1989年ー宗教法人に認可される
東京都は信者やその家族との問題を理由に教団の宗教法人化をためらっていましたが、麻原が信者200人を連れて都庁に押しかけるなどして抗議したため1989年8月25日に「オウム真理教」を宗教法人に認可しました。
しかしその裏で教団はオウム問題を追求していた坂本堤弁護士とその家族を殺害した「坂本堤弁護士一家殺害事件」を引き起こしています。
犯行の際、実行犯であった中川智正がオウムのバッジを現場に落としたため教団の犯行も疑われましたが、坂本弁護士一家が自ら失踪した可能性も捨てきれず、この時はオウム内部まで捜査の手が及ぶことはありませんでした。
1990年ー衆議院議員総選挙へ出馬
1990年、教団は政治団体「真理党」を設立し、麻原と信者24人が第39回衆議院議員総選挙に出馬します。出馬に関しては幹部内で珍しく意見が割れ、多数決により出馬が決定しました。のちにアレフ代表になる上祐史浩も反対派の一人でした。
麻原のお面をかぶった「彰晃軍団」による選挙活動や、尊師マーチを歌いながら活動するなど奇抜なパフォーマンスによって教団の知名度も上がっていきました。しかし選挙結果はさんざんで、一番得票数の多かった麻原でさえ1,783票という惨敗に終わりました。
この選挙がきっかけで麻原は政府や国民に対して不信感を持つようになり、より一層非合法な活動をエスカレートさせていくことになりました。
1994年ー省庁制の導入と松本サリン事件
1994年にオウム真理教は教団の運営方法に省庁制の導入しています。元々は総務部や医療班のような「部班制」が採用されていて、すべて麻原が決定権を持っていました。組織の拡大に伴って責任を分散するため、教団幹部を長官や大臣に任命する「省庁制」に切り替わりました。
「省庁制」が発足した同日、教団は長野県松本市で裁判の妨害とサリンの実験を兼ねてテロを実施します。「松本サリン事件」と呼ばれたこの事件は、化学兵器が一般の人々に無差別に使用された世界初の事例となりました。
1995年ー地下鉄サリン事件
オウム真理教は「松本サリン事件」から9か月後の1995年3月20日に「地下鉄サリン事件」を引き起こしました。東京の霞が関に乗り入れる地下鉄の車両にサリンの入った袋を持ち込み、一般市民を標的にしてテロを実行したのです。
これによりオウム真理教は3月22日に警察の強制捜査を受けます。捜査の結果警察は、麻原彰晃を首謀者として逮捕し、実行犯など17人の教団幹部らを逮捕しました。
1996年ー宗教法人の認可取り消しと破産宣告
オウム真理教は麻原らの逮捕後も活動を続けていましたが、1995年10月30日に東京地裁から解散命令を受けます。教団側は即時抗告、特別抗告を行いましたが最高裁によって棄却され、宗教法人としての解散が確定しました。
また麻原らの逮捕を受けて教団からは多くの信者が離れていき、事件発生後2年半で信者数が5分の1以下に減った教団は資金難に陥ります。東京地裁は1996年3月28日に破産法に基づいて教団に破産宣告を下しました。
1999年ーオウム真理教休眠宣言
オウムの存続をめぐっては長野県で起こった住民運動をきっかけとして、オウム反対運動が盛り上がり始め全国に広がっていきました。国会でもオウム問題が議論され、「無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律」いわゆる「オウム新法」が制定されます。
これを受けて教団は1999年9月に「オウム真理教休眠宣言」を発表し、同時に当時の教団関係者の事件関与を認めました。
2000年2月4日、教団の破産に伴い破産管財人によりオウム真理教という名称の使用を禁止されたため、この時点で「オウム真理教」という組織は消滅しました。
2000年ー「アレフ」誕生
オウム真理教の消滅と同時に、元教団幹部の上祐史浩を代表として宗教団体アレフが発足しました。
アレフは上祐の方針により一時「脱麻原」を掲げていましたが、未だに麻原を崇拝したりオウム真理教の教えを守る信者も数多く残っています。そのため公安調査庁では「オウム真理教主流派」という見方を続けていて、現在でも観察処分対象としています。
またマスコミでも「オウム真理教(アレフ)」や「現在はアレフに改称」など、オウム真理教であると強調した報道の仕方が主流になっています。
その後「アレフ」からは「ひかりの輪」や「山田らの集団」などの分派が誕生しています。
オウム真理教を扱った関連作品
小説「川の深さは」
「川の深さは」は2000年に創刊された福井晴敏による小説です。元々は1997年の第43回江戸川乱歩賞の応募作品で、選考会で大きな話題となるも残念ながら落選してしまった作品でした。2001年度の「このミステリーがすごい!」の第10位にランクインしています。
作中にオウム真理教をモデルにしたと思われる新興宗教団体「神泉教」が登場し、地下鉄爆破テロを引き起こしています。
漫画「シェー教の崩壊」
「シェー教の崩壊」は漫画家・赤塚不二夫の短編作品で、1996年1月号のビッグゴールドに掲載されました。赤塚不二夫の還暦と漫画家40周年を記念した作品で、おそ松くんや天才バカボンなどの赤塚漫画のキャラクターがオールスターで登場します。
オウム真理教をモチーフにした宗教団体シェー教の教祖イヤミを主人公にしたストーリーで、サティアンをもじったシェティアンも登場します。
映画「カナリア」
「カナリア」は塩田明彦監督・脚本による映画です。2004年11月20日に映画祭の東京フィルメックスのオープニング作品として上映され、翌年の2005年3月12日に一般公開されました。イギリスの第13回レインダンス映画祭でグランプリに輝きました。
オウム真理教に関するまとめ
いかがでしたか?
オウム真理教はただのヨーガ教室から麻原彰晃が備えていたカリスマ性によって宗教団体へと大きく成長しました。そして教祖・麻原の社会性の欠如は多くの信者を巻き込んで犯罪に走らせ、多くの人々に今でも苦痛を与え続けています。
日本は平和な国だと言われていますが、またいつこのような団体が現れないとも限りません。そうならないよう私たちもしっかり目を光らせておく必要があるのではないでしょうか?