2020年東京オリンピック・パラリンピックのメイン会場である国立競技場のデザイナーとして大きな注目を集めている隈研吾は、「和の大家」として世界的に有名な建築家です。これまでも数多くの建築賞を受賞し、訪れる人に驚きと感動をもたらしています。
この記事では、隈研吾がデザインした建築の中から、今注目されている20選をその建築の特徴とともに紹介します。有名な建物はもちろん、これも隈研吾がデザインしたとは知らなかった!と思うような意外な建築もあるかもしれません。
この記事を書いた人
一橋大卒 歴史学専攻
Rekisiru編集部、京藤 一葉(きょうとういちよう)。一橋大学にて大学院含め6年間歴史学を研究。専攻は世界史の近代〜現代。卒業後は出版業界に就職。世界史・日本史含め多岐に渡る編集業務に従事。その後、結婚を境に地方移住し、現在はWebメディアで編集者に従事。
隈研吾の建築の特徴
隈研吾の建築は、日本古来の素材を生かした和のデザインが特徴的です。建物がある環境や文化に溶け込むよう、柔らかい建築を目指しています。木材や石材を使った建築が多く見られますが、コンクリートや鉄に代わる新しい素材を探し、次世代の建築のあり方を模索している建築家でもあります。
2016年には、環境に配慮した優秀な建築をデザインしたとして「持続可能な建築」世界賞を受賞しました。この受賞は、隈研吾が目指す地元の土や木、紙といった材料を組み合わせることで、自然と調和していく建築が、世界的にも求められている証と言えるでしょう。
国立競技場 JAPAN SPORT COUNCIL
2020年東京オリンピック・パラリンピックの主会場として2019年に開場した国立競技場は、隈研吾の「杜のスタジアム」というコンセプトのもとで作られました。
法隆寺五重塔からヒントを得てデザインされた庇は、日本らしい軒下の美しさを見ることができます。木材と鉄骨を使用した屋根は低く設計され、水平ラインを強調して周囲の環境にうまく馴染んでいます。木材には47都道府県の杉を使い、それぞれの産地方向に向けて並べられました。
角川武蔵野ミュージアム
2020年にオープンした角川武蔵野ミュージアムは、2万枚の花崗岩で外壁を覆った建物が特徴的です。大地が地下から隆起してきたような、地形そのもののイメージでデザインされたため、人工的な箱とは対照的に、上に向かって広がるような建物のフォルムになりました。外観は66枚の三角形を組み合わせて作られており、開口部が極端に小さくなっています。
ミュージアムの前には水盤が広がり、そこからの建物の高さは30m。内部は5階建てになっています。隈研吾にとって、石の建築の集大成とも言える建物です。
水 / ガラス ATAMI 海峯楼
1995年に竣工したATAMI海峯楼は「水 / ガラス」をテーマに作られました。特に有名なのはウォーターバルコニーです。床や壁、天井、テーブルや椅子はガラスで作られている上、周囲は水盤で囲まれているため、まるでその先にある相模湾に浮いているような錯覚を引き起こします。
隈研吾は、建築と自然が庇や縁側といった水平面を媒介につながるという日本建築の伝統を実践している、ATAMI海峯楼の隣に建つ「日向邸」をデザインしたブルーノ・タウトへのオマージュとしてデザインしました。1997年にアメリカ建築家協会ベネディクタス賞を受賞しています。
根津美術館
歴史ある根津美術館は2009年に隈研吾の手により新しく作られました。第52回BCS賞、第51回毎日芸術賞を受賞したこの建物は、存在感のある大きな屋根が特徴的です。根津美術館は南青山という東京の中心部に広大な庭園を抱えていることもあり、隈研吾は庭と一体化した美術館を目指しました。
庭に囲まれ、竹垣と竹林が目をひくアプローチ部分は、商業施設が立ち並ぶ周囲から隔絶された静寂を感じることができるようにデザインされています。このエリアを通ることで、私たちは美術館へ足を踏み入れる前に気持ちが落ち着けることができます。これは茶道における庭の概念にも通じる発想です。
浅草文化観光センター
2012年にグッドデザイン賞を受賞した浅草文化観光センターは、雷門前にある台東区観光案内施設です。326㎡しかない狭い場所に、まるで8軒の木造建築が重なっているようにデザインされ、浅草らしい生活感に溢れ、個性的でありつつも全体としてはまとまりのある雰囲気をよく伝えています。
勾配のある屋根や天井がついていることで、建物の中に入ると日本らしい昔の木造建築を思わせ、くつろぐことができます。屋根と上の階の床との隙間に設備を収め、天井の高さも十分確保しています。外壁につけられた杉のルーバーがピッチを変えて配置されていることにより、建物のスケールを抑えている点も特徴的です。