ルイアームストロングの功績
功績1「ジャズの発展に大きく貢献」
生まれたばかりのジャズという音楽はデキシーランド・ジャズなどを代表として、即興的な部分を持ちつつも楽曲を聴かせるための演奏が主流でした。そのためミュージシャンの個性を出さず、音色もある程度揃えられていました。
そんな中現れたルイ・アームストロングのトランペットの音色は、とても個性的でかつ人間味に溢れた新しいものでした。これによりジャズのミュージシャンたちは、各々の個性を生かした演奏をするようになっていきました。
その後に現れる天才的サックス奏者のチャーリー・パーカーらによって生み出されたビバップ(テクニック重視のジャズの種類)の時代においてもルイの精神は生き続け、アドリブという即興演奏で個性を競い合うことになります。
功績2「即興で歌う歌唱法のスキャットをあみ出した」
ジャズの方向性を決定づけたルイ・アームストロングですが、ジャズのボーカルにも大きな影響を残しました。彼はトランペットを歌うように演奏し、トランペットを吹くように歌を歌いました。その中から生まれたのが「スキャット」と呼ばれる歌唱法です。
自身のバンドであるホット・ファイブで活動していた彼が、1926年に録音した「ヒービー・ジービーズ」で初めてスキャットが世界に知られました。
ルイがこの曲の録音の最中に歌詞カードを落としてしまい、しかたなく「ドゥビドゥビ」と適当に言葉を充てて歌い続けたそうです。それが意外に面白かったのでそのまま採用され、世界に発表された結果大ヒットを記録したという訳です。
それ以降ジャズのボーカリストは楽器の演奏者たちと同じように、楽曲を演奏する中でスキャットを披露するようになりました。
功績3「俳優としても活躍 」
1930年代にはルイは全米中やヨーロッパ各地をコンサートツアーで周るほどの人気を獲得していました。レコード会社は彼の多彩な才能を最大限に利用し、いろいろなメディアにも出演させていました。
1950年代にはハリウッドで俳優としてデビューを飾り、40本以上の映画に出演したと言います。代表作としては同じく大人気の歌手だったフランク・シナトラやビング・クロスビーと共演した「上流社会」や、実在したコルネット奏者レッド・ニコルズのドキュメンタリー映画である「5つの銅貨」などがあげられます。
ルイ・アームストロングの代表曲
この素晴らしき世界
1967年に発表された楽曲で、ルイ・アームストロングの最も有名な代表曲です。作詞・作曲はアメリカのアレンジャーであるジョージ・デヴィッド・ワイスと音楽プロデューサーのボブ・シールです。ボブ・シールはペンネームであるジョージ・ダグラスの名前で公表されています。
この曲は悲惨なベトナム戦争を嘆き、平和な世界を望んで作曲されました。そのことを念頭に入れてこの曲を聴くと何とも深い味わいがあります。発売当初アメリカではあまり売れませんでしたが、イギリスのチャートで1位を取り大ヒットしました。
その後1987年に公開されたアメリカの映画「グッドモーニング・ベトナム」の中で使用され、再評価をうけて全米32位のヒットとなりました。現在に至るまで、世界中の数えきれない程のミュージシャンにカヴァーされ続けています。
ハロー・ドーリー
ミュージカル「ハロー・ドーリー」の主題歌。作曲はブロードウェイで活躍した作曲家のジェリー・ハーマンが担当しており、このミュージカルでトニー賞作詞作曲賞に輝きました。
1964年に公開された映画版では歌手で女優のバーブラ・ストライサンドが主演を務め、第42回アカデミー賞で美術賞・ミュージカル音楽賞・録音賞を受賞しています。
主題歌である「ハロー・ドーリー」はルイ・アームストロングが客演したことでも知られていて、ミュージカル版と映画版では歌詞が少し異なっています。軽快な明るいジャズで、非常にスイングが心地よい名曲です。
ルイはビッグバンドの指揮者として出演していて、主人公であるドーリー(バーブラ・ストライサンド)とデュエットを披露しています。
聖者の行進
元々はアフリカ系アメリカ人たちの葬儀の際に演奏される曲で、ルイ・アームストロングの葬儀でも彼を送り出すため「聖者の行進」が演奏されました。
黒人霊歌やスピリチュアルとも呼ばれるこれらの曲は、アメリカ大陸に奴隷として連れてこられたアフリカ人たちによって生み出されました。讃美歌や教会音楽、クラシック音楽とアフリカのリズムが融合して、見知らぬ土地に連れてこられたアフリカ人たちの心の支えとなったのです。
1959年のアメリカ映画「5つの銅貨」の劇中で歌われていることでも有名です。俳優であり歌手のダニー・ケイとルイ・アームストロングのふたりが、和気あいあいと楽しげに「聖者の行進」を歌っている様子がとても印象的でした。
日本でも1998年のテレビドラマ「聖者の行進」の作中で使用されたり、企業のコマーシャルソングなどにも使用されています。またアントニオ猪木がモハメド・アリとの対戦の際に、入場曲で使用しました。
ルイアームストロングの名言
途中で諦めちゃいけない。途中で諦めてしまったら、得るものより失うもののほうが、ずっと多くなってしまう。
ルイ・アームストロングの人生を表したような一言です。20代からミュージシャンとして成功していた彼ですが、もしそこで慢心していたら60歳を過ぎてから大成功を得ることは出来なかったでしょう。何事もやり通すことに意味があることを教えてくれる名言です。
一日に百万ドル稼ぐようになったとしても、これまでとは違う自分になろうなんて思わないさ。
彼が亡くなるまで住んでいたニューヨークの住まいは、大成功を収めたミュージシャンが住むにはとても質素だったと言います。数々のヒットソングを発表し映画にも出演して、裕福な暮らしも出来たでしょう。しかしそれをせず謙虚に過ごしたルイ・アームストロングの人柄が表れた名言です。
もしもイエス・キリストが黒い肌で行進をなされば、やはり彼らは殴打するのだろうな。
朗らかなイメージとは裏腹にルイは正義感にあふれた人物でもありました。特に人種差別に対しては様々な発言を行っています。この発言はアフリカ系アメリカ人の解放のために尽力したマーティン・ルーサー・キング牧師に激励としてかけられた言葉です。