堀辰雄ってどんな人?功績・年表まとめ【風立ちぬなど代表作も紹介】

1938年 – 34歳「加藤多恵と結婚」

加藤多恵との結婚

室生犀星の媒酌によって結婚

1938年、堀辰雄は前年に「油屋」で出会った加藤多恵と結婚しました。実は、この結婚には亡くなった婚約者・綾子が大きく関係しています。綾子は亡くなる前に、自分の父に「辰っちゃんは本当にいい人だから、どうか奥さんを見つけてあげてね」と言い残し、その遺言どおり綾子の父は辰雄と多恵の仲をとりもったのです。

誰の気持ちを考えても切なくなってしまうエピソードですが、辰雄が人に好かれる優しい人物であったことがよくわかります。辰雄と多恵は室生犀星夫妻の媒酌によって4月17日に結婚式を挙げました。

軽井沢を中心に各地を転々とする

亡くなった婚約者・綾子の家族とも堀夫妻は親しかった

この頃の堀辰雄は活動的で、東京・杉並の家を中心に軽井沢や信濃追分、鎌倉などを転々としています。血を吐いたり入院したりはするのですが、元気なときは友人らとハイキングなども楽しんでいます。辰雄の作品に現れる自然の描写の豊かさは彼自身が山や森の中にいることを好んだからなんだな、と思わされます。

また、友人や後輩が訪ねてくることも多かったようです。第一高等学校時代からの友人である神西清や小林秀雄をはじめ、三好達治や立原道造などとも親しくしていました。民俗学者・折口信夫(釈迢空)の思想に惹かれ、講義を聞くこともありました。

1944年 – 40歳「体調を崩し始める」

1951年にはほぼ寝たきりの生活となった

疎開の準備中に喀血

第二次世界大戦の最中である1944年、堀夫妻も疎開の必要を感じて信濃追分に家を見つけたのですが、引っ越しの準備をしているときに辰雄は血を吐いてしまい、2か月の絶対安静を命じられます。このころからだんだんと寝たきりでいることが多くなっていきました。

辰雄は病床でも本を読み、書きたいもののことを考えていました。読むのはやはりフランス文学が多く、マラルメやヴァレリー、リルケの詩を読んでいたようです。その一方で日本の古典『伊勢物語』を作品化したいという気持ちがあり、いろいろな人への手紙にその計画を書いていますがこの仕事が完成することはありませんでした。

1953年 – 49歳「信濃追分の自宅で亡くなる」

晩年住んでいた家は堀辰雄文学記念館にある

結核で死去

1953年5月28日、堀辰雄は信濃追分の自宅で亡くなりました。6月3日には東京・増上寺で告別式が執り行われ、川端康成が葬儀委員長を務めました。

亡くなった後、川端康成や神西清ら5人を編集委員として、新潮社から堀辰雄全集が出版されました。また、妻の多恵は「堀多恵子」という筆名で辰雄に関する随筆を多く残しています。

堀辰雄の関連作品

おすすめ書籍・本・漫画

羽ばたき Ein Marchen

堀辰雄の少年文学『羽ばたき Ein Marchen』を、漫画家の鳩山郁子が美しく耽美的にコミカライズしました。文筆家・長山靖生による、堀辰雄の生きた時代とこの作品の世界観の解説も収録されていて、『羽ばたき Ein Marchen』という作品をいろいろな角度から楽しめる1冊になっています。

堀辰雄の周辺

堀辰雄の妻・多恵子が1994年10月から1年間、産経新聞に連載したエッセイです。堀辰雄と友人らのエピソードが妻の目から優しい筆致で描かれています。辰雄がどんなに周囲に愛された心の優しい人物であったかがよく伝わってくる1冊です。

おすすめの動画

風立ちぬの原作小説との違いを解説。哲学的な意味やラストも考察

哲学系Youtuber・ネオ高等遊民さんが、堀辰雄の『風立ちぬ』とスタジオジブリの『風立ちぬ』を比較しながら解説している動画です。ネオ高等遊民さんはどちらの作品も大好きらしく、愛情と熱意に満ちた解説が聞けます。後半はかなり高度な哲学の話になりますが、ぜひ聞いてみてください。

おすすめの映画

風立ちぬ(2013年)

スタジオジブリ作品『風立ちぬ』は、堀辰雄の『風立ちぬ』をそのままアニメ化したものではありません。けれども、堀辰雄の作品世界や生涯が深く理解されているうえ、零戦設計者・堀越二郎の生涯を織り込むことによって、彼らの生きた時代がどのような時代だったかを表現しています。

この映画を観た後に堀辰雄の作品を読んでみると、2つの作品の世界観が混ざりあってより深い読書体験・映画体験が得られるはずです。

風立ちぬ(1976年)

山口百恵と三浦友和が主演を務めた実写映画です。『風立ちぬ』という小説は1954年にも映画化されているのですが、現在比較的手に入りやすいのは1976年版でしょう。時代背景を戦時下に移し、さらに婚約者となる前の段階のストーリーをオリジナルでプラスするなど、小説を知らなくても楽しめる内容となっています。

関連外部リンク

堀辰雄についてのまとめ

小説家・堀辰雄の生涯や功績をご紹介してきました。

辰雄の生涯には、辛い「死別」が何度もありました。それは多かれ少なかれ誰しもがそうなのですが、辰雄はその辛さ、悲しみをあるときは『聖家族』として、またあるときは『風立ちぬ』という作品として昇華しました。誰でもできることではないと思います。

この記事を読んでくれたあなたが、堀辰雄の作品に触れてくれるととても嬉しいです。

1 2 3 4

コメントを残す