日米和親条約とは?内容や結んだ人、開港場所をわかりやすく簡単解説

日米和親条約は、江戸時代末期に日本とアメリカが結んだ、初めての近代的な条約です。黒船に乗ったペリーが日本に押し寄せて条約締結を迫ったことで、江戸幕府が長年続けた鎖国をやめ、日本が開国した条約として知られています。

「日米和親条約締結の地」碑
出典:ニッポン旅マガジン

日米和親条約を結んでから4年後に締結された、日米修好通商条約とセットで覚えている人が多いと思いますが、実はこの2つの条約は全く違う条約です。内容はもちろん、日本の関わり方も正反対でした。日米和親条約というのは、日本が主導権を取ってアメリカと締結をした、評価されるべき近代的条約なのです。

この記事では、日米和親条約の具体的な内容だけではなく、そんな知られざる側面を紹介します。

この記事を書いた人

一橋大卒 歴史学専攻

京藤 一葉

Rekisiru編集部、京藤 一葉(きょうとういちよう)。一橋大学にて大学院含め6年間歴史学を研究。専攻は世界史の近代〜現代。卒業後は出版業界に就職。世界史・日本史含め多岐に渡る編集業務に従事。その後、結婚を境に地方移住し、現在はWebメディアで編集者に従事。

日米和親条約とは

日米和親条約は、1854(安政1)年3月3日に江戸幕府がアメリカ使節ペリーと神奈川近くの横浜村(現在の横浜市)で締結した条約です。そのために神奈川条約とも呼ばれます。

ペリーが横浜へ上陸した時の様子
出典:朝日新聞デジタル

日米和親条約により、日本は約200年続いた鎖国制度を終わらせることになりました。下田と箱館を開港し、アメリカ船に薪や水・石炭や食料を提供することを許可しましたが、自由貿易は禁止されました。

日米和親条約の内容

2つの港を開港すること

下田へ上陸するペリー
出典:日本カメラ博物館

日米和親条約では、下田と箱館の2港を開く条文が記されました。下田は条約調印後すぐに開港しましたが、1858年に日米修好通商条約締結後に横浜港が開くと、入れ替わりに閉港することになります。

函館に建つペリーの銅像
出典:函館市公式観光情報サイトはこぶら

箱館のある蝦夷地は当時まだ松前氏の私領であったため、1855年2月に幕府の領地に変えてから3月に港を開くこととなりました。なお、「箱館」の表記は、1869(明治2)年以降「函館」と改称されます。

燃料や食料を供給すること

日米和親条約の日本語批准書
出典:wikipedia

下田と箱館の2港には、アメリカ船が石炭や薪などの燃料のほか、水や食料などを必要な品を調達するために来航を許可することが規定されました。その品物の価格は日本の役人が提示し、アメリカ側は金貨や銀貨で支払うという内容も記載されています。

当時西洋でよく使われていた銀貨
出典:wikipedia

なお、この取引が行えるのは担当の役人だけであって、他の方法で行うことは禁じられました。自由な貿易は許されないという趣旨の条文が盛り込まれています。

難破船や乗組員の救助をすること

19世紀の捕鯨活動の様子
出典:wikipedia

アメリカの船が日本の沿岸で座礁したり難破した場合、日本はその船の救援と乗組員の保護を行うことになりました。遭難したアメリカ人たちは日本で監禁されることはなく、決められた敷地内においては自由に活動することができるという内容も書かれています。

1891年の函館港
出典:wikipedia

具体的には、外国人の行動できる範囲は、下田においては7里、箱館は5里以内となっています。下田の場合、外国人が天城山脈を越えることは許されなかったのです。

下田に領事を置くこと

タウンゼント・ハリス(1804〜1878)
出典:国際日本文化研究センター

日米和親条約調印から18ヶ月後に、アメリカは下田に領事を置くことができるという条文が盛り込まれました。これによって来日したのが、のちに日米修好通商条約を締結することになる、初代総領事タウンゼント=ハリスです。

アメリカにのみ最恵国待遇を認めること

日本がアメリカ以外の国と条約を結び、その内容が、日本がアメリカに与えたよりも有利な条件を認めている場合は、アメリカにもその条件を自動的に適用するという取り決めもなされました。この内容がアメリカにのみ認められるものであったため、「片務的最恵国待遇」と呼ばれます。

明治初期の長崎港
出典:長崎市公式観光サイト

日米和親条約が結ばれたのち、日本はイギリス・ロシア・オランダとも同様の条約を締結しますが、この片務的最恵国待遇により、ロシアとの条約で取り決められた長崎の開港という内容がアメリカ・イギリスにも適用されることになります。オランダはもともと長崎の出島に出入りしていた国なので、条約締結により長崎での行動の自由が認められるようになりました。

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