建築家「隈研吾」の建築作品20選【各作品の特徴やコンセプトも紹介】

石の美術館

石の美術館は、2001年にイタリアの世界石建築大賞を受賞したほか、栃木県マロニエ建築賞、東北建築賞作品賞も受賞しています。もともと米を貯蔵していた石の蔵を再利用し、さらに地元の芦野石を用い、石のルーバーで空間を仕切っています。

建物自体も石の展示になっていますが、さらに3つの石倉の間のスペースも展示空間として使い、内と外を自由に行き来することを意図してデザインされているのも興味深いです。建物内にある石造りの茶室は、加工段階の違いによりさまざまな表情を持つ石を使うことで、石の冷たさを感じさせない工夫がされています。

旅館藤屋

山形県銀山温泉にある旅館藤屋は、2008年にアジア・デザイン・アワードを受賞しました。100年以上の歴史がある旅館のリノベーションであったため、使える木材は再利用され、銀山温泉の街並みは維持しつつ木造建築が持つ繊細さを再現しています。

内部は壁ではなく、簾虫籠(すむしこ)と呼ばれる竹製のスクリーンと手漉き和紙で仕切られ、ヴェールダルトと呼ばれるステンドグラスを使うことで、間接照明がさらに幻想的な雰囲気を醸し出しています。廊下と部屋がシームレスに繋がっているため、ドアノブもない忍者屋敷のような内部も人気です。

森舞台/登米町伝統芸能伝承館

1997年に日本建築学会賞作品賞を受賞したのは、登米町伝統芸能伝承館「森舞台」です。宮城県に伝わる登米能(とよまのう)のため、自然と一体化する場所で能を表現する場所として作られました。伝統的な能舞台同様、観客と舞台が白砂と呼ばれる「空」を挟んで向かい合うように設計されています。

舞台の柱は宮城産のヒバを使い、屋根は登米町で行われている天然スレート葺きとなっています。鏡板の絵は日本画家の千住博によるもので、天然緑青で描かれた青々とした色が印象的です。隈研吾はこの建物を地域の文化コアにしようと、観客席は多目的室としました。そのため、能の鑑賞だけではなく音楽フェスなどでも使用されています。

サントリー美術館

サントリー美術館は2007年に東京ミッドタウンに移転した際に隈研吾がデザインを担当し、2008年に公共建築部門でエミレーツ・グラス・アワードを受賞しました。「都市の居間」を目指し、白いセラミックパネルによる垂直のルーバーを用いて光の加減を調節し、美術館と庭園とを繋いでいます。

また、「無双格子」を取り入れることで、展示方法により光の状態を変えることのできる工夫もされています。館内は、洋酒メーカーであるサントリーらしく、ウイスキーの樽材を使った床板が広がっているほか、和紙も巧みに利用し、自然のぬくもりも感じられるようになっています。

下関市川棚温泉交流センター 川棚の杜

川棚温泉という豊かな自然に呼応するような、有機的な建築を目指して隈研吾がデザインしたのが、下関市川棚温泉交流センター・川棚の杜です。2012年に日本建築学会作品選奨を受賞しています。

大小さまざまな三角形で構成された外観が特徴的で、各面の色合いがかすかに違うことで表情の違いが生まれました。個性的なそのシルエットは、意外にも周囲にうまく溶け込み、豊浦のまろやかな山並みを思い起こさせてくれます。

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