オウム真理教の現在
アレフ
「アレフ」は2000年2月4日に発足したオウム真理教の後継団体です。1995年の地下鉄サリン事件で大量に信者を失ったオウム真理教は、資金難に陥り破産に至ります。その結果オウムの名前が使用できなくなったため、上祐史浩を代表としたアレフが誕生しました。
一時は上祐の方針により麻原崇拝にストップをかけ、麻原のことも「開祖」「尊師」とせず「旧団体代表」と呼び神格化しない方針を打ち出していました。しかし麻原を崇拝する信者たちが未だに数多く残っていたため、上祐一派と対立することになりました。
アレフは2003年に「アーレフ」に改名したのち、さらに「Aleph」と名前を変え現在でも活動を続けています。
ひかりの輪
信者との対立でアレフから独立した上祐が、2007年5月7日に立ち上げた新たな団体が「ひかりの輪」です。「脱麻原派」を主張しオウム真理教の総括と反省を活動目的として掲げていて、2013年ごろからは仏教哲学や心理学を教える哲学サークルとしての活動が主となっています。
またアレフが応じなかったオウム真理教の賠償問題をひかりの輪が引き受け、被害者に対して賠償金を支払うとオウム被害者支援機構と合意書を交わしました。
しかし公安調査庁はひかりの輪を「オウム真理教上祐派」と呼んでいて、麻原の影響がないように偽装する「麻原隠し」の団体だという認識を示しています。ひかりの輪から観察処分取り消しの訴訟も求められましたが、国は現在も観察処分取り消しを認めていません。
オウム真理教に関する逸話
オウム真理教のアニメがある
オウム真理教はアニメやマンガのファンへの布教活動として、1991年にスタジオを設立しアニメやマンガを制作しています。これは麻原が子供のころからテレビアニメが大好きだったことが大きく影響しています。
オウム制作のアニメ「超越世界」は麻原彰晃を主人公とした物語で、作中で麻原は単なる教団の代表としてだけではなく超能力を持つ救世主として描かれています。空中浮遊や透視など実写では描けないような描写が可能なため、オウムでは度々アニメを布教に利用していました。
麻原彰晃が作詞・作曲した歌がある
麻原が音楽好きであったことと石井紳一郎などの音楽教育を受けた信者も多数いたこともあって、オウム真理教は多彩な音楽活動も行っていました。宗教歌であった「オウムソング」、クラシック調やロック調の幅広い音楽性を持った楽曲があり、麻原が作詞・作曲したものも多くありました。
中でも衆議院選挙に出馬した際に使用されていた「尊師マーチ」は、オウム事件の報道や事件後のドキュメンタリー番組でも度々放映されたので、聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
オウム真理教の年表
1984年ーヨーガ教室「オウムの会」を開く
1983年、23歳だった麻原彰晃はヨーガや東洋医学などをかけ合わせた能力開発のための学習塾「鳳凰慶林館」を東京で開きます。翌年の1994年に学習塾「鳳凰慶林館」は「オウムの会」と名前を変更し、ヨーガ教室として活動を始めます。
このころのオウムの会を取材した記者によって雑誌「ムー」や「トワイライトゾーン」で記事にされ、空中浮遊した麻原の写真などが掲載されました。
1986年には、宗教の税法上のメリットに目をつけ宗教団体「オウム神仙の会」となりました。このころから麻原はヒマラヤで最終解脱を経験したと語るようになり、武力と超能力による国家転覆を計画していたといいます。
1987年ー「オウム真理教」設立
1987年、ヨーガ系を求めた信者たちを押し切り仏教系に方針を変えた麻原は、オウム神仙の会を「オウム真理教」とし布教活動を開始します。しかし、宗教化してからは信者に多額の献金を求めたり、労働への要求も増えたため、一時的に会員は三分の二ほどまで減少しました。
麻原はオカルト雑誌に広告記事を掲載したり、チベットの指導者であるダライ・ラマ14世との接見などを利用した布教活動を行い、着実に信者を増やしていきました。その結果1987年の11月にはニューヨーク支部を立ち上げるほど、海外にも信者が増えていきます。
1988年ー信者を過失致死させる
1988年9月に教団が開催した修行に参加した男性信者が、突然奇声を上げて暴れ始めたあと死亡するという事件が起こります。原因は精神錯乱とも薬物中毒とも言われていますが、はっきりとは分からないままです。
錯乱した信者の「頭を冷やしてこい」と麻原は他の弟子たちに命令し、男性信者は風呂場に連れていかれると逆さまにして頭から浴槽の水につけられました。その最中に意識不明に陥ったため麻原が心肺蘇生や人工呼吸を行いましたが、甲斐なく男性信者は死亡してしまいます。
当時、教団は宗教法人認可のための手続きを始めていて、事件が明るみに出ると申請取り消しは必至でした。そのため麻原は弟子たちに証拠隠滅を指示し、秘密裏に処理するように弟子たちに命令します。