大東亜共栄圏とは?なぜ結ばれたのか?目的や海外の反応もわかりやすく解説

大東亜共栄圏に対する評価

極東軍事裁判の様子。大東亜共栄圏に関わった人物はことごとく裁かれた。

大東亜共栄圏は、結局宗主国が欧米から日本に変わったに過ぎない植民地政策がその実態でした。この部分だけ切り取れば、「日本の反省すべき悪い政策」と思われますが、実は大東亜共栄圏に関する評価は何も悪いものばかりではないのです。ただ、侵略をしたという事実だけがクローズアップされているため、あまりいい印象が普通にはないのも仕方がないところではあります。

この章では、海外・日本の歴史学的な評価と最近の大東亜共栄圏に関するネット上の評価を併せて紹介します。

海外の評価は悪くはなかった

大東亜共栄圏を評価するアーノルド・トインビー。西洋人の敗北を初めて文字に起こした。

海外からの大東亜共栄圏に対する評価は決して悪いものばかりではありません。実際に日本の従属扱いを受けた国であっても、この政策について評価する・しないは別れています。

その理由についてはさまざまありますが、欧米諸国の従属下よりも日本のそれの時代のほうが権利を認められていたというところにあります。先にお話した教育はもちろんのこと、現地人の高官への登用や華人などの少数派の権限制限の解除など多岐にわたっているのです。そのため、アジア諸国からは「欧米諸国の時よりはマシ」という声も上がっています。

欧米諸国では、植民地政策の新たな形に過ぎないという批判的な意見が飛び交う中、肯定的な意見もあります。

第二次世界大戦において、日本人は日本のためというよりも、むしろ戦争によって利益を得た国々のために、偉大なる歴史を残したといわねばならない。その国々とは、日本の掲げた短命な理想であった大東亜共栄圏に含まれていた国々である。日本人が歴史上に残した業績の意義は、西洋人以外の人類の面前において、アジアとアフリカを支配してきた西洋人が、過去二百年の間に考えられていたような、不敗の半神でないことを明らかに示した点にある。

これに関しては見方の問題でもあるので一概に是非を問うことは難しいでしょう。

日本国内は賛否両論

林房雄。大東亜戦争肯定論を主張し有名になった。

日本国内では賛否両論どちらも激しく言われている大東亜共栄圏。その中心には、共栄圏思想そのものよりも大東亜戦争の意義が絡んできています。

戦後しばらくして刊行された『中央公論』に「大東亜戦争肯定論」を発表した林房雄の理論は各知識人に影響を与え、たちまち文壇で論争の種となったのです。もちろんこの発表に対し、井上清、吉田満などの知識人が反発。同じ雑誌で「大東亜戦争肯定論批判」という文を寄稿するなどしていました。また、竹内好は特に対中国戦争にフォーカスをして、これらの戦争はすべて侵略戦争に過ぎないという見解を示しています。

林の理論に反対した竹内好。大東亜戦争肯定論批判の寄稿にも文章を寄せた。

ただ、林とそれ以外の人間の発想の違いとして、史料としての研究結果なのか、はたまた実感をもとにしているのかがあり、比較は難しいところとなっています。難しい話ですが、文献資料に頼るのみの研究解釈と、自身が実際にその時代を目の当たりにしてきた人の経験談とはやや話がずれて来るのは事実。そういった違いが日本国内における賛否両論の火種となっているのです。

大東亜共栄圏を言い出すのは「ネトウヨ」?

ネトウヨを卒業したことで有名な古谷経衡氏。その著書は多数ある。

さて、大東亜共栄圏を検索エンジンで調べよう調べようと思うと、検索候補に「ネトウヨ」というものが上がってきます。「ネトウヨ」とは「ネット右翼」の略で、明確な定義はないものの辻大介によると以下のようにされています。

保守的で排外主義的な書き込みや情報発信を行うユーザーのことを指すといい、排外主義的な傾向が薄いものを「ネット保守」と呼んで「ネット右翼」と区別する向きもある。

大東亜共栄圏の場合、東南アジアの解放につながった実績であると信じて疑わない思想を持っているのがネトウヨの特徴です。このほかにも差別的、排外的な思想をネット上で展開するのが彼らの特徴で、いくらかの研究が進んでいます。

結論から言えば大東亜共栄圏を取り上げる人全員がネトウヨとは限りません。それに付随して賞賛の言葉や人種差別的な言葉を述べるのであれば話は別です。思想信条は自由です。しかしながらあまりに過激な差別表現や用いる言葉の意味をよく知らないまま使うことで思わぬ炎上に繋がることがあります。慎重になるべきでしょう。

大東亜共栄圏は復活する?

大東亜共栄圏をもとにした漫画の表紙。内容はまったく難しくなく、むしろギャグ要素しかない。

大東亜共栄圏は過去の話。これは間違いないことなのですが、実は少し前に「大東亜共栄圏が復活するかも」という噂がネット上で出てきたことがあります。戦争もしていないのにどうやって復活するのか、なぜそんな噂が出てきたのでしょうか。

この話は最近出てきたものではなく、20世紀の終わりごろから何かにつけて出てきたものです。当初出てきた理由は定かではありませんが、ひとつのきっかけとして安倍晋三氏が首相となり、日本会議という組織との関りを指摘されたあたりから出てきたようです。日本会議は保守主義・ナショナリストの集まりとして1997年に発足。この組織に参加している安倍氏を批判する上で無理矢理関連付けられたのではないかと思われます。

確かなことはわかりませんが、あくまで噂に過ぎないため大東亜共栄圏の復活はないと思っていいでしょう。

大東亜共栄圏に関するまとめ

大東亜共栄圏について、もとになる思想から動き、各方面の評価やネット上の噂まで取り上げました。この出来事自体はすでに古いものではありますが、時折人によって話題に取り上げるような言葉でもあります。詳しく意味を知っておいてほしいのはもちろん、学者の間でも評価する者・しない者に分かれることを覚えておきましょう。

また、大東亜共栄圏に限らず、第二次世界大戦中の言葉はたまに使われることも。その時に、周りの使い方に振り回されずしっかりとした知識を持っておきましょう。この記事がその一助になれば幸いです。

では、長いあいだお付き合いいただきありがとうございました。

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6 COMMENTS

匿名

「要するに、日本と当該地域による共存共栄がアジアの秩序形成には欠かせない、というのです。しかし、それは名ばかりのものでその実態は植民地支配そのものでした。事実、独立を認めた国々には日本が主導する近代化と銘打たれた政策が次々と行われました。

教育面においては皇民教育が強制され、各地には神社などが建てられるなど様相が一変。また、政治においても、公正な選挙で選ばれた代表者ではなく、日本政府が指名した人間が政治家として活動するなど。あくまで保護と支援を名目に内政干渉を続けていた日本の政策が植民地支配そのもののであったことから、一部のアジア諸国の不満は徐々に募っていったのです。」とありますが、この内容はどのような文献からのものなのか教えて頂けますか?

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匿名

『大東亜共栄圏を言い出すのは「ネトウヨ」?』のところの最後の1行の「身長」は慎重の間違えではないでしょうか

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