世界の有名建築家5選
ここまで、日本人の有名建築家をご紹介してきましたが、ここからは海外の有名建築家を紹介します。海外編では、近代建築の巨匠と呼ばれる3人ほか、建築の先駆者たちをご紹介します。
ル・コルビュジエ
ル・コルビュジエは、スイス生まれのフランス人建築家。彼は、20世紀を代表する近代建築理論家の巨匠、三大巨匠の一人として名高い人物です。
コルビュジエは、鉄筋コンクリートの床と床を支えるための最小限の柱、各階へ移動するための階段を要素とした建築手法である「ドミノ・システム」という鉄筋コンクリートの構造システムを広めました。このシステムが発案されるまでは、壁によって建物の床を支えていましたが、この壁をなくすことで、より自由な建築を製作することに成功したのです。このシステムを開発したコルビュジエの作品は、機能的なデザインが特徴的と言えます。
「国立西洋美術館本館」は、日本唯一のコルビュジエによる建築作品、東京都上野にある美術館です。2016年には世界遺産にも登録されています。この建築には、20世紀の建築に大きな影響を与えた「近代建築の五原則」が表現されていることが特徴的です。この五原則とは、ピロティ(一階部分に壁がなく、柱で床を支えている空間のこと)、屋上庭園、自由な平面、水平な連続窓、自由な立体を表します。この建築は、日本の建築家にも大きな影響を与えたことでも有名です。
ル・コルビュジエとはどんな人?生涯・年表まとめ【代表建築作品や都市計画、名言、死因についても紹介】
フランク・ロイド・ライト
フランク・ロイド・ライトは、一つ前に紹介したコルビュジエとともに近代建築の三大巨匠の一人と称されています。アメリカのウィスコンシン州で生まれた彼は、建築を専門的に学ぶことなく、建築事務所を点々としながら建築家としての才能を開花させていきました。
ライトは日本の穏やかな気候、豊かな自然の恵み、庶民の間にも芸術が垣間見える「日本」に興味を寄せたようで、近代的なコンクリート調の無機質な建築に対し、有機的な素材を用いて人間性豊かな建築を製作しました。
次に、ライトが手がけた建築物の紹介をします。現在の、愛知県犬山市にある「旧帝国ホテル(ライト館)」は、4年もの歳月をかけて竣工されました。建物には、深い軒や左右対称の全体像などの特徴があらわれています。このような特徴は、西洋建築には珍しい特徴であり、ライトが日本や東洋思想に深い理解があったことを伺わせます。ホテル内部も、光の緻密な演出をすることで、煌びやかなシャンデリアが見られる西洋建築とは異なった特徴を持ち合わせています。
ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ
彼は、コルビュジエ、ライトと並ぶ、近代建築三大巨匠の一人です。ドイツ出身で生まれ、正式な建築を学ぶことなく、地元の職業訓練学校で製図工の教育を受けたのちにデザイナーとして会社に勤務していました。その後、事務所に属しながら、邸宅を手がけたことで建築家として評価を受け、それをきっかけに自身の事務所を開設しました。
彼は、デザインに対して「less-is-more」つまり、「より少ないことは、より豊かである」というアプローチで製作活動を行っていました。他にも「God is in the detail」つまり「神は細部に宿る」といったような標語で知られるようになり、装飾的なものは取り払った、建築の表現のみに魅力を委ねる彼の建築は現在でも評価され続けています。
次にミースの建築物について紹介します。「ファンズワース邸」は、ミースによる最後の住宅作品であり、かつ傑作と呼ばれている建築です。アメリカのシカゴに位置しています。より少ない部材で制作され、周囲の風景と一体化するような工夫がされています。
また、内部には柱を置かず、かつ建物の周囲を囲む壁をガラスにすることで、開放感を出している点もまた魅力的です。
ミースファンデルローエの生涯・年表まとめ【作品から名言、死因まで】
アルヴァ・アアルト
アルヴァ・アアルトは、モダニズムの建築家として世界的に活躍した、フィンランド生まれの建築家です。
アルヴァの作品は、「日常の暮らしにこそデザインが必要である」という思想から、木材などの自然の温もりを感じることのできるモチーフを取り入れている点が特徴です。
フィンランド・ノールマルックにあるアルヴァの建築作品「マイレア邸」は、小高い丘の森の中にある邸宅です。周囲の自然と調和するように、北欧モダンらしい木材をふんだんに使用している点が特徴的です。
建築物そのものだけでなく、アアルトらしく「生活が楽しくなるような」工夫もされています。
ピーター・ズントー
ピーター・ズントーは、スイス生まれの建築家です。父親が家具職人であった影響で、幼い頃から家具デザインに触れる生活を送っていました。スイスの造形学校やニューヨークにて工業デザインと建築を学び、その後、自身の設計事務所を立ち上げました。
彼の建築の特徴は、モダニズムと自然を融合した点です。自然の素材を生かしつつも、シンプルな空間を建築において表現しています。彼は、温泉、美術館、教会などの公共施設を多く手がけています。また、2009年にはプリツカー賞を受賞しています。
ピーター・ズントーの最高傑作と呼ばれる、「テルメ・ヴァルス」はスイスのヴァルスに位置する温泉施設です。壮大な自然の中、幾何学的でダイナミックなデザインを実現しています。土地の特徴である斜面に続くように、屋根や屋上を設計しており、自然に溶け込むような工夫がなされています。