メリット
性善説の立場に立って得られるメリットは、大きく3つあります。ただしこれがすべてではないので注意してください。
人間関係が円滑になる
性善説を信じることで一番恩恵を受けるのは、間違いなく人間関係です。この世にいる人間すべてが善人であると考えると極端ですが、考え方としてはこのようになります。たとえ誰かが間違いを犯し多としても、「悪い人ではないし」という広い心で相手を受け入れることができるのは、最大のメリットと言えるでしょう。
当然、心が広いと周囲からは受け取られるようになるため、人間関係は円滑になります。関係がもつれることもないので、人付き合いが苦手な人にはいい考え方でしょう。
優しい人だと思われる
人間関係の円滑化と併せて、相手からの評価が「優しい人」になります。相手を「いい人」という立場に立って物事を考えられるため、1度裏切られた程度では相手との関係を切りません。相手のバックグラウンドなどを考えて、その悪い部分を取り除けば善人になると信じているので、より優しい人に映るのは間違いないでしょう。
性善説の考え方の基本である「四端」のひとつでもある優しさ。心から優しい人になりたい人は意識してみてもいいでしょう。
世の中が明るくなる
これは1人の力ではどうにもなりませんが、性善説の考え方を全員が意識すれば世の中は明るくなります。つまらないことで相手を見放したり、嫉妬したりすることはなくなるでしょう。逆に優しい人があふれかえる世の中、決して悪いことではないでしょう。
日々の生活に不満や生き辛さを感じている人は、特に現代社会では少なくありません。性善説に頼ることで世間が、世界が変わると思うと悪い気はしませんね。
デメリット
メリットがあるものには必ずデメリットも存在します。あまりにも性善説を信じすぎるがために起こりうるデメリットについて、ここでは3つご紹介します。
人間不信になる
周りの人間が優しくなったことに甘えて、何度も過ちを犯す人が出てくる可能性が否定できないのが性善説です。性善説のややこしいところは、どんな人間も根本は善であるということ。つまり、今悪であっても、その要素を取り払えば全員がいい人であるという考え方に立っているのです。
言い換えれば、「一時の気の迷い」「魔がさした」という言い訳が成り立ってしまい、何度許しても同じ人間が悪事に手を染める可能性は否めないということです。悪事を繰り返せば、いずれは人間不信に陥ることも否定はできません。
人に利用されやすくなる
「いい人」と「人がいい」は紙一重です。性善説では、困っている人を見捨てない気持ちが備わっていることが前提で思想が成立しています。つまり、相手がいい人でも悪い人でも手を差し伸べるのが性善説の基本なのです。
これを逆手にとって借金の保証人にされた挙句逃げられたり、大きな詐欺に巻き込まれたりする可能性があります。相手をいい人とするのはいいですが、性善説の大きなデメリットであることを念頭においておきましょう。
人に騙されやすくなる
先に紹介した2つから、性善説を信じている人には心許せる仲間ができる一方で、悪い人も近寄ってくることは珍しくないのはお分かりでしょう。人に騙される可能性も、性善説を盲目的に信じている人には大きなデメリットとしてあるのです。
そもそも「今度こそは大丈夫」と信じた相手がまた裏切る、騙してきたというのが善なのかと言われると微妙なところです。相手のことを本気で思うのであれば、ただ許すのではなく本気で叱る、諭すことも大事でしょう。
性善説を詳しく学ぶ書籍
性善説をより具体的に学びたい人におすすめの本を3冊ご紹介します。いずれも性善説単体でかかれたものではありませんが、それに関連した内容やビジネスで役に立つこともかかれています。この機会にぜひ、自身のスキルアップもかねて読んでみてはいかがでしょうか。
[新訳]孟子
性善説やその周辺の思想を学びたいならこの1冊です。孔子の正当な弟子とされる孟子の思想に関して、あらゆる考えを交えた孔子・孟子の思想を学べる良書と言えるでしょう。
ビジネスに効く教養としての中国古典
ビジネスマンのために編纂された東洋思想をまとめた本です。性善説のほかにも、日々のビジネスのエッセンスとなる内容がこの1冊に詰め込まれています。
小林陽太郎―「性善説」の経営者
富士ゼロックスの元相談役最高顧問である小林陽太郎氏が語る、富士ゼロックスにおける性善説カルチャーについて書かれた本です。「あえて性善説でいこう」と舵を切った小林氏の名経営ぶりも分かる、ビジネス書としてもおすすめできる1冊です。
性善説に関するまとめ
性善説について、概要の説明と解釈の違い、性善説をめぐる現代の勘違いや信じることのメリット・デメリットについて説明してきました。性善説はあくまでも思想です。人の本性を決定し、決めつけ押し付けるものではありません。さまざまな勘違いや解釈の違いはありますが、人を善であると定義し、人間関係の円滑化に一役買っていることは言うまでもないでしょう。
盲目的に信じる必要はありませんが、世間や人間関係に閉塞感を感じている人は一度、性善説の立場に立ってみてもいいのではないでしょうか。見える世界が変わるかもしれませんよ。