即身仏をわかりやすく解説!特徴や条件、失敗する原因も紹介

即身仏になれず失敗する3つの原因

どこか寂しげな修行僧の浮世絵

一方で即身仏に失敗してしまった事例もありしました。どのような原因があったのでしょうか。

原因1:修行の段階で逃げ出してしまう

刑に処される僧侶たち

即身仏に失敗する第一の原因は、修行の段階で逃げ出してしまうことでした。

土中入定も簡単ではありませんが、千日行や木食行も容易にはできません。特に山道における千日行は、途中でやめてしまうと自害しなくてはならなかったほか、修行から逃げ出すと刑に処されることもありました。

即身仏になるには何よりも強い意志と信仰心が前提になります。

原因2:遺体が腐敗してしまう

出羽三山の供養墓

人為的に臓器を取り出したエジプトなどのミイラとは異なり、臓器や脳みそもそのまま土中入定した僧侶の肉体は、日本の多湿環境によって腐敗してしまい、失敗に至るケースもありました。

即身仏になる僧侶は、生きている間から体脂肪や肉体部分を削ぎ死後に腐敗しないような体作りの修行を重ねていますが、いざ土中入定し遺体になると腐敗してしまい、ネズミに巣食われている事例もあります。

土中入定した僧侶はとても多かったようですが、ほとんどの遺体が土の中で分解されてしまったことが考えられます。東北地方に現存している即身仏が多いのは、極寒という環境によって遺体が腐敗しなかったからでもあるのです。

原因3:埋められていることを忘れられてしまう

弟子たちに囲まれる僧侶

悲しいことに、土中入定したのを忘れ去られてしまった即身仏の事例もあります。

土中入定した僧侶は、死後3年3ヶ月後に弟子たちに掘り起こされるのを約束しますが、弟子一門がその事実を忘れてしまうケースもありました。

即身仏になるには、土中入定から掘り起こす間に弟子の力を借りる必要不可欠です。ただ修行をするだけではなく、師弟の信頼関係を築き上げる必要があることも理解できます。

即身仏となった僧侶

荘厳な雰囲気漂う高野山奥乃院

ここでは即身仏になったと言われている僧侶について詳しく説明します。

空海(くうかい)

真言宗開祖・空海

空海は真言宗を開き、密教を理論化した平安時代の僧侶です。一度でも、その名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。

密教と即身仏は、非常に密接な関係を持つことから「空海は即身仏になった」と言われています。しかし荼毘に付されたという史料も残っており、実際には即身仏として現存してはいません。

しかし、真言宗の総本山・高野山では「空海はいまだ禅を組んで生きている」と信仰されており、「奥乃院」という一般人が足を踏み入れることのできない神聖な霊廟へ、毎日「生身供(しょうじんぐ)」と呼ばれる食事が捧げられています。

信仰の上で空海は「永遠の瞑想状態」に入っていると信じられていることから、即身仏になったと考えられたのでしょう。

蔵賀(ぞうが)

天台宗の総本山・比叡山延暦寺

蔵賀は平安時代中期に生きた天台宗の僧侶です。実物を見ることはできませんが即身仏になったと言われています。

即身仏の歴史は古く、平安時代にまで遡って行われていたことが蔵賀によって理解できますね。蔵賀は仏教の論書である「摩訶止観」や「法華文句」を講じ、大きな功績を残しました。

弘智法印(こうちほういん)

現存する弘智法印の即身仏

新潟県の西生寺に安置されている弘智法印の即身仏は、日本最古の即身仏です。1363年に3000日にも及ぶ修行を終えた弘智法印は、土中入定し即身仏になりました。

弘智法印は鎌倉時代に農家に生まれ、若くして僧侶になり各地に寺院を建立したほか、高野山でも修行しています。

しっかりと形を残した即身仏は貴重です。霊験あらたかな仏様として現在も祀られています。弘智法印が12年間身にまとっていた法衣を細かくしたものが「御衣守り」というお守りになって販売されていますよ。

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