モンロー主義とは?背景や使い方、孤立主義の違いについて簡単に解説

第二次世界大戦

第二次世界大戦

こうして迎えた第二次世界大戦。アメリカはモンロー主義を貫き、戦争に加わりませんでした。しかし、ドイツと同盟を結んでいた日本がハワイの真珠湾に攻撃を仕掛けてくると、アメリカは第二次世界大戦へと参加せざるを得なくなります。

ここまででわかる通り、アメリカは、ヨーロッパはもちろん世界の動きに対して無関心でした。戦争が終われば再びモンロー主義を貫いていたかもしれません。ところが、第二次世界大戦が終わると事情が変わります。ソ連を中心として社会主義が世界に広まったのです。

通常であれば、資本主義を掲げるヨーロッパ諸国がこれに対立するのですが、第二次世界大戦の戦場となったヨーロッパは疲弊しており、社会主義を抑える力など残っていません。このままでは、資本主義を掲げるアメリカは飲み込まれてしまうかもしれないという危機感がありました。

結果、ソ連に対抗すべく、モンロー主義を破棄してアメリカは世界中に軍事力を展開したのです。今では世界の警察官と呼ばれ、世界中に影響力を持つアメリカ。今となっては当たり前のように思える外交姿勢ですが、実は現状こそがアメリカにとって例外なのです。

モンロー主義が提唱されて以来、アメリカは一国主義が当たり前の国だったと言えるでしょう。

モンロー主義の現在

アメリカによる中南米への介入姿勢

モンロー主義はアメリカへの批判の言葉として使われることもある

現在、モンロー主義はアメリカの孤立主義の代名詞として使われています。また、アメリカの中南米への介入主義的な姿勢に対しても用いられることがあります。

2019年、政情が不安定になっていたベネズエラ(南大陸北部の国)の情勢をめぐって国連が緊急会合を開きました。会合のさい、米国はマドゥロ大統領の独裁に反発しているグアイド国会議長をとりあえずの大統領とするよう呼びかけました。

このとき、マドゥロ大統領を支持していたロシアが「モンロー主義の再来だ」と批判したのです。中南米に属するベネズエラへ介入することは、第二次世界大戦以前にアメリカが掲げていたモンロー主義そのものだったからでしょう。

このように現代では中南米へ干渉するアメリカを批判する言葉として用いられることがあります。

アメリカのモンロー主義は復活した?

アメリカ第一主義を掲げたドナルド・トランプ大統領

今やモンロー主義を破棄し、世界の警察として必要とあらば他国へ介入するアメリカですが、2013年ごろから再び、モンロー主義に戻っているのではないかという指摘が出始めました。

2013年、シリア軍が国連で禁止されている化学兵器を使用しているのではないかという疑惑が出ます。それを受けて当時、アメリカの大統領だったオバマはシリア内戦への軍事介入を示しました。

しかし、共和党の議員の多数が反対します。オバマ大統領も内心は軍事介入に消極的で、結局アメリカ軍による介入は見合わせとなりました。

このオバマ大統領の決断は日本含め、軍事同盟を結んでいた国の危機感をあおりました。同盟国であったイスラエルはアメリカを頼りにしない姿勢を打ち出し、日本も「米国が間髪入れずに反撃する前提が崩れるなら抑止力低下で深刻」と民主党議員が述べました。

アメリカの孤立主義が復活しアメリカ軍が日本からいなくなってしまった場合、やはり防衛面で大いに不安があります。核兵器を持たない日本では、中国やロシアといった核保有国の脅威に対して何もできないのです。

こういった事情から、日本では今後の防衛政策について議論されています。2016年にドナルド・トランプが大統領になってからはモンロー主義の傾向が広まり、日本政府はアメリカ新政権との人脈構築を行って、日米同盟維持に奮闘しました。

日本で使われているモンロー主義

大阪

大阪道頓堀

ここまでアメリカを取り上げてきましたが、実は今日の日本でもモンロー主義という言葉が使われています。大阪では市営モンロー主義という言葉があります。

市営モンロー主義とは、中遠距離の交通は国鉄が、近距離の都市間の交通は市がそれぞれ担当するという役割分担を徹底させたものです。国営と市営の不干渉が根底にあるため、モンロー主義という言葉が使われたのでしょう。

大阪は戦前に、市内の交通を一般の会社に任せず、市民の利益が最大となるように市が行うという都市計画の基本方針を掲げました。大阪の市営モンロー主義は1903年から2011年までの108年間と最近まで続けられていました。

しかし、現在では資金不足により一般企業の乗り入れを認めており、徐々に緩和されています。

名古屋

名古屋

大阪では交通に対してモンロー主義という言葉が使われました。対して名古屋では経済に対してモンロー主義という言葉が使われています。

廃藩置県が行われる前、名古屋は織田信長で有名な尾張の一部でした。尾張は長い間毛織物の産地として有名です。毛織物の生産は1人で行うことが多く、自然と個人主義になっている人が増えたようです。他所からの影響を受けない県民性は、独自性が生まれやすい風土となりました。

またもともと手工業が栄えていたためか、製造業の割合が全国的に高い水準にあります。それに伴い県内総生産も高く、東京、大阪についで全国3位です。

名古屋には、「世界のものづくりを変えた」と言われた生産方式で有名な自動車メーカーのトヨタがあります。トヨタで生まれた独自の生産方式は、名古屋の風土が影響しているのかもしれませんね。

十勝

十勝

名古屋と同じく、十勝も独自性のある地域です。そのため、十勝モンロー主義という言葉が使われます。

十勝は山に囲まれた都市で、陸の孤島です。他の都市へ行くには山を越えなければならなかったため、自然と十勝だけで回る経済が育まれました。土地の開発は地元企業が主導し、発展してきたため十勝の人々は自分たちの街に誇りを持っています。

十勝モンロー主義とは、地域一帯で外部からの干渉を受けずに自立してやっていこうという十勝の姿勢を示す言葉なのです。

モンロー主義に関するまとめ

モンロー主義についてご紹介しましたが、いかがでしたか?最後に簡単にまとめます。

  • モンロー主義はアメリカの外交政策の基本方針
  • モンロー教書の内容は、アメリカとヨーロッパの相互不干渉
  • モンロー教書はロシアの南下政策やヨーロッパを牽制するために発表された

アメリカはもともと一国主義の傾向が強い国、とわかりました。アメリカの軍事力に守られているわたしたち日本人からすると、これからも日本を守ってくれるのだろうかという不安がありますね。北朝鮮や中国のことを考えると、日本の防衛策について考え直す時がきているのかもしれません。

とはいえ、アメリカは大統領によってスタンスが変わる国です。国際協調を視野に入れる大統領候補もいるので、必ずしもアメリカがモンロー主義に戻るとは言えないでしょう。どちらにせよ、アメリカの動向には注意しておきたいですね。

長くなりましたが、ここまで読んでいただきありがとうございました!

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