古事記とは?どんな内容?特徴や作者、成り立ち、日本書紀との違いなどを紹介

古事記の特徴と魅力

笑いあり、エロスあり個性的な神々の物語

夫婦で国造りに励んだイザナキとイザナミ

古事記は、たんなる歴史書にとどまらず、文学作品として楽しめるのが見どころのひとつです。

日本の成り立ちから神々の活躍する物語を、時折歌謡も交えながら、ドラマチックに描いています。

しかも登場する神々のキャラクターがじつに個性的。神々は人智を超えたパワーを発揮する一方で、人間臭い部分も平気でさらけ出しています。

例えば最初はラブラブだったイザナキとイザナミも、最後はダイナミックな夫婦げんか。死後の国を舞台に、逃げる夫イザナキを妻イザナミが追っかけ、最後にイザナミが「あなたの国の人を1000人殺してやる」と言えば、イザナミは「なら1500人の産屋を建てる(1500人産む)」とヒートアップ、こうして夫婦げんかが生と死の起原を作ってしまうのです。

このほか 世界を暗黒にしてしまうスサノオとアマテラスの大げんか、セクシーに踊り出すアメノウズメ、醜い女は妻にしないと追い返すニニギなど濃いエピソードが続々と登場します。

このように神話部分はスケールの大きい物語が次々と展開し、有名な「ヤマタノオロチ」や「因幡の白兎」もあります。

史実も反映?日本の文化や精神のルーツ

出雲大社は国譲りによって建てられた?

古事記は世界の始まりから建国、皇位継承までが描かれた歴史書で、神話から人の歴史へと連続性があるのも特徴です。神話部分では生死および寿命の起源、神楽の起源、昼と夜の始まりなど物語を通して人の営みや文化の起源を語っており、日本の文化や精神の原点を垣間見ることができます。

もちろん神話部分は史実とはいえませんが、まったくの創作ではなく史実を反映しているともいわれています。

たとえば古事記で多くを占める出雲神話。オオクニヌシが天の神であるアマテラスに国を譲る話は、ヤマト朝廷が出雲を平定した歴史を反映したものではないかといわれています。

また、有名なヤマタノオロチ伝説も、ヤマタノオロチを氾濫する島根の斐伊川(ひいがわ)に見立て、それを鎮めた伝承を基にしているのではないかという説があります。

このように神話部分も日本の文化や古い歴史、伝承を投影しているかもしれないと考えれば、古事記を読む楽しみが広がるのではないでしょうか。

神道と言霊信仰

仏教より前に根付いていた神道

古事記は、日本に仏教が根付く前から存在していた「神道」という宗教にも関わりが深い書物です。

神道は山、海、川、風といった自然や自然現象を中心に、森羅万象を神に見立てた「八百万の神」を崇敬する多神教の宗教です。

神道は「雷の威力は恐ろしい」といった、古代日本の人々が自然に畏敬の念を抱いた自然崇拝から始まりました。これは自然発生的に始まったため、キリスト教の聖書のように基本的な教えとなる聖典がありません。そのため古事記や風土記など古い伝承が残された書物を信仰の規範としました。

現存する神社で祀られている祭神の多くは、古事記や日本書紀、風土記などに登場する神様です。

ヒトコトヌシをまつる葛城一言主神社

また、当時文字を持たなかった日本では言葉の威力が強く、言葉に魂が宿る言霊信仰(ことだましんこう)も生まれました。つまり良い言葉を発すれば良いことが、不吉な言葉を発すれば悪いことが起こると考えられたのです。これは今でも結婚式には縁起の悪い言葉を使わないという考えなどに息づいています。

語りの文学から発した古事記もこの言霊信仰が随所にみられ、ヒトコトヌシという言葉の神様も登場します。古事記には敵の名をたずねる場面がありますが、これは先に名を名乗ると言霊を奪われて、服従することを意味したもの。

また、自分の意志を言葉に発する言挙げも、慢心から発した言葉であれば悪いことが起こると考えられました。ヤマトタケルは慢心して神の使いを退治しようと言挙げしたため、神の祟りにあって命を落としています。

おさえておきたいエピソード

神話編

アマテラスの天の岩戸

天の岩戸神話

高天原のアマテラスは、弟のスサノオが大暴れしたことに怒り、洞窟の中に閉じこもってしまいます。太陽の女神であるアマテラスが身を隠したため世界は真っ暗になりました。

そこで困った神々が洞窟のそばで大宴会を催し、飲めや歌えの大騒ぎ。何事かと少し顔をのぞかせたアマテラスを力もちの神が外へ引っ張り出し、世界に光が戻りました。

スサノオのヤマタノオロチ退治

ヤマタノオロチを退治するスサノオ

地上へと追放されたスサノオは出雲の地に降り立ちます。そこで8つの頭と尾を持つ大蛇「ヤマタノオロチ」のいけにえにされてしまう娘の話を聞きます。

スサノオはこの大蛇に酒を飲ませて酔ったところを退治して助けた娘と結婚しました。このヤマタノオロチは氾濫する斐伊川をモデルにしたものともいわれています。

因幡(稲羽)のシロウサギ

白うさぎとオオクニヌシ

あるとき、オオクニヌシは海岸で苦しんでいるシロウサギと出会います。わけを聞くと、隠岐の島からワニザメをだまして対岸に渡ろうとしたことがばれて体の皮をむかれ、さらに通りかかった神々から海水で洗えば良いとだまされて体が痛いというのです。

オオクニヌシが「真水で体を洗ってガマの穂にくるまればいい」と教えると、シロウサギは元気になりました。

伝説編

神武東征

初代天皇の神武天皇

アマテラスの孫、ニニギが地上を治めるため高天原から地上へと降ってきました。その子孫であるイワレビコは日向(宮崎県)から国を治めるのに適した東へと向かい、敵を退治しながら大和へと入ります。

大和では霊気をあてられ気を失うなど危ない目にもあいますが次々と荒ぶる神と豪族を降し、畝火で初代天皇として即位しました。これが神武天皇です。

ヤマトタケル遠征

悲劇の英雄ヤマトタケル

第12代景行天皇の子ヤマトタケルは、父から九州のクマソタケル討伐を命じられます。女装をして敵を油断させて殺害し、出雲では剣を交換してイズモタケルをだまし討ち。東国平定の際には草薙剣で火をはらって火攻めの危機を脱しました。

英雄のヤマトタケルですが、父から嫌われているため遠征ばかり命じるのかと苦悩する姿も描かれています。

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