1479年:スペイン王国が成立
15世紀後半、イベリア半島には大西洋沿岸のポルトガル王国とフランス国境にあるナバラ王国、地中海沿岸のアラゴン王国、そして北西部からイベリア半島中央部を領有するカスティリャ王国がありました。
1469年、カスティリャ王女のイサベルとアラゴン王子のフェルナンドが結婚しました。1474年にカスティリャ王エンリケ4世が死去するとイサベルが王位を継承します。これに反対し介入したポルトガル軍を撃退し、イサベルは王位を確実なものとしました。
そして1479年にアラゴン王フアン2世が死去したことでフェルナンドがアラゴン王に即位しました。こうしてイサベルとフェルナンドがカスティリャとアラゴンの王となったことで両王国は合同し、スペイン王国が成立します。二人ともカトリックの信者だったのでカトリック両王と呼ばれるようになりました。
1492年:ナスル朝が滅亡、レコンキスタが完成
スペイン王国が成立したころ、ナスル朝は衰退の一途をたどっていました。ジブラルタル海峡の制海権はキリスト教徒側に奪われ、モロッコから援軍を得ることも難しくなります。にもかかわらず、ナスル朝内部では権力闘争が繰り広げられ、衰退に一層の拍車がかかりました。
1491年、スペイン王フェルナンド2世は1万の軍勢を従えてグラナダを包囲します。春から続けられた包囲は冬になっても緩みませんでした。ナスル朝最後の王であるムハンマド11世はスペインに降伏しました。
一度は、スペインに与えられたシエラネバダ山中の所領で過ごしていたムハンマド11世は1492年にモロッコのフェズに亡命します。こうして、ナスル朝は完全に滅亡しレコンキスタは完成しました。
レコンキスタに関連する作品
おすすめ書籍・本・漫画
『スペインレコンキスタ時代の王たち:中世800年の国盗り物語』
およそ800年間にわたったレコンキスタの歴史を一気に俯瞰できる一冊です。とても読みやすい本文で、スペインの歴史に詳しくない読者でも安心して読むことができます。本の中に出てくる系図や地図はとても見やすくて参考になりました。
また、ヨーロッパの王家につきものの王家同士の婚姻や相続による王国の分割などについても知ることができました。ただ、レコンキスタの中心国家であるカスティリャの目線で書かれているので、ポルトガルやアラゴン、ナバラのことを知りたいときには少しボリューム不足かもしれません。
レコンキスタの全体やスペイン王国の成り立ちについて知りたいと考えている人にお勧めの本です。
『レコンキスタ―中世スペインの国土回復運動』
レコンキスタについて年代を追ってまとめた本です。イスラーム教徒によるイベリア半島征服からキリスト教勢力が後ウマイヤ朝、ムラービト朝、ムワッヒド朝と戦う過程、レコンキスタの終結までを一通りの歴史が書かれています。
この本を読むと、イベリア半島を制するためにはジブラルタル海峡を抑えていなければいけないことがよくわかります。政治史中心の本なので、レコンキスタの思想について知りたい人にとっては物足りないかもしれません。
ただ、聞きなれない用語や知らない地名が多数出てくるので初心者が読むのは大変かもしれません。レコンキスタについて詳しく知りたいと考えている人にお勧めします。
おすすめ映画・ドラマ
『エル・シド』
レコンキスタ時代の英雄エル・シドが主人公の映画です。エル・シドは11世紀後半のカスティリャ王国を舞台とした物語で、主人公はエル・シドことロドリーゴ・ディアス・デ・ビハールです。
カスティリャ王国の貴族であるロドリーゴはイベリア半島に攻め込んできたイスラーム教徒の首長ムータミンとカディアを捕らえ、王に引き渡すことなく逃がしてしまいます。このことに恩を感じたムータミンはロドリーゴに「エル・シド」の称号を贈りました。
しかし、異教徒を逃がしたことで裏切り者とされ公衆の面前でロドリーゴはゴルマス伯爵に罵倒されてしまいました。公の場での口論で両者とも譲らず、決闘となりました。決闘の結果はロドリーゴの勝利。死ぬ間際にゴルマス伯爵は娘のシメンに敵を討つよう遺言しました。
実は、シメンはロドリーゴと愛し合った仲だったのですが、父の死で彼女はロドリーゴを激しく憎むようになります。しかし、ロドリーゴは彼女の憎悪を知りつつも彼女と結婚しました。その後、ロドリーゴはイスラーム教徒との戦いに身を投じます。
勇ましく戦うロドリーゴは敵味方から称賛されますが、最終的にイスラーム教徒との戦いで戦死してしまいました。しかし、彼は自らの遺体を馬上に据えさせ死しても味方を鼓舞するよう遺言します。その気迫で味方は奮い立ちカスティリャ王国が勝利します。かくして、ロドリーゴは英雄エル・シドとして歴史に名を残しました。
スペインの中でも人気のある英雄エル・シドの生涯を扱った映画です。興味がある方は是非ご覧ください。
『イサベル~波乱のスペイン女王~』
このドラマはレコンキスタ終盤に登場し、レコンキスタを終わらせたスペイン女王イサベルの生涯を描いた作品です。父であるフアン2世の死により王家から追放されながらも、再びカスティリャ王家に返り咲き、後継者争いに勝利してカスティリャ女王となりました。
その後、アラゴン王国のフェルナンドと結婚しレコンキスタの完成やコロンブスの探検航海などで重要な役割を果たします。そのイサベルの生涯を描いた長編テレビドラマです。
主人公イサベルを演じたのは若手女優のミシェル・ジェネールです。この作品のヒットをきっかけにスペインの国民的女優とみなされるようになりました。彼女が演じた自分の意志で未来を切り開いたイサベルから目が離せなくなるでしょう。
レコンキスタに関するまとめ
いかがでしたか?
今回はレコンキスタについてまとめました。日本ではなじみが薄いレコンキスタですが、キリスト教世界ではとても重要な出来事としてとらえられています。およそ800年にわたって続いたキリスト教徒とイスラーム教徒の戦いはカトリック両王によって終止符が打たれました。
レコンキスタの終盤には大航海時代が始まり、ヨーロッパが世界に飛躍するきっかけをポルトガルとスペインが作り出します。常にイスラーム勢力と戦いフロンティアを切り開いた二国だからこそ、新しい時代の幕開けを飾ることができたのかもしれません。
この記事を読んでレコンキスタについての概要やレコンキスタの特徴、大航海時代との関連などについて少しでも「そうだったのか」と思っていただける時間を提供できたら幸いです。
長時間をこの記事にお付き合いいただき、誠にありがとうございました。