます。1度読むと、またすぐ読み返したくなる中毒性のある小説です。

みんなのレビュー

アムリタ

読んでみて

『アムリタ』は1994年に発表された吉本ばななの長編小説です。吉本ばななは1964年生まれの小説家で、「死」や「この世の神秘」をテーマに多くの小説を書いています。詩人で評論家の吉本隆明は彼女の父です。

『アムリタ』は頭を打って記憶が欠落してしまった女性が主人公です。妹の自殺、父親の違う弟の不思議な力の目覚め、さらに妹の恋人との恋など、次々と起こる出来事に流されてしまいそうになりながら、主人公は旅に出ます。彼女は旅の中で、何を感じ取ってどんな人間になっていくのでしょうか。

みんなのレビュー

猫を抱いて象と泳ぐ

読んでみて

小川洋子が2008年に発表した『猫を抱いて象と泳ぐ』は、「リトル・アリョーヒン」と呼ばれる寡黙な少年の数奇な一生を切なく、美しく描いた作品です。作者の小川洋子は数々の純文学作品を発表していて、なかでも『博士の愛した数式』は映画化もされた人気作です。けれども、ここではこの『猫を抱いて象と泳ぐ』をご紹介したいと思います。

11歳のまま成長を止めた「リトル・アリョーヒン」。彼は大きくならないまま、操り人形を使ってチェスを指し伝説的なチェスプレイヤーとなります…。この小説に限らず、小川の作品世界にはどれも特殊な静けさが漂っていて、その空気感ははまると病みつきです。

みんなのレビュー

https://twitter.com/sorawo__miagete/status/1243328504726315008?s=20

ある男

読んでみて

平野啓一郎は1999年、京都大学に在籍しているときに発表した小説『日蝕』で芥川賞を受賞した小説家です。実験的な作品も多く、時に難解と言われることもありますがベストセラーとなった『マチネの終わりに』は映画化もされました。ここでご紹介する『ある男』は、平野の2年ぶりの長編小説です。

弁護士の城戸は、かつての依頼者から奇妙な相談を受けます。その女性・里枝の夫であった「大祐」が、死後に全くの別人であったということが分かったというのです。「人間とはどういう存在なの」「どんな過去があっても、人は愛を感じることができるのか」いくつものテーマが重なり合い、読み終わった後しばらく考え込んでしまう作品です。

みんなのレビュー

夏物語

読んでみて

2008年に『乳と卵』で芥川賞を受賞した川上未映子。小説家になる前は歌手をしていたということもあって、彼女の文章には独特のグルーヴ感があります。『夏物語』は、そんな川上が2019年に発表した長編小説です。

大阪に生まれ、小説家を目指して上京した38歳の夏子にはある1つの夢が芽生えつつありました。それは「自分の子供をもちたい」ということ―この世の意味、生命の意味を悲喜こもごもの筆致で問いかける、川上の新たな代表作です。

みんなのレビュー

現代文学編(海外)

存在の耐えられない軽さ

読んでみて

ミラン・クンデラはチェコ出身でフランスに亡命した小説家です。1984年に発表した『存在の耐えられない軽さ』は、冷戦下のチェコスロバキアを舞台とした恋愛小説で世界的ベストセラーとなりました。

優秀な外科医のトマーシュ、その恋人のテレザ、トマーシュの浮気相手のサビナの3人を軸に描かれるこの物語は、1968年に起こった「プラハの春」を題材にしています。「プラハの春」というチェコスロバキアの革命を背景に3人の恋愛が展開されるのですが、「人生の『重さ』とは?または『軽さ』とは?」を問いかける哲学的な内容です。読み終わると、自分自身にとってのこの作品タイトルの意味を考えてしまいます。

みんなのレビュー

朗読者

読んでみて

1995年に出版された『朗読者』は、ドイツ人作家ベルンハルト・シュリンクの長編小説です。シュリンク自身の少年時代を題材にしたこの作品は、ドイツやアメリカでベストセラーとなり39か国語に翻訳されました。2008年に公開された「愛を読むひと」という映画の原作でもあります。

ある雨の日、道端で具合が悪くなった15歳の少年・ミヒャエルは名前も知らない女性に介抱してもらい、ほどなく男女の仲となります。その女性・ハンナはミヒャエルに本を朗読してくれるよう頼むようになったのですが…。少年が性や愛情に目覚める話、と思いきや、読んでいくうちにさらに深いテーマへと静かに進んでいく、不思議な余韻を残す作品です。

みんなのレビュー

オスカー・ワオの短く凄まじい人生

読んでみて

ジュノ・ディアスは1968年にドミニカ共和国に生まれた作家です。6歳のときに家族でアメリカに渡ったディアスは、デビュー短編集『ハイウェイとゴミ溜め』で注目を集めこの『オスカー・ワオの短く凄まじい人生』でミリオンセラーを記録しました。

主人公はオタクな青年・オスカー。女の子にまったくモテないことが悩みなのですが、その原因はかつて祖父や父を苦しめた「ドミニカの呪い」らしいのです。「ガンダム」をはじめ、日本のアニメ好きなオタク文化と南米文学のマジック・リアリズムが混ざりあい、新時代の文学を作り上げています。

みんなのレビュー

82年生まれ、キム・ジヨン

読んでみて

『82年生まれ、キム・ジヨン』は、2016年に韓国で出版されたチョ・ナムジュの小説です。韓国では社会現象と呼べるほど大ヒットを記録し、芸能人が「読んだ」と発言しただけで炎上したり、かと思えば国会議員が文大統領に「女性が夢見ることのできる社会を」とプレゼントしたりしています。日本でここまでの現象を呼び起こす小説は、今なかなかありませんいよね。

この小説はキム・ジヨンという女性の精神科カルテという形式で書かれています。33歳の主婦・ジヨンは夫と娘の3人でソウル郊外に暮らすごく普通の女性です。その「ごく普通の韓国女性」が受けてきた苦しみを描き出した、韓国内外を問わずにフェミニズム問題に一石を投じる作品です。

みんなのレビュー

まとめ

日本と海外の純文学おすすめ作品を、近代文学編・現代文学編に分けてご紹介してきました。読んでみたい1冊は見つかりましたでしょうか?

「近代文学は読みづらい」と遠ざけている人もいるかもしれません。確かに言葉としては読みづらいのですが、より私たちに迫ってくるテーマをもつ現代文学よりも客観的に読むことができ、純文学初心者さんにはおすすめです。太宰治の「女生徒」などは言葉も現在と近いですし、中編ほどの長さなので特に読みやすいはずです。

より深いテーマを追う小説を読んでみたいときには、現代文学に手を伸ばしてみてください。あなたの価値観を変えてしまう出会いが待っているかもしれません。この記事がそのきっかけになっていたらとても嬉しいです。

コメントを残す