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建築家「隈研吾」の建築作品20選【各作品の特徴やコンセプトも紹介】

2020年東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場である国立競技場のデザイナーとして大きな注目を集めている隈研吾は、「和の大家」として世界的に有名な建築家です。これまでも数多くの建築賞を受賞し、訪れる人に驚きと感動をもたらしています。

この記事では、隈研吾がデザインした建築の中から、今注目されている20選をその建築の特徴とともに紹介します。有名な建物はもちろん、これも隈研吾がデザインしたとは知らなかった!と思うような意外な建築もあるかもしれません。

隈研吾の建築の特徴

隈研吾(1954〜)
出典:wikipedia

隈研吾の建築は、日本古来の素材を生かした和のデザインが特徴的です。建物がある環境や文化に溶け込むよう、柔らかい建築を目指しています。木材や石材を使った建築が多く見られますが、コンクリートや鉄に代わる新しい素材を探し、次世代の建築のあり方を模索している建築家でもあります。

2016年には、環境に配慮した優秀な建築をデザインしたとして「持続可能な建築」世界賞を受賞しました。この受賞は、隈研吾が目指す地元の土や木、紙といった材料を組み合わせることで、自然と調和していく建築が、世界的にも求められている証と言えるでしょう。

国立競技場 JAPAN SPORT COUNCIL

2020年東京オリンピック・パラリンピックの主会場として2019年に開場した国立競技場は、隈研吾の「杜のスタジアム」というコンセプトのもとで作られました。

法隆寺五重塔からヒントを得てデザインされた庇は、日本らしい軒下の美しさを見ることができます。木材と鉄骨を使用した屋根は低く設計され、水平ラインを強調して周囲の環境にうまく馴染んでいます。木材には47都道府県の杉を使い、それぞれの産地方向に向けて並べられました。

角川武蔵野ミュージアム

2020年にオープンした角川武蔵野ミュージアムは、2万枚の花崗岩で外壁を覆った建物が特徴的です。大地が地下から隆起してきたような、地形そのもののイメージでデザインされたため、人工的な箱とは対照的に、上に向かって広がるような建物のフォルムになりました。外観は66枚の三角形を組み合わせて作られており、開口部が極端に小さくなっています。

ミュージアムの前には水盤が広がり、そこからの建物の高さは30m。内部は5階建てになっています。隈研吾にとって、石の建築の集大成とも言える建物です。

水 / ガラス ATAMI 海峯楼

1995年に竣工したATAMI海峯楼は「水 / ガラス」をテーマに作られました。特に有名なのはウォーターバルコニーです。床や壁、天井、テーブルや椅子はガラスで作られている上、周囲は水盤で囲まれているため、まるでその先にある相模湾に浮いているような錯覚を引き起こします。

隈研吾は、建築と自然が庇や縁側といった水平面を媒介につながるという日本建築の伝統を実践している、ATAMI海峯楼の隣に建つ「日向邸」をデザインしたブルーノ・タウトへのオマージュとしてデザインしました。1997年にアメリカ建築家協会ベネディクタス賞を受賞しています。

根津美術館

歴史ある根津美術館は2009年に隈研吾の手により新しく作られました。第52回BCS賞、第51回毎日芸術賞を受賞したこの建物は、存在感のある大きな屋根が特徴的です。根津美術館は南青山という東京の中心部に広大な庭園を抱えていることもあり、隈研吾は庭と一体化した美術館を目指しました。

庭に囲まれ、竹垣と竹林が目をひくアプローチ部分は、商業施設が立ち並ぶ周囲から隔絶された静寂を感じることができるようにデザインされています。このエリアを通ることで、私たちは美術館へ足を踏み入れる前に気持ちが落ち着けることができます。これは茶道における庭の概念にも通じる発想です。

浅草文化観光センター

2012年にグッドデザイン賞を受賞した浅草文化観光センターは、雷門前にある台東区観光案内施設です。326㎡しかない狭い場所に、まるで8軒の木造建築が重なっているようにデザインされ、浅草らしい生活感に溢れ、個性的でありつつも全体としてはまとまりのある雰囲気をよく伝えています。

勾配のある屋根や天井がついていることで、建物の中に入ると日本らしい昔の木造建築を思わせ、くつろぐことができます。屋根と上の階の床との隙間に設備を収め、天井の高さも十分確保しています。外壁につけられた杉のルーバーがピッチを変えて配置されていることにより、建物のスケールを抑えている点も特徴的です。

那珂川町馬頭広重美術館

2000年に林野庁長官賞とマロニエ建築賞、2001年には村野藤吾賞と第42回建築業協会賞を受賞したこの建築は、栃木県にある歌川広重の作品を展示する美術館です。歌川広重の木版画「東海道五拾三次之内」の中で最も有名な『庄野(白雨)』」をモチーフにしています。ルーバーに使われている地元の特産品である八溝杉が、広重の雨を思い起こさせるようです。

杉以外にも建物の床には芦野石、壁には烏山和紙と栃木の名産を使うことで、地元の経済活性化に繋げています。美術館の裏山の竹林や雑木林を借景に取り込み、周囲にも溶け込んだこの美術館は、隈研吾のルーバー建築の初期作としても、隈研吾の出世作としても注目される建築です。

梼原 木橋ミュージアム

2011年に芸術選奨文部科学大臣賞を受賞したことでも有名な梼原(ゆすはら)木橋ミュージアム・雲の上のギャラリーは、「斗栱(ときょう)」という日本の伝統的な木材表現をモチーフとしています。刎木(はねぎ)を何本も重ねて、桁を乗せていく「やじろべえ型刎橋(はねばし)」が特徴的です。

梼原には隈研吾の建築が数多くあります。他にも第14回公共建築賞優秀賞を受賞した梼原町総合庁舎や、1997年新いなかデザイン賞大賞を受賞した梼原町地域交流施設(雲の上のホテル)などもあり、どれも地元産の木材を使い、注目されている建物です。

亀老山展望台

1995年JCDデザイン賞、文化・公共施設部門最優秀賞を受賞したのは、しまなみ海道が見渡せる絶景の眺望を楽しめる亀老山展望台です。ここはもともと公園でしたが、本来の山頂の形に戻し、樹木を植えて展望台を見えないように配置し、「建築を消す」という試みがされています。亀老山展望台が「見えない展望台」とも言われる所以はここにあります。

復元された地形に入れられたスリットが細いアプローチとなって展望台へと続くデザインとなっています。展望プラットフォームやデッキは7箇所設けられ、そこを巡り歩くことでさまざまな表情のしまなみ海道を眺めることができます。

京王線 高尾山口駅

京王線高尾山口駅は2016年にグッドデザイン賞を受賞しています。目を引く杉でできた大屋根は、高尾山の薬王寺院をモチーフに作られました。この大屋根が鉄道という日常と、高尾山という聖地との結界となっています。

駅の中では、高尾山の行灯をヒントにイメージされた照明器具が柔らかい雰囲気を醸し出しています。木組みには日本古来の大和張りや小端立て張りなどが用いられました。トイレのデザインにも隈研吾が関わり、場所柄を考え登山客のためにリュックを置くスペースを広く取っているほか、滑りにくい床材を使うなど利用者にも好評です。

アオーレ長岡

2012年のグッドデザイン賞を筆頭に、第25回日経ニューオフィス賞・地域ブロック別ニューオフィス奨励賞、JABMEE環境設備優秀賞、BCS賞、バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者・内閣府特命担当大臣奨励賞、日本建築学会賞、第15回日本免震構造協会賞作品賞、第15回公共建築賞行政部門を受賞したのがアオーレ長岡です。

長岡市役所やシティホールを兼ねた複合施設であるアオーレ長岡は、中心部にナカドマと呼ばれる中庭を置くことで、多くの市民が集う場として機能しています。地元の素材である越後杉や雪さらしの和紙、栃尾つむぎを外装や内装に使うことで、温かみのある空間となっているところも評価が高いです。

石の美術館

石の美術館は、2001年にイタリアの世界石建築大賞を受賞したほか、栃木県マロニエ建築賞、東北建築賞作品賞も受賞しています。もともと米を貯蔵していた石の蔵を再利用し、さらに地元の芦野石を用い、石のルーバーで空間を仕切っています。

建物自体も石の展示になっていますが、さらに3つの石倉の間のスペースも展示空間として使い、内と外を自由に行き来することを意図してデザインされているのも興味深いです。建物内にある石造りの茶室は、加工段階の違いによりさまざまな表情を持つ石を使うことで、石の冷たさを感じさせない工夫がされています。

旅館藤屋

山形県銀山温泉にある旅館藤屋は、2008年にアジア・デザイン・アワードを受賞しました。100年以上の歴史がある旅館のリノベーションであったため、使える木材は再利用され、銀山温泉の街並みは維持しつつ木造建築が持つ繊細さを再現しています。

内部は壁ではなく、簾虫籠(すむしこ)と呼ばれる竹製のスクリーンと手漉き和紙で仕切られ、ヴェールダルトと呼ばれるステンドグラスを使うことで、間接照明がさらに幻想的な雰囲気を醸し出しています。廊下と部屋がシームレスに繋がっているため、ドアノブもない忍者屋敷のような内部も人気です。

森舞台/登米町伝統芸能伝承館

1997年に日本建築学会賞作品賞を受賞したのは、登米町伝統芸能伝承館「森舞台」です。宮城県に伝わる登米能(とよまのう)のため、自然と一体化する場所で能を表現する場所として作られました。伝統的な能舞台同様、観客と舞台が白砂と呼ばれる「空」を挟んで向かい合うように設計されています。

舞台の柱は宮城産のヒバを使い、屋根は登米町で行われている天然スレート葺きとなっています。鏡板の絵は日本画家の千住博によるもので、天然緑青で描かれた青々とした色が印象的です。隈研吾はこの建物を地域の文化コアにしようと、観客席は多目的室としました。そのため、能の鑑賞だけではなく音楽フェスなどでも使用されています。

サントリー美術館

サントリー美術館は2007年に東京ミッドタウンに移転した際に隈研吾がデザインを担当し、2008年に公共建築部門でエミレーツ・グラス・アワードを受賞しました。「都市の居間」を目指し、白いセラミックパネルによる垂直のルーバーを用いて光の加減を調節し、美術館と庭園とを繋いでいます。

また、「無双格子」を取り入れることで、展示方法により光の状態を変えることのできる工夫もされています。館内は、洋酒メーカーであるサントリーらしく、ウイスキーの樽材を使った床板が広がっているほか、和紙も巧みに利用し、自然のぬくもりも感じられるようになっています。

下関市川棚温泉交流センター 川棚の杜

川棚温泉という豊かな自然に呼応するような、有機的な建築を目指して隈研吾がデザインしたのが、下関市川棚温泉交流センター・川棚の杜です。2012年に日本建築学会作品選奨を受賞しています。

大小さまざまな三角形で構成された外観が特徴的で、各面の色合いがかすかに違うことで表情の違いが生まれました。個性的なそのシルエットは、意外にも周囲にうまく溶け込み、豊浦のまろやかな山並みを思い起こさせてくれます。

長崎県美術館

長崎ゆかりの美術やスペイン美術を多く所蔵している長崎県美術館は、「呼吸する美術館」というコンセプトのもと、世界的にも珍しい運河を挟んだ美術館として2005年に開館しました。橋の回廊をつけることで運河を挟んだ二つの棟が結ばれています。緑に溢れた屋上の庭園からは長崎港が一望でき、隣接する長崎水辺の森公園に繋がっています。

イタリアのマーブルアーキテクチャーアワードのほか、2005年のグッドデザイン賞や日本建築家協会賞を受賞しています。

日本平夢テラス

富士山を望む日本平夢テラスは、「富士を結ぶ木組みの架け橋~八角形で繋ぐ日本の風景と伝統技術~」をコンセプトに建てられました。奈良県法隆寺にある夢殿をヒントにした、八角形の全方位型の展望室です。富士山以外にも駿河湾や静岡市内の夜景も楽しめます。展望フロアからは、約200mある空中回廊に繋がっています。

屋根には地元の富士ヒノキを使用し、軒や小口を木で刻むことで、見上げると社寺建築を思わせる佇まいです。テラス内の階段にもヒノキが使われ、三層の吹き抜けになっているために人を上へと導くデザインになっています。

富山市ガラス美術館

富山市ガラス美術館も入っているTOYAMAキラリという複合ビルは、隈研吾が富山の名産品であるガラスとアルミと御影石を用いてデザインしました。その外観は立山連峰をイメージしています。内部は富山県のムク材を使い、多用されているルーバーに光が反射して柔らかい雰囲気を醸し出しています。

2階から最上階まで斜めに吹き抜けがあるのが特徴で、日の光が差し込んでキラキラと輝くガラスが美しく、訪れる多くの人を魅了しています。第58回BCS賞を受賞しました。

住箱

隈研吾がアウトドアメーカーのsnow peakと共に2016年に製作したトレーラーハウス「住箱(じゅうばこ)」は、2017年にグッドデザイン賞を受賞しています。ハウスの壁となっているパネルが外に飛び出すことでテーブルになり、屋外とつながる構造になっています。

日本の茶室のごとく、窓を開けると外の風景が額縁に切り取られたように楽しめるよう、シンプルさを追求しています。そのため、使う人によってさまざまなカスタマイズのできる空間となりました。「旅する建築」をイメージして作られたものですが、コロナ禍でテレワークの増加を背景に利用する可能性が広がり、注目が集まっています。

高輪ゲートウェイ駅

2020年に開業した高輪ゲートウェイ駅は、隈研吾が駅と街を一体化することをイメージして建てられました。膜構造の大屋根が、折り紙形状のフレームで支えられている作りで、駅の中は天井が高く開放感が感じられます。壁に木の板を凹凸をつけて貼る「大和貼り」という伝統的技法を使うことで、障子のような暖かい光が差し込むようになりました。

エレベーターはガラスで覆われているため、圧迫感は感じられません。一般的な駅とは異なり、床や天井は明るめの色で統一されているあたりも、軽やかな雰囲気が出ています。もともと車両基地であった敷地を縮小させて作った駅であるため、ホームからは車両基地を望むこともでき、特に夜景が美しいと評判です。

隈研吾の建築に関するまとめ

隈研吾の建築は、実際に見るとその斬新なデザインに圧倒されながらも、居心地がよくて落ち着くという不思議な感覚に囚われます。それは、その建築が地元に根ざした材料を用い、環境に溶け込むデザインであることはもちろん、日本の古き良き雰囲気を、肯定的な意味で上手く醸し出しているからのように感じます。

隈研吾の建築は、誰もが体感することのできるものが全国に数多くあります。この記事をきっかけに、ぜひ多くの人が隈研吾の建築に触れ、その不思議なノスタルジイを感じてもらえたら嬉しいです。

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