日本に及ぼしたグラムロックの影響
日本でもグラムロックに影響を受けたアーティストは少なくありません。
1967年にザ・タイガースでデビューした沢田研二もそのひとりです。1974年ごろからメイクをしてステージに上がり始め、18枚目のシングル「さよならをいう気もない」以降ファッションも含めてグラムロックに傾いていきました。
また忌野清志郎が率いるRCサクセションもグラムロックバンドのひとつです。メイクや衣装に関してはデヴィッド・ボウイやマーク・ボランに影響を受けています。
ローリー寺西を中心としたロックバンド・すかんちも、派手な衣装とメイクをしています。クイーンやレッド・ツェッペリンなどをルーツにオールドスタイルのロックを演奏しました。
イエモンことザ・イエロー・モンキーのボーカル吉井和哉が、最も影響を受けたアーティストがデヴィッド・ボウイだということも有名です。活動初期のイエモンはグラムロック色が強く、奇抜な衣装とメイクを施していたと言います。
グラムロックとビジュアル系ロックの違いは?
グラムロックと日本のビジュアル系ロックとは、見た目の特徴から同一視されることがあります。確かに衣装やメイクの面では影響を受けていると思われますが、必ずしもグラムロックのすべてを継承しているとは言い切れません。
グラムロックはロックン・ロールなどのノリが良くポップでキャッチーな音楽を演奏していましたが、ビジュアル系ロックはハードロックやヘヴィメタルを下敷きにしています。
1987年にデビューしたBUCK-TICKや1989年デビューのX JAPANなどは、どちらかといえばビジュアル系ロックでしょう。90年代に入るとLUNA SEAやSIAM SHADEを始め、数多くのビジュアル系バンドがデビューしました。
1980年代にはゴシックファッションのような黒色を基調とした衣装のビジュアル系バンドが目立ちましたが、90年代に入ると華やかで煌びやかな衣装が現れ、近年ではカラフルでポップな衣装も増えて来ています。
グラムロックの名盤
1971年-「電気の武者」T・レックス
バンド名をT・レックスに改名してから2作目となるスタジオ盤のアルバム。元キング・クリムゾンのイアン・マクドナルドやイエスのリック・ウェイクマンなど、豪華なゲストミュージシャンを迎えてレコーディングされました。
発売後イギリスのアルバム・チャートで8週連続で第1位を獲得し、アメリカでは最高32位に達しました。この作品からシングル・カットされた「ゲット・イット・オン」が全英1位・全米10位、「ジープスター」が全英2位にチャートインを果たしました。
マーク・ボランは1971年に受けたインタビューで、「このアルバムを聞けば、僕等の人気の理由が分るよ」と答えています。
1972年-「ジギー・スターダスト」デヴィッド・ボウイ
デヴィッド・ボウイの5作目となるスタジオ盤アルバム。宇宙から来た架空のロック・スターである「ジギー・スターダスト」の成功から没落までの物語を基に制作されたコンセプト・アルバムです。全英アルバム・チャートで第5位を記録し、2016年までにトータルで750万枚を売り上げました。
シンプルなバンド編成を基本にレコーディングされていて、管楽器や弦楽器が豪華に楽曲を彩っています。アルバム全体を通して乾いたサウンドにまとめられていて、なんとも格好いい作品に仕上がっています。
タイトル曲である「ジギー・スターダスト」はローリング・ストーン誌の選ぶ「オールタイム・グレイテスト・ソング500」や、ロックの殿堂の「ロックン・ロールを形成した500曲」に選出されています。
1972年-「すべての若き野郎ども」モット・ザ・フープル
解散寸前だったモット・ザ・フープルがデヴィッド・ボウイの力を借りて制作し、世界的なヒットとなったアルバムです。デヴィッド・ボウイはこのアルバムのためにタイトル曲である「すべての若き野郎ども」を書き下ろし、アルバム全体のプロデュースも担当しました。
先行して発売されたシングル「すべての若き野郎ども」は全英3位・全米37位を記録し、ロックの殿堂の「ロックン・ロールを形成した500曲」にも選出されました。アルバムもシングルの大成功により、イギリスのアルバム・チャートで21位を記録しました。
デヴィッド・ボウイは「すべての若き野郎ども」をセルフカバーしていて、1974年発売の「デヴィッド・ライブ」に収録されています。
2011年には「すべての若き野郎ども」と名付けられた、モット・ザ・フープルのドキュメンタリー映画も公開されました。
1973年-「20thセンチュリー・ボーイ」T・レックス
全英シングルチャートで第3位を獲得したT・レックスのシングルで、日本でも人気が高い楽曲です。1972年にコンサートのため初来日した際に、東京のスタジオでレコーディングされました。映画「20世紀少年」のテーマ曲に使用されたので、ご存じの方もいるのではないでしょうか。
力強いイントロのギターフレーズはテクニック的にそれほど難しくないにもかかわらず、しっかりと記憶に残る名フレーズです。
多くのミュージシャンによってカバーもされていて、X JAPANも初期のライブのレパートリーにしていました。1989年に発売されたシングル「紅」でその演奏を聴くことが出来ます。
1973年-「フォー・ユア・プレジャー」ロキシー・ミュージック
ロキシー・ミュージックの2作目となるアルバムです。画家のサルバドール・ダリやデヴィッド・ボウイの元愛人で、歌手でもあったアマンダ・レアをジャケットに起用したことでも話題を呼びました。
前作「ロキシー・ミュージック」のガレージ・ロックのような勢いのある作風とは違い、「フォー・ユア・プレジャー」はアダルトでダークなサウンドでまとめられています。
キーボードのブライアン・イーノが参加した最後の作品でもあるので、彼の活躍をロキシーで聴くことのできる最後のアルバムです。
グラムロックに関するまとめ
ハードロックやプログレッシブロックとは違った音楽性を作り上げた、グラム・ロックのミュージシャンたちは偉大です。のちのパンクロックやニューウェイヴ、日本のビジュアル系ロックのミュージシャンたちに大きな影響を与えました。
煌びやかで魅惑的な衣装やメイクは、今もなおデザイナーやセレブたちにインスピレーションを与え続けています。
イエモンや忌野清志郎がお好きなら、ぜひグラムロックを聴いてみてください。彼らのルーツがそこにありますよ!
キャプションにマルコシアスバンプと記載すべきではないか。あまりにもミュージシャンへの敬意を欠いてはいないか。