稀代のロックミュージシャンであるカートコバーン。彼は、27歳という若さにして遺書を残し、拳銃自殺によってこの世を去りました。
この記事では、カートコバーンの遺書の英語原文や日本語訳を、カートコバーン関連の資料収集が趣味の筆者がご紹介していきます。
遺書に込められたカートの思いや、彼が自殺に至った経緯まで解説するので、ぜひご一読ください!
この記事を書いた人
一橋大卒 歴史学専攻
Rekisiru編集部、京藤 一葉(きょうとういちよう)。一橋大学にて大学院含め6年間歴史学を研究。専攻は世界史の近代〜現代。卒業後は出版業界に就職。世界史・日本史含め多岐に渡る編集業務に従事。その後、結婚を境に地方移住し、現在はWebメディアで編集者に従事。
カートコバーンの遺書の原文と日本語訳
まず、ここではカートコバーンの遺した遺書の内容と、その日本語訳を追っていきましょう。なお、日本語訳についてはヨーロッパ人の友人に協力を仰ぎながら筆者が行ったものです。
To Boddah
Speaking from the tongue of an experienced simpleton who obviously would rather be an emasculated, infantile complain-ee.
ボッダへ。
これは、無気力で子供じみた不満を言う方がまだましだと思っている、経験豊富な痴人の言葉だ。
This note should be pretty easy to understand.
だから、この遺書を理解するのは本当に簡単だと思うよ。
All the warnings from the punk rock 101 courses over the years, since my first introduction to the, shall we say, ethics involved with independence and the embracement of your community has proven to be very true.
いわゆる独立とコミュニティの抱擁に関わる倫理がはじめて紹介されて以来、長年にわたるパンクロックの基礎コースから発せられた全ての警告は、真実であることが証明されている。
I haven’t felt the excitement of listening to as well as creating music along with reading and writing for too many years now.
もうずいぶん長い間、文章を読んだり書いたりするだけでなく、音楽を聞くことにも、作ることにも感動を覚えなくなってしまいっていた。
I feel guity beyond words about these things.
僕は、これらのことを言葉にできないほど罪深く感じている。
For example when we’re back stage and the lights go out and the manic roar of the crowds begins, it doesn’t affect me the way in which it did for Freddie Mercury, who seemed to love, relish in the the love and adoration from the crowd which is something I totally admire and envy.
たとえば、僕らがバックステージにいる時、ライトが消え、熱狂した群衆の叫び声がはじまったとしても、それは僕には響かない。フレディーマーキュリーが観衆の愛や崇敬の念を味わっていたようには感じられないんだ。
僕は、フレディがそう感じていたことを本当にすばらしいと思うし、同時にうらやましさも感じている。
The fact is, I can’t fool you, any one of you. It simply isn’t fair to you or me.
本当のことを言えば、僕は君たちを誰ひとり騙すことなんてできない。だって、それは単純に君たちや僕にとってフェアじゃないからだ。
The worst crime I can think of would be to rip people off by faking it and pretending as if I’m having 100% fun.
僕の考えられる中で最も重い罪は、まるで100%楽しいかのように振る舞って人々を騙すことなんだ。
Sometimes I feel as if I should have a punch-in time clock before I walk out on stage.
時々、僕はステージに向かって歩いて行くときに、まるでタイムカードを押さなければならないような感覚を覚えることがあった。
I’ve tried everything within my power to appreciate it (and I do,God, believe me I do, but it’s not enough).
僕は、それに感謝するために、力の及ぶ限り全てのことを試してみた(僕は感謝してるんだ。神様、僕が感謝してるってことを信じてくれ。でもそれでも十分じゃないんだ)。
I appreciate the fact that I and we have affected and entertained a lot of people.
僕が、そして僕たちがたくさんの人々を楽しませられたという事実はよくわかっているんだ。
It must be one of those narcissists who only appreciate things when they’re gone.
僕は、全部なくなった後にしか物事の価値を理解できないナルシストに違いないさ。
I’m too sensitive.
自分はあまりにも繊細だ。
I need to be slightly numb in order to regain the enthusiasms I once had as a child.
子供の頃に持っていた熱意をもう一度取り戻すためには、少し鈍感になる必要がある。
On our last 3 tours, I’ve had a much better appreciation for all the people I’ve known personally, and as fans of our music, but I still can’t get over the frustration, the guilt and empathy I have for everyone.
最近の3つのツアーでは、個人的に知ってる全ての人や、僕らの音楽のファンにいつもよりも少し感謝できるようになっていた。
でも、僕はまだみんなに対するフラストレーションや罪、共感を乗り越えることができないんだ。
There’s good in all of us and I think I simply love people too much, so much that it makes me feel too fucking sad.
人間はみんないいところを持っているし、僕は単純にみんなのことを好きすぎるんだと思う。
それで、そのことがクソみたいにたまらなく悲しいんだ。
The sad little, sensitive, unappreciative, Pisces, Jesus man.
悲しくて、繊細で感謝しらず、それで魚座の男。
Why don’t you just enjoy it?
どうしてただ楽しまないんだろう?
I don’t know!
わからねえよ。
I have a goddess of a wife who sweats ambition and empathy and a daughter who reminds me too much of what i used to be, full of love and joy, kissing every person she meets because everyone is good and will do her no harm.
僕には、大望を持ち、他人に感情移入することのできる女神のような妻と娘がいる。
娘は、かつて愛と喜びに満ちていた自分のことを、いやというほど思い出させてくれた。彼女は出会った全ての人にキスをする。というのは、その人たちはみんな善良だし、彼女に何の害も及ぼさないからだ。
And that terrifies me to the point to where I can barely function.
そして、僕はほとんど何もできなくなるぐらいの恐怖を覚えるんだ。
I can’t stand the thought of Frances becoming the miserable, self-destructive, death rocker that I’ve become.
僕は、フランシスが自己破壊的になり、自分のように死へ向かうロックンローラーになって、みじめに朽ちて行くことを想像するのが耐え切れない。
I have it good, very good, and I’m grateful, but since the age of seven, I’ve become hateful towards all humans in general.
楽しい時間を過ごしてきた。とても楽しい時間だった。だから、感謝もしている。
でも、7歳の時から、僕はほとんど全ての人間に嫌悪感を抱くようになったんだ。
Only because it seems so easy for people to get along that have empathy.
なぜなら、人々はいともたやすく他人の気持ちを理解できるように見えたから。
Only because I love and feel sorry for people too much I guess.
たぶん僕は人のことを愛しすぎているし、同時に彼らのことをとてもかわいそうだとも思っているんだろう。
Thank you all from the pit of my burning, nauseous stomach for your letters and concern during the past years.
これまでの数年間、手紙をくれたり心配してくれたりしたことに、焼けつくように痛んで吐き気のする胃袋から感謝を伝えるよ。
I’m too much of an erratic, moody baby!
僕は、気まぐれな赤ん坊みたいに感情の起伏が激しすぎる。
I don’t have the passion anymore, and so remember, it’s better to burn out than to fade away.
僕の中にはもうなんの情熱も残っていないんだ。
だから覚えておいてくれ、少しずつ消えて行くよりは、いっそのこと燃え尽きた方がいいんだってことを。
Peace, love, empathy. Kurt Cobain
平和、愛、共感。カートコバーン。
Frances and Courtney, I’ll be at your altar.
フランシスとコートニー、僕は君たちの祭壇にいるよ。
Please keep going Courtney, for Frances.
コートニー、君はフランシスのために進み続けてくれ。
For her life, which will be so much happier without me.
彼女の人生は、僕がいない方が幸せなものになるはずだ。
I LOVE YOU, I LOVE YOU!
愛している、本当に愛しているよ!