樋口一葉とはどんな人?生涯・年表まとめ【代表作品や功績、死因についても紹介】

樋口一葉の功績

功績1「女性の地位を向上させた」

文学で女性の地位向上を手助けした

上で述べたように、一葉は女性に対する世の中の不条理を小説の中で描きました。

今では考えられないことですが、一葉が生きた明治時代は男女平等とは程遠い世の中でした。今では18歳になれば男性女性関係なく選挙権を与えられます。しかし、一葉が生きた時代は女性に選挙権がなく、政治へ参加できませんでした。

不平等なのは政治面だけでなく、刑罰や制度でも女性は不利な立場にありました。女性が不倫をすれば不倫相手とともに姦通罪で罰せられましたが、男が不倫した場合は罰せられなかったり、男性が愛人をもつことを認める制度も存在。

こうした不条理に対する女性の嘆きを、一葉は小説を通して民衆に訴え、女性の地位向上に貢献したのです。

功績2「『たけくらべ』で大ヒットし人気作家になった」

大文豪たちから高評価だった

樋口一葉の代表作『たけくらべ』は、辛辣で有名な大文豪・森鴎外や幸田露伴から大絶賛を受けました。

これを皮切りに一葉は文学史に残る数々の作品を生み出し、世へと送り出します。人気作家としての道を歩み始めた樋口一葉の家には著名な文筆家が訪れ、文学サロンのようになっていました。

特に鴎外は彼女のことを絶賛しており、樋口一葉崇拝者と世間から言われたほどです。これに対して鴎外は「そう言われても、彼女の存在を大絶賛する以外にない」とまで言いました。

一葉の作品がいかに優れていたのか、それは鴎外の言葉から一目瞭然です。残念ながら、大作家としてスタートしてすぐに亡くなってしまいましたが、生きていればより多くの傑作が生まれていたでしょう。

功績3「和歌の才能もあった」

詩人としての才能にも優れていた

作家として有名な樋口一葉ですが、実は和歌の才能もありました。

一葉は小学校中等科を卒業後、中島歌子が運営する和歌の塾へ入門。歌会ではトップの成績を残し、師匠の歌子が自分の後継者として望むほどの才能を見せました。24年の生涯で詠んだ歌は5000を超えるほどです。

たぬきやさる、きつねなどの動物を題材に歌を詠んでいたそうで、以外とユーモアのある人でもありました。

一葉の小説はわかりやすく、リズムの良い文体と言われます。これはおそらく、小説を書くだけでなく、和歌に親しんでいたことも影響しているのでしょう。

一句、一葉の和歌を紹介します。

わかれんと 思ふばかりも 恋しきを いかにかせまし 逢はぬ月日を

「いっそ別れようと思うばかりに恋しい想いをどうしたらいいのでしょう。逢わない月日をどう過ごしましょう」

樋口一葉の名言

樋口一葉は恋愛に関する名言が多い

あはれその厭う恋こそ恋の奥なりけれ

これは、桃水と別れた頃の一葉の日記に記されていた言葉です。一葉の恋愛観を現した言葉でもあります。桃水と別れて一年が経っても、一葉は彼のことを想い続けていました。それは苦しく辛いことだったのでしょう。

一葉は、苦しく辛くとも想い続けることこそが本当の恋「厭う恋」であると上記の文章で言っています。

我は人の世の痛苦と失望をなぐさめんために、生まれ来つる詩のかみの子なり

こちらも一葉の日記に書かれていた言葉です。こちらは己を鼓舞する言葉と言えるでしょう。作品を書けども書けども貧困から抜け出せず、それでも書き続けた一葉。この文面からは執念にも似た決意の強さが伝わってきます。

一葉が文学史に残る傑作を残せたのは、本人の才能や努力もありますが、こういった心の強さも要因の一つと言えるのではないでしょうか。

只世にをかしくて、あやしく、のどかに、やはらかに、悲しく、おもしろきものは”恋”とこそ言はめ

これも一葉の恋愛観を表したものです。恋というのは、楽しく危なく悲しくのどかで気分良く面白いものと、一葉は言っています。この一文だけでも、恋という一文字が持つ複雑な感情が伝わりますね。

恐ろしきは涙の後の女子心なり

涙を流した後の女性は恐ろしい、そんな話を耳にする方もいるのではないでしょうか。特に別れを切り出され、そこに女性の影があるとなお恐ろしいと言います。女性関係だけに限ったことではありませんが、誰かの恨みをかうようなことは避けましょう。

特に女性からの愛を裏切れば、何倍にもなって返ってくること間違いなしです。

樋口一葉にまつわる逸話

逸話1「謎の占い師に経済的援助を頼んだ」

一葉が訪問した占い師「久佐賀義孝」

一葉は経済的困窮に見舞われる中、パトロンを得ようとして、久佐賀義孝という占い師の元をいきなり訪問します。久佐賀は朝鮮や清・印度を歴訪し、東京に「顕真術会」なるものを創設した謎の多い人物ですが、一葉は彼をいきなり訪問し、自分の苦境を訴えました。

創作に没頭するため、久佐賀をパトロンにしようという意図が一葉にはあったようですが、月々のお金と引き換えに体を要求された一葉は日記で憤慨しています。

真意ははっきりしませんが、一葉は金に困らず自由に創作するという望みを叶えるため、かなり大胆なアクションを起こしていたようです。

逸話2「森鴎外にリスペクトされた」

森鴎外からリスペクトを受けた一葉

森鴎外は一葉の作品を大変高く評価しました。鴎外の一葉愛は、一葉の死後も噴出します。樋口家は経済的困窮のため、一葉に立派な葬儀を出してやることができず、体裁を重んじた一葉の母は弔問客を一切断りました。

しかしどうしても一葉に弔意を表したかった鴎外は、一葉の葬送の列に加わることを申し出ます。しかも軍人だった鴎外は、最も格式が高い軍服で騎乗して棺に付き添いたいと申し出たそうです。これに驚いた樋口家は謹んで辞退しました。

そのため鴎外はひっそりと一葉の棺を見送り、弔意を表すために大ろうそくを贈ったということです。鴎外の一葉に対する思いが溢れた逸話です。

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