「そもそも『ロマネスク』って何?」
「ロマネスク建築ってどんな様式?」
「ロマネスク建築の代表的な建物は?」
「ロマネスク建築とゴシック建築の違いは?」
この記事を読んでいるあなたは、このような疑問を抱いているかもしれません。ロマネスクとは、中世の西ヨーロッパで誕生した建築様式です。教会を建築するための技術や知識が最大限に使われました。
ロマネスク建築によって建てられた建築物は現在でも多数残っており、世界遺産として登録されている建物もあるほどです。この記事ではロマネスク建築について、歴史的な建物が大好きで世界の建築物の写真を眺めることが趣味の筆者が詳しく解説します!
この記事を書いた人
Webライター
Webライター、岩野祐里(いわのゆり)。5歳の頃、イギリス史に夢中になり図書館へ通いながら育つ。大学では国際文化を専攻し、イギリス史と英文学の研究に没頭。その後、大学院にて修士課程を修了。研究論文は「19世紀英国の社会と犯罪」について。歴史全般の研究歴は11年、イギリス史は21年に及ぶ。現在はWebライターとして活動中。
ロマネスクとは何か
「ロマネスク」とは簡単にいうと
ロマネスクとは、建築をはじめとして絵画や彫刻、音楽、文学など芸術的な様式を表す用語の一つです。ロマネスクは日本語に訳すると「ローマ風の」という意味であり、フランスの考古学者によって名付けられました。
「ローマ風の」という意味からも分かるように、ロマネスクは古代ローマ文化への憧れや影響を受けたものを示しています。
ロマネスク時代は10世紀から12世紀頃のロマネスク建築から始まったとされ、19世紀頃から正式に「ロマネスク」という言葉が使われるようになりました。
ただし、19世紀当時のロマネスクの評判はあまり良いものではありません。ロマネスクは「物事にこだわらない大らかさがあり、奇抜過ぎる」と思われていたのです。
20世紀に入ってから、ようやくロマネスクの良さが認識されるようになりました。芸術的な評価を得られるようになり、その中でもロマネスク建築は世界遺産に登録されていったのです。
「ロマネスク建築」とは簡単にいうと
ロマネスク建築とは、10世紀後半から11世紀初頭に誕生した建築様式です。イタリアやドイツ、フランスを中心とした西ヨーロッパで始まり、発展しました。
教会建築としての意味合いが強く、ヨーロッパの多くの教会や大聖堂、修道院にはロマネスク建築が用いられています。
そのため、ロマネスク建築物は修道士たちの巡礼路や世俗と離れた森や山頂などの僻地に建てられていることが多いです。
ロマネスク建築の基盤は教会建築
ロマネスク建築は、キリスト教の修道院の活動がヨーロッパに大きな影響を与えていた時期に生まれました。そのため、教会をはじめとする大聖堂や修道院などの教会建築が基盤となっています。
12世紀には教会の建築が増加し、ヨーロッパ各地においてロマネスク建築を用いた建造物が多く建てられました。当時の教会の役割は現在よりも厳格であり、絵画や彫刻といった豪華な装飾物はほとんどありません。
神に感謝し、世俗と離れて修道士としての活動に勤しむことを第一の目的として建てられました。そのため、ロマネスク建築の建造物を見れば、当時の修道士たちの生活を垣間見ることができるでしょう。
ロマネスク建築の代表的な建物
ロマネスク建築様式で建てられた建物は数多くありますが、その中でも特に代表的な建物を三つ紹介します。
シュパイアー大聖堂
シュパイヤー大聖堂は、ドイツの都市であるシュパイヤーに建てられた聖堂です。正式名称を「聖マリア・聖ステパノ大聖堂」といい、赤い砂岩でできたロマネスク建築の建物になります。
後述するロマネスク建築の特徴である「バシリカ式」を顕著に表しており、ロマネスク建築の中でも最も美しく優れたデザインを持つ建物です。
そんなシュパイヤー大聖堂は、ローマ皇帝であったコンラート2世の埋葬地として1030年から1061年に建設されました。コンラート2世以外にも、他のローマ皇帝やローマ王、彼らの家族や僧侶たちがシュパイヤー大聖堂に葬られています。
シュパイヤー大聖堂は二度破壊される被害に遭いました。しかし、その都度修復されて、今では建設当時の姿を見せています。1981年には文化遺産として、ユネスコの世界遺産に登録されました。
ピサ大聖堂
ピサの斜塔で有名なピサ大聖堂。1272年、イタリアのトスカーナ州ピサにある「ピサのドゥオモ広場」にて建てられます。
ピサ大聖堂は、イタリアの都市ピサがキリスト教信仰の中心地となった富と権力を示す目的で建設されました。ロマネスク建築が盛んになった11世紀から作られ始めたため、ロマネスク建築の様々な様式や技術が用いられています。
例えば、「バシリカ式」や「ヴォールト建築技術」などが代表的なものです。他にもロマネスク建築の特徴である「アーチ」なども取り入れられました。
また、ピサ大聖堂の鐘楼として作られた斜めに傾いている塔は「ピサの斜塔」と呼ばれ、現在ではピサ大聖堂も含めた観光スポットとして人気を博しています。
ヴォルムス大聖堂
ヴォルムス大聖堂はドイツの都市ヴォルムスに建てられた聖堂です。シュパイヤー大聖堂と同じく、美しいロマネスク建築物の一つとして知られています。
建築材料もシュパイヤー大聖堂と同様に赤い砂岩が使われており、内観の厳かな雰囲気を醸し出す要素として役立ちました。建築様式もロマネスク建築の特徴を持っており、「バシリカ式」の聖堂が外観によく現れています。
ただし、上記二つの代表的な建物と異なる点として挙げられるのが建築目的です。ヴォルムス大聖堂は純粋に神に捧げるものとして作られ、装飾品は非常に簡素なものばかりです。
そのため、ヴォルムス大聖堂はロマネスク建築物の中でも装飾の少ない重厚なロマネスク様式を顕著に表している建造物と言えるでしょう。