「ローマカトリック教会って、実際にはどんな考え方なの?」
「ローマ教皇って、何をする人なの?」
こんな疑問をお持ちではないでしょうか。ローマカトリック教会ときくと、「キリスト教だということはわかるけど、色々な宗派があって難しい」など疑問に思う方もいるかもしれませんね。
ローマカトリック教会は、仏教、イスラム教と並ぶ世界三大宗教の一つで、世界中に12億人以上の信徒がいると言われています。しかし、「カトリック教会」と「プロテスタントなど他の宗派」との違いや、カトリック教会の成り立ちなど、カトリック教徒でないとなかなか知る機会がないかもしれません。
今回は、様々な宗教についてあらゆる本を読み漁った著者が、ローマカトリック教会とはどのような宗教なのか、成り立ちや歴史、カトリックの教え、そしてローマ教皇とはどのような人なのか詳しくご紹介していきます。
この記事を書いた人
一橋大卒 歴史学専攻
Rekisiru編集部、京藤 一葉(きょうとういちよう)。一橋大学にて大学院含め6年間歴史学を研究。専攻は世界史の近代〜現代。卒業後は出版業界に就職。世界史・日本史含め多岐に渡る編集業務に従事。その後、結婚を境に地方移住し、現在はWebメディアで編集者に従事。
ローマカトリック教会とはどんな宗教なの?
ローマカトリック教会とは、ローマ教皇を頂点とし、世界中に12億人の信徒がいるキリスト教の最大宗派です。イエス・キリストの死後、弟子たちがイエスの教えを伝導していくなかで、イエスを信じる人々の集いが形成され、これが後に教会へと発展していきました。ローマカトリック教会では、教会が最大の権限を持ち、で伝統を重んじながら一体感が強い教派です。
ローマカトリック教会は、神の子であるイエスが人としてこの世に生まれたこと、全ての人の罪を自らに背負い十字架の上で死んだこと、全ての人々の罪が許されたことの証としてイエスが復活したこと、これらがカトリック教会の信仰の中心となっています。
カトリックとプロテスタントの違いとは?
カトリックもプロテスタントも信じる神は「父・子・聖霊」の三位一体の神であり、イエス・キリストも聖書も同じです。何が違うかというと、まず教職者が違います。カトリックでは「神父」、プロテスタントでは「牧師」と呼びます。
神父とはローマカトリック教会で儀式や典礼をおこなう司祭のことで、神に生涯を献げるため独身です。一方、プロテスタントの牧師は、伝道や信徒の霊的ケアをおこない、牧師も一般信徒も神の元では身分が平等であるとされているため妻帯が許さます。
次に、カトリックとプロテスタントでは「聖母マリア」への信仰に違いがあります。カトリックでは、「聖母マリアへの祈り」や「マリア像」など、マリアは聖家族の一員であると考えるのに対し、プロテスタントではマリアは普通の人間として考えます。そのため讃美歌「聖しこの夜」では、カトリックは「救いの御子は御母の胸に」と歌うのに対し、プロテスタントでは「救いの御子は馬槽の中に」と歌います。
もう一つ大きな違いは「離婚」についての考えかたです。カトリックでは、互いに自由意志の元に結婚した場合には離婚は認められません。そのため、カトリック教徒が離婚をした場合、厄介者の意味である「黒い羊」とみなされます。
カトリック教会の成り立ちとは?
カトリック教会の成り立ちは、イエス・キリストの誕生から始まります。2000年ほど前、いまのイスラエルのあたりのナザレという地にイエス・いリストは誕生しました。成長したイエスは宣教活動をおこない、神の愛を説いていくにつれてペテロやヤコブ・ヨハネ兄弟、マタイ、そしてユダなどの弟子が増えていきました。
イエスは大衆を扇動した罪で十字架にかかり死刑となりますが、三日後に復活したイエスの姿をみた弟子たちは、神の愛、イエスの生涯、死と復活について伝え始めます。弟子たちが伝道していく中で教会が形成され、信仰の拠点となっていきました。
その後、イエスの教えは地中海地方に広がり、392年にローマ帝国の国教となります。この頃五本山とされる5つの教会が建てられました。その中でも十二使徒の一人ペテロが建てたとされるローマ教会(バチカン市国の聖ピエトロ教会)はカトリック教会の中心となり、ローマ教会の司教は「ペテロの後継者」という特別の地位が与えられました。
ローマ教皇とはどんな人?
ローマ教皇とは、カトリック教会の最高位聖職者の称号で、世界に10億人いるカトリック教会の信徒を率いる精神的指導者です。カトリックの総本山であるバチカン市国に居住し、宗教的な地位だけでなく、世界最小の独立国であるバチカン市国の国家元首としての地位も担っています。
カトリック教会では、イエス・キリストが使徒の1人であるペトロに、天国へ行くための鍵を授けたといわれていることから、ペトロを初代教皇と考えます。以降、ローマ教皇は「コンクラーベ」という独自の選挙制度で選ばれ、コンクラーベでは、枢機卿が礼拝堂に籠って繰り返し投票をおこない、全体の3分の2以上の得票によって決定するまでおこなわれます。
カトリック教会においてローマ教皇は、「ペテロの後継者」であり「地上におけるイエスの代理人」とされています。ローマ教皇は、聖職者としての仕事以外にも、世界各国を訪問して各国のリーダーと会談をするなど、世界平和の実現のため尽力しています。
ローマカトリック教会の考え方・教えとは?
隣人への愛
カトリックでは、「隣人を自分のように愛しなさい」と説いています。ここでいう「自分を愛する」とは、エゴやナルシシズムのような「間違った自己愛」ではなく、自己を否定せず、平和と平安を望み、自分の信念に生きるような「正しく自分を愛する」ことをいいます。正しく自分を愛してこそ、隣人を愛することができると考えます。
ここで言う「隣人」とは、自分の大切な人達だけでなく、見ず知らずの人、さらにはお互いに敵対する人をも含めます。つまり「隣人」とは、自分以外の全ての人を指し、誰か困っている人がいたら、自ら進んで隣人となって助けてあげることが大切だとされています。
罪への意識
カトリックでは、人は生まれながらに罪を背負い、また、日々生きている中で罪を作っていると考えます。そこで、「洗礼の秘跡」で信仰の宣言をすることで原罪を含めそれまでの罪が許され、洗礼後に日々犯した罪に対しては「許しの秘蹟(告解)」と「聖体の秘蹟(聖体拝領)」で罪が許されます。
教会には告解室という告解の儀式をおこなうための部屋があり、ここで神父に直接話を聞いてもらいます。告解は、一般的にはミサの前後に神父様をつかまえて、告解させてもらうことが多いようですが、一年の決まった時期に神父さんが対応する日もあるそうです。
離婚と再婚について
カトリックでは、結婚は生涯をかけて誓い合う神聖なものとされており、お互いの自由意志にもとづいて結婚した場合離婚はできません。カトリックでは、結婚は神の導きで、創造主の御業に協力することであるとされているので、離婚という概念自体がありません。ただし、DV、育児放棄、失踪など万が一の救済措置として「婚姻の無効」があり、教会が認めれば成立します。
カトリックにおいて再婚が認められるのは、死別で子供がいる場合です。特に、子供が小さいケースでは、1人親での子育ては困難であることから再婚が認められることが多いようです。
人工中絶の禁止
カトリックでは、人工中絶は最も重い罪の一つで、重大な悪とします。胎児は自分の意思表示も抵抗もできないまま殺されるので、殺人よりも重い罪とされています。中絶は「最も弱いもののそばに立つ」というキリスト教の基本姿勢に反するものと考えられています。
聖書には、「わたしはあなたを母の胎内に造る前からあなたを知っていた。母の胎から生まれる前にわたしはあなたを聖別し諸国民の預言者として立てた」とあり、受精の瞬間から人の命は尊重され保護されることが絶対で、人権が認められています。また、カトリック教会は、人工中絶が重大な悪であるのは不変であると宣言しています。