クトゥルフ神話の特徴
クトゥルフ神話にはさまざまな特徴がありますが、ここではその中でも他にはない、特筆すべき以下の4つの特徴について紹介します。
- 壮大で救いのない世界観
- 想像の付かないコズミックホラー(宇宙的恐怖)
- 冒涜的で無慈悲な世界
- ときおり登場する複数の架空の言語
壮大で救いのない世界観
先述の通り、クトゥルフ神話は明確な設定が決められているわけではありません。そのため、ここでは後年ダーレスによりまとめられ、体系化されたクトゥルフ神話の世界観について紹介します。
遠い昔、宇宙の善の権化である「旧神」と呼ばれる神々がいました。後に彼らをもとに宇宙の悪の権化である神々が生み出されます。
この宇宙の悪の権化である神々が外宇宙から太古の地球に襲来し、支配したことから、彼らは「旧支配者」と呼ばれるようになりました。基本的に彼らが結束することはありませんでしたが、あるとき、彼らは団結し旧神に反旗を翻します。
その戦いは結果として旧支配者が敗北し、旧神たちの手によって、地球の奥深くや宇宙の遥か彼方へ封印されますが、完璧に封印することはできませんでした。また、旧支配者を信仰する一部の人々や組織が今もなお残っています。
人智を超える力を手に入れようと旧支配者の復活や召喚を試みる者もいますが、旧支配者は悪の権化であるため、一時的に手を貸してくれることはあっても、それはその人間を駒として利用するためである場合が多いです。基本的には旧支配者と接触をした時点で、よほど幸運でない限り、死亡するか、もしくは発狂して自我が保てず廃人になるか、旧支配者に体が乗っ取られるなどロクな目には会いません。
このような壮大でなんとも救いのない世界観がクトゥルフ神話の特徴の一つといえるでしょう。
想像の付かないコズミックホラー(宇宙的恐怖)
ラヴクラフトは自身の書いた小説や理想のホラー小説について、コズミックホラー(宇宙的恐怖)という概念を発表しました。コズミックホラーとは、無限に広がる宇宙において人類はちっぽけな存在で、小さな箱庭でしかない地球に住む人間の価値観など、塵に等しいという不安感のことです。
また、対話することもなく、人を理解するつもりもない、旧支配者など圧倒的な強者が存在し、そのような神々の悪意に、人類が晒されているかもしれないという、未知への恐怖感のこと表しました。簡単に例えると、この世界における人間を「アリ」に、クトゥルフ神話で登場する神々を「人間」に置き換えるとわかりやすいのではないでしょうか?
コズミックホラ―では、これまでの小説などに登場してきた幽霊や吸血鬼、ゾンビなどといった人間の死への恐怖や感情的な恐怖といったものは排除されています。その代わりに、宇宙や他の次元など人間には測り知れないものや理解できないものへの恐怖が描かれました。
ラヴクラフトのすべての作品に、コズミックホラーが取り入れられているわけではありませんが、クトゥルフ神話を構成する重要な要素であることは間違いありません。
冒涜的で無慈悲な世界
ラヴクラフトはクトゥルフ神話に登場する神々を創るに当たって、人間の価値観や常識などを取り除きました。それにより、クトゥルフ神話に登場する神々や生物は人間の理解が到底及ばない存在となります。
そのため、愛情や利害関係などなく、当然のことながら、取引や契約なども成立せず、たとえ成立したとしても、一方的に利用されるだけされて破棄されることもありました。彼ら神々の行動を人間が理解することは不可能です。
また、クトゥルフ神話は冒涜的とも表現されます。キリスト教の聖書では、唯一神が世界や人間を創ったと記載されていますが、クトゥルフ神話では唯一神が創っていない存在が描かれていました。
このことから、神の否定につながり、神を否定することはこれまで信じてきた世界観や価値観の否定となります。キリスト教徒にとって到底受け入れることのできない事実で、正気を保てなくなる、発狂するという理由から冒涜的と表現されました。
キリスト教徒以外からは理解が難しいかもしれません。ですが、ある日突然、自分の価値観や常識、心の拠り所としていたことなど、その全てが否定されたら、あなたは果たして正気でいられるでしょうか?
ときおり登場する複数の架空の言語
クトゥルフ神話作品にはときおり架空の言語が登場します。例えば、ルルイエ語と呼ばれる言語はクトゥルフ神話に登場するルルイエという架空の土地で話される言語でした。
ルルイエ語は人間の声帯とはまったく異なる発声器官を持つ、生物や神々が話す言語とされています。また、作品内で発見された文献に使われている未知の言語がルルイエ語であったり、呪文として用いられたりすることもありました。
その他にも以下のような言語も登場します。
- ナアカル語
- センザール語
- ツアス=ヨ語
これらの言語について詳しく語られることはまれですが、このように複数の架空の言語が登場するのも、クトゥルフ神話の特徴の一つであり、魅力でもあります。