「インダス文字ってなに?」
「インダス文字の特徴って?」
「インダス文字が未解読の理由とは?」
インダス文字とは、紀元前2500年~紀元前1800年頃のインダス文明で用いられていた文字の事を言います。
これまで多くの研究者によって、あらゆる歴史の謎が解明されてきました。しかし、「インダス文字」に関しては、現時点で解読も難しく、全くのお手上げ状態とされています。
そこでこの記事ではインダス文字の概要や特徴をご紹介しつつ、どうして未だに未解読なのか、その理由や解読の条件、ほぼ同時期に使われていた他言語との比較も合わせてお伝えしていきます。
この記事を書いた人
一橋大卒 歴史学専攻
Rekisiru編集部、京藤 一葉(きょうとういちよう)。一橋大学にて大学院含め6年間歴史学を研究。専攻は世界史の近代〜現代。卒業後は出版業界に就職。世界史・日本史含め多岐に渡る編集業務に従事。その後、結婚を境に地方移住し、現在はWebメディアで編集者に従事。
インダス文字とは?文字の秘密に迫る
インダス文字の概要
冒頭でもお伝えした通り、インダス文字とは紀元前2500年~紀元前1800年頃のインダス文明で用いられていた文字になります。
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インダス文明の都市遺跡であるハラッパ―遺跡を発掘調査した際に、石で作られた印章にインダス文字が記されていました。
このインダス文字は現在のインド大陸において発達した3系統の文字の一角をなしているとされていますが、研究が進んだ今でも文字は未解読のままです。
インダス文字の特徴
インダス文字は印章や土器、青銅製品、象牙などに記されており、5000近くもの多くの資料が発掘されています。刻まれている文字は多岐に渡り、研究により400字近い文字があると考えられています。
仮に400字程文字があるとすると、この一文字で音を表す表音文字とするには多過ぎます。そのため、文字を組み合わせることで表意および表音を意味していると推測されています。
インダス文字は未解読?その理由とは
インダス文字の解読は20世紀初頭からずっと行われてきました。ある研究者はドラヴィダ語から解読を試み、またある研究者はアーリア語からの解読に努めました。
しかし解読はできませんでした。解読するための条件が揃っていなかったためです。かつて解読不可能とされていたエジプトの文字「ヒエログリフ」が解読できたのも、この解読するための条件が揃っていたからでした。
インダス文字の解読に必要な条件
言語の種類
インダス文字は現在推測されているだけでも400字程あるとされています。組み合わせることで表意・表音の文字になると考えられていますが、これだけでは一体何を意味しているのかが見当もつきません。
例えば日本語の場合、ひらがなで「かばん」と表記したとします。英語では「バッグ」となります。インダス文字は「●× △■ ◎★」と記載されることになりますが、「●×」が意味する音が「か」なのか「バ」なのか判断がつきません。それだけでなく文字の組合せも複雑なため、現状、この言葉だろうとアタリをつけることも難しい状況なのです。
他言語との対比
インダス文明は先住民ドラヴィダ系民族が作り上げた文明とされていますが、インダス文明には各地から多くの民族が流入していたと考えられています。そのため各地の言葉が流入し、混ざってインダス文字が作られた可能性があります。
わかりやすくお伝えすると、日本語の中に英語が混ざっているということです。例えば「わたしはライスが食べたいです」といった文章があったとします。私たちは「ライス」という言葉が「ごはん」を意味していることを知っているため、文章の意味を理解できますが、インダス文字の場合、そもそも一文字が何を意味しているのかわかっていません。
また他の言語と比較できる対象が見つかっていないのも、インダス文字解読の妨げとなっています。例えば、この後後述するヒエログリフです。この文字も解読の手立てがないと諦められていました。
しかしロゼッタ・ストーンという石板が発見されたことで解読の糸口が見つかったのです。このロゼッタ・ストーンにはヒエログリフ、デモティック、ギリシア語の3つの言葉を用いてまったく同じ内容の文章が記されていました。
インダス文字の場合においても、このロゼッタ・ストーンのような他言語による文章の対比があれば解読の手がかりをつかむことができるでしょう。インダス文明はメソポタミア文明との交流もあったとされているため、今後の発掘調査や研究が進むことで、何かしらの手がかりを見つけられる可能性があります。