彼らの命綱、ヴァイキング船
ヴァイキング船はその名の通り、ヴァイキングたちが活用していた独自の形態の船です。当時のヨーロッパ世界における最高峰の技術を駆使したそれらは、次第に軍用船としてヨーロッパ各地に技術として広まっていくこととなりました。
このトピックでは、そんなヴァイキング船について解説していきたいと思います。
ヴァイキング船の特徴
ヴァイキングが起こったスカンジナビア半島は、基本的に港を使っての貿易が盛んにおこなわれている地域でした。そのために航海技術が非常に発達し、ヴァイキングにとっての船は、文字通りに「命綱」とも呼ぶべき存在だったようです。
ヴァイキング船のほとんどは、クリンカー工法と呼ばれる造船技術によって造られ、帆による素早い航海とオールによる緻密な航行の使い分けが可能な、非常に理に適った構造となっていました。
また、喫水が浅いという特徴があったため、水深1メートル程度の河川にも侵入出来たほか、オーク材を加工した頑丈かつ軽量な船だったことで、陸地へと引っ張り上げて引きずって移動することもできたと言われています。それゆえの神出鬼没さが、ヨーロッパ各国にヴァイキングたちが恐れられた理由の一つでもありました。
船の種類を簡単に解説
ヴァイキング船には様々な種類があり、彼らは用途に合わせてそれらを使い分けていたと記録されています。
このトピックでは、そんな彼らが用いた船の種類を簡単に解説していきましょう。
初期型の船・フェーリング
ヴァイキングたちの船の原型となった小型の船で、二対のオールを持ち喫水の浅い、現代で言うところのカヌーやカヤックのような小型船です。スカンジナビア半島の北西に見られる伝統的な船の形であり、四本のオールで船を操作する形式をとっていました。
あまり頑丈ではなく積み荷もさほど乗せられない事から、ヴァイキングたちの外征に使われた記録はほとんど残っていませんが、近隣の地方との交易などに活用されたと言われています。
主に輸送船・クナール
ヴァイキング船の中では喫水が深めで面積が広く、重量がある帆船です。戦闘向けの船ではなく、主に人員や家畜、商品の輸送などに使われ、赤毛のエイリークらによるグリーンランドやアイスランドへの入植の際にも、この船が使われたと言われています。
現代においてはバミューダ鋪装の竜骨が長いヨットの通称として知られ、これを用いた世界大会が毎年開催されているなど、現代文化にも根付いている形式のヴァイキング船です。
万能のヴァイキング船・ロングシップ
ヴァイキングの用いた船として、最もイメージされやすいのがこの形式の船でしょう。喫水が浅く、オーク材の加工によって軽いのに頑丈な構造。帆船とオール船の形式を使い分けて、どんな状況にも対応できるタイプの船として、遠洋航海や兵力としての人員輸送など、もっぱらスカンジナビア半島の軍用船として活用されました。
また、軍用船としてはもとより輸送船としても活用できる万能性から、長らくこのロングシップ形式の船に並ぶ造船技術は現れることがなく、長らくスカンジナビア半島の海軍勢力の強さを支える大戦力としてあり続けたのが、このロングシップです。
そして最大の特徴は、船首部分にあたる独特の屈曲した構造。この独自の特徴から、ヴァイキングと敵対していたイングランドやフランスの人々からは「ドラゴン船」と恐れられ、ヴァイキングの蛮勇を語る当時の記録には、しばしばドラゴンになぞらえた記述が存在しているほどです。
汎用型の船・カーヴ
ロングシップの中では小型で、どちらかと言えばクナールに近い形状のものはカーヴと呼ばれていました。カーヴは兵員の輸送だけでなく貨物の輸送などにも多く使われ、小型さから沿岸の航行などにも活用されたという記録が残っています。
また、現在ノルウェーのヴァイキング船博物館に残っているヴァイキング船は、全てこのカーヴと呼ばれるタイプの船になっています。