版籍奉還をわかりやすく解説!目的や廃藩置県との違いも簡単に紹介

版籍奉還を行った目的

中央集権国家の礎を作りたかった

欧米列強と太刀打ちするには中央集権国家が必要だった

明治政府はアジアに進出してきた欧米列強の植民地にならないことを第一に政治改革を行います。欧米列強に負けない国を作るためには、各地方が領民を支配する地方分権制では立ちいかないことを理解していました。

そのため、天皇を中心とした中央集権国家を作ることを念頭に置き、その第一段階として版籍奉還が実行されました。

廃藩置県の下準備

廃藩置県を行うには版籍奉還が必要だった

明治政府は中央集権国家の完成を成功させるために藩を無くすことを考えていました。しかし、いきなり藩を廃止すると行き場を失った藩主や家臣たちが明治政府に抵抗するリスクがありました。

そのため、明治4年(1871)に実行する廃藩置県に向けて、制度として緩い版籍奉還を実行することで藩主たちからの反感を買うことを防ぎます。つまり、版籍奉還は廃藩置県の下準備にあたると言っても過言ではありませんでした。

版籍奉還が与えた3つの影響

影響1:知藩事の設置

長州藩主・毛利敬親を知藩事に認めた書状
出典:おもしろきことなき世をおもぶろぐ

版籍奉還によって藩主たちは領地と領民を返すことになります。返上した藩はどうなったのかというと、天皇が藩主たちを新たに知藩事と任命し、統治しました。

藩主たちは自身が統治していた領地と領民を天皇に返したついでに、知藩事の任命と公家たちと同等の地位・華族を与えられたことで、版籍奉還に反対する藩主はいませんでした。

影響2:主従関係の崩壊

版籍奉還で全ての人民は天皇のものとなった

版籍奉還で藩主や家臣、民衆を含んだすべての人を天皇に返したことで、藩主と家臣から成る主従関係が崩壊しました。これにより、明治政府が藩内に欲しい人材がいた場合は、知藩事に申し入れなく引き抜きが行われるようになります。

影響3:給料支払い方法の変更

版籍奉還で藩主たちの収入が大きく減ることになった

版籍奉還以前の藩主たちは地方知行(じがたちぎょう)で収入を得ていましたが、版籍奉還の実行により、地方知行は廃止。その代わりに蔵米知行で収入を得る形を取りました。

さらに収入も各藩の全体収入の10分の1に定められます。また戊辰戦争で悪化した藩財政の改善を明治政府から命じられていたので、収入が多かった武士たちは大幅に減らされました。

版籍奉還を主導した人達

大久保利通

大久保利通(1830~1878)
出典:Wikipedia

大久保利通は江戸時代の幕末から明治時代にかけて活躍した武士、政治家です。文政13年(1830)に生まれた利通は元々胃が弱い体質で武芸は得意ではなく、その代わりに学問に秀でていました。そのため、弘化13年(1846)には薩摩藩の記録所書役助に任命されます。

しかし、嘉永3年(1850)に起きたお由羅騒動に巻き込まれ謹慎処分となり、貧しい生活を余儀なくされますが、島津斉彬が藩主になったことにより、謹慎が解除。再び記録所書役助に戻りました。そして、藩主が島津茂久に変わると、利通は茂久の父・島津久光に接近。

文久2年(1862)に久光を擁して京都に上り、岩倉具視と公武合体樹立に向けて力を注ぎました。ところが、慶応3年(1867)の四候会議を経て、利通は武力で幕府を倒すことを目標としました。

そして、大政奉還と王政復古の大号令により新たに明治政府が誕生し、参議に就任します。利通は明治2年(1869)に手始めに版籍奉還を実行し、参議として中央集権国家確立に向けて政治改革を起こしました。

木戸孝允(きど-たかよし)

木戸孝允(1833~1877)
出典:Wikipedia

木戸孝允は長州藩出身の武士であり政治家です。孝允と大久保利通、西郷隆盛の3人は倒幕から明治維新にかけて大きな活躍をしたことから維新の三傑と呼ばれています。

孝允は幕末だった弘化3年(1846)、13歳にして神道無念流の免許皆伝を果たした天才的な剣豪でした。しかし、元治元年(1864)に起きた禁門の変を機に孝允は潜伏生活を余儀なくされます。

その後、薩長同盟や第二次長州征伐を経て、明治政府を樹立した際、孝允は総裁局顧問として明治政府の舵取りを任されました。特に孝允は主君と家臣の主従関係から成る体制から脱却し、近代化と中央集権国家完成を目指すための主導者的立場としての役割を果たしました。

版籍奉還を実行するために孝允は長州藩の藩主・毛利敬親を説得し同意を得ます。そして、大久保利通と協力し薩摩藩からの同意を得ると、孝允は土佐藩からも同意を得ます。その後は肥前藩も同意したことにより、薩長土肥の4藩が版籍奉還を行ったことにより、多くの藩が版籍奉還に従いました。

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