ヴァイキングとは?存在した時代や歴史、文化、船の種類まで解説

ヴァイキングにとっての船とは?

船を副葬品として死者を送り出すほど、ヴァイキングにとって船は大切な財産だった。

ヴァイキングにとって、船は文字通りの命綱かつ富の象徴でした。デンマークの初期の硬貨に船が描かれていることも、その事実を象徴しています。

また、ヴァイキングには「死んだ首長を船に埋める」という船葬墓(せんそうぼ)の文化が存在し、彼らの中で船は、死者を死後の世界まで連れていくものだと信じられていました。他にも、死者への副葬品として度々船が用いられた記録があることからも、ヴァイキングにとっての船の価値がどれだけ高いものだったのかをご理解いただけるかと思います。

現在も残るヴァイキング船

ノルウェーのヴァイキング船博物館では、発見されたヴァイキング船を見ることができる。

船葬墓の文化があったことから、ヴァイキング船は時代を通して海底から発見されることがままあります。しかし木造船だったことから、完全な形で見つかることはほとんど無く、原型がわかる状態で見つかっているものはごく少数しかありません。

そのごく少数のもののほとんどはノルウェーのヴァイキング船博物館に展示されていますので、興味がある方はぜひ訪れて、間近でヴァイキング船をご覧になっていただければと思います。

著名なヴァイキングたち

略奪者も発見者も混在しているのが、ヴァイキングという存在の大きな特徴だと言える。

歴史上に置いて、様々な功罪を遺したヴァイキングという存在。このトピックでは、その中でも有名な人物を三人ほど紹介させていただきます。

赤毛のエイリーク(エイリーク・ソルヴァルズソン)

赤毛のエイリークは、父子二代に渡ってヨーロッパ世界から別の場所に入植を果たした人物として有名。

ヴァイキングが遺した功績の中でもとりわけ大きい、グリーンランドの発見を成し遂げた人物です。息子であるレイフ・エリクソンも北アメリカ方面に渡ってヴィンランドの発見を成し遂げているため、彼ら父子は文字通りに「世界を広げた人物」だとも言えるでしょう。

彼の人生は『赤毛のエイリークのサガ』『グリーンランド人のサガ』の題材としても知られ、伝説混じりではありますが、その活躍は現在も広く知られています。

しかし一方で、北極海に乗り出した理由が、殺人による故郷からの追放だったことから、粗暴な人物だったことも記録からは読み取れます。そのような功罪入り混じる部分からすると、ある意味でヴァイキングを象徴する人物だとも言えそうです。

ラグナル・ロズブローク

残虐性とその最期が広く語られるラグナルだが、実在を疑問視する声も非常に根強い。

9世紀ごろにフランスとイギリスを荒らしまわったと言われる、伝説のヴァイキングです。非常に残虐な人物だったという評価が残る一方で、彼に関する記録は矛盾が多く、その実在性については現在も議論が続いている状況となっています。

残虐な侵略を繰り返した末に、ノーザンブリアの王であるエラに捕らえられ、毒蛇で満たされた孔に投げ込まれて処刑されたと伝わっていますが、史実的な証拠はほとんど無く、あくまでも「多くの人物をモデルにした集合体」として考えることが、現在では通説となっているようです。

また、ヴァイキングをテーマにした海外ドラマ『ヴァイキング ~海の覇者たち~』としても描かれているため、現代において最も有名なヴァイキングの一人だとも言えるでしょう。

エイリーク・ハラルドソン(エイリーク・ブラッドアクス)

後世に描かれたエイリークとその妻であるグンヒルド。残虐な生涯の一方、捜索の題材としての人気は高い。

ヴァイキングであり、一時期ノルウェー王としても活動した人物です。しかし王としての政治手腕は非常に乏しく、その治世は不人気だったようで、在位中に起こした虐殺から「血斧王」の通称で語られることがあります。

王となるも虐殺を引き起こしたあげく、異母弟によって国を追われ、最終的にはヴァイキングとしての略奪中に戦死するというその最期から、ステレオタイプな「略奪者」としてのヴァイキングとしては非常にイメージしやすい人物が、このエイリーク・ブラッドアクスだと言えるでしょう。

ただし妻であるグンヒルドは、彼の死を悼んで『エイリークルの言葉』と呼ばれるスカルド詩を作らせており、少なくとも妻から愛される人物ではあったようです。

『Fate/Grand Order』に描かれるエイリーク・ブラッドアクス。凶暴ながらどこか憎めないキャラクターとして描かれる。

また、ゲーム『Fate/Grand Order』でもプレイアブルキャラクターとして登場。ヴァイキングらしい凶暴な性格ながら、彼を深く愛する妻に振り回される部分も大きい、どこか憎めないキャラ造形をしているキャラクターです。

そのような部分から考えるに、主に若者世代にとって「ヴァイキング」と言えば一番イメージしやすいのは彼なのかもしれません。

現代に残るヴァイキング像

ヴァイキング(映画)

ステレオタイプなヴァイキングのイメージを決定づけた作品。後の多くの創作に影響を与えた。

1958年にアメリカで制作された映画です。いわゆるステレオタイプなヴァイキングのイメージを決定づけた作品であり、史実的でこそありませんがエンタメ作品として完成した作品だと言えるでしょう。

ちなみに、この作品の中で描かれる食事シーンが、食事における食べ放題――バイキングの語源となったことも有名です。ちなみに海外でその形式の食事を「バイキング」と言っても通じませんので、旅行の際はご注意ください(海外では「ビュッフェ」といいます)。

ヴァイキング ~海の覇者たち~

人物のトピックでも書かせていただいたラグナル・ロズブロークを主人公とした、ヒストリーチャンネル制作の海外ドラマ作品です。2020年現在、シーズン6の前半までが放送されており、その後半をもって最終回を迎える予定となっています。

比較的史実のヴァイキングに即した内容を、巧みにラグナル・ロズブロークの伝説になぞらえていくストーリーは、非常にグロテスクで恐ろしいながら、その映像美や訳者人の熱演も相まって見ごたえがあり、ハマる人にはどっぷりはまる作品となっています。ぜひ一度ご覧下さい。

ヴィンランド・サガ

『月刊アフタヌーン』で連載中の、幸村誠氏による漫画作品です。2019年にはNHKでアニメが放送されたこともあり、一気に作品の知名度だけでなく、ヴァイキングという歴史上の存在に対する知名度が高まりました。

基本的にはヴィンランドへの入植に関する史実のエピソードに則しつつも、人物などはほぼオリジナルで描かれ、だからこそ史実を知っていても油断ができないヒリつく展開を楽しむことができる漫画作品です。

史実とエンタメのバランスが非常に良い作品ですので、ヴァイキングについて深く知りたい方には、まずこの作品をおすすめいたします。

ヴァイキングに関するまとめ

「ヨーロッパ世界を荒らしまわった海賊」というイメージが強いヴァイキング。しかし、史実においての彼らはそのような罪の側面だけでなく、ヨーロッパ世界に対して様々な発展や技術をもたらした功績も持ち合わせていることも、ご理解いただけたかと思います。

歴史において、多くの資料を漁るのは非常に大事なもの。皆さまも歴史を一元的に見るのではなく、様々な立場、行動、状況から多面的に見て、それから多くの事柄を論じていただければと思います。

それでは、この記事にお付き合いいただきまして誠にありがとうございました。この記事が皆様にとって、何かの学びとなっていれば光栄に思います。

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