プラトンの生涯年表
紀元前427年 – 0歳「プラトン政治一家の家庭に生まれる」
王族の血筋に生まれる
紀元前427年5月に、プラトンはアテナイから20キロほどあるアイギナ島に誕生します。彼は、アテナイ最後の王コドロスの血筋を引く一族の三男に生まれました。彼の家族構成は以下の通りです。
- 父:アリストン
- 母:ペリクティオネ
- 姉or妹:ポトネ
- 兄:グラウコン
- 兄:アデマントス
- 義父:ピュリンランペス
- 異父弟:アンティポン
兄については15歳以上も歳が離れていたことが分かっていますが、どちらが長男なのかは分かっていません。また、父アリストンはプラトンが2~3歳の頃に亡くなっており、母ペリクティオネはピュリンランペスと再婚しています。そして、異父弟のアンティポンが生まれました。
20歳ごろにソクラテスと出会う
明確な年月日は不明ですが、プラトンが20歳の頃に師のソクラテスと出会います。プラトンは悲劇を題材にした創作を賞に応募するため、ディオニュソス劇場に向かっていました。そこで、偶然ソクラテスが劇場の前で対話をしており、その教えを耳にしたプラトンは感銘を受けます。
その勢いのまま、彼は当時50歳半ばだったソクラテスに弟子入りを申し出たのです。その時、あまりの衝撃的な出会いにより、彼は自身が書いた原稿をそのまま火中に投げ入れたと言われています。
紀元前399年 – 28歳「ソクラテスが死んだことで、政治の道を諦める」
ソクラテスの死
当時アテナイは、三十人政権が国を収めていました。三十人政権とは、30人の僭主が国を統治している内政のことです。三十人政権のメンバーには、プラトンの叔父カルミデスや、母のいとこクリティアスもいました。
当初は新しい政治の形に期待を膨らませていたプラトンやアテナイの人たちでしたが、次第に独裁政権が敷かれるようになります。その被害に遭ったのが、ソクラテスです。彼は「若者をアテナイの神へ信奉させず、新たな神を信奉させた」というあらぬ罪を被せられます。
そして、その判決が覆ることはなく、彼は毒を飲んで亡くなりました。この出来事が、プラトンに政治に対し大きな失望を覚えたのは間違いないでしょう。王族の家系であったこともあり、彼は政治家を目指していましたが、ソクラテスの死という理不尽さを垣間見て、哲学者の道に進むことを決めます。
紀元前388年 – 39歳「第1回シチリア旅行」
ピタゴラス派のアルキュタスと出会う
ソクラテスの死後、メガラ(ギリシャ)に逃げたプラトンは、3度の従軍を経験します。その後、イタリア、エジプト、シケリアを訪れます。
イタリアでは、ピタゴラス派のアルキュタスと出会い友人になりました。後にこの出会いが、プラトンの危機を救ってくれます。さらに、エレア派とも交流を持ったと言われていますが、詳細は不明です。
青年ディオンと出会う
シケリア島(現在はシチリア)を訪れたプラトンは、当時の僭主ディオニュシオス1世に歓待を受けました。ディオニュシオス1世にはプラトンの教えは理解されませんでしたが、彼の娘婿であるディオンからは尊敬の念を向けられます。
プラトンにとっても、ディオンとの出会いは今後の出来事に大きく影響していきます。
紀元前387年 – 40歳「アカデメイア設立」
哲学を学ぶ大学を初めて作った
シケリア旅行から帰ったプラトンは、英雄アカデモスを祀るアテナイ北西部郊外の神域に、哲学を学ぶ場所としてアカデメイアを設立します。授業内容は、おもに算術や幾何学などで、入り口の門には「幾何学を知らぬ者、くぐるべからず」という額が飾られていました。
アカデメイアは、およそ900年も開校し続け、アリストテレスなどの有名な哲学者を生み出します。
20ムナーの行方
プラトンの都市伝説で、彼が奴隷として売られた話をしましたね。その話には、じつは続きがあります。プラトンの友人は彼に20ムナーを返そうとしました。友人のためにお金を使わしてしまったのですから、当然の行いでしょう。
しかし、それを彼は受け取ろうとしませんでした。また、ディオンがそのお金を送ったとも言われていますが、アンニケリスは受け取らず、アカデメイアに隣接する庭園の購入に振り当てられたそうです。
紀元前367年 – 60歳「2回目のシケリア旅行」
ディオンに請われて再びシケリアに
シケリアでは、ディオニュシオス1世の息子であるディオニュシオス2世が僭主になっていました。しかし、ディオニュシオス1世は息子を隔離するような生活を送っていたため、息子には僭主としての能力が備わっていなかったのです。
そこで、かつて自分に多くの影響を与えてくれたプラトンに、ディオンは指導してくれるように頼みます。そして、プラトンは再びシケリアへと旅立ったのでした。
ディオンは反逆の罪を着せられ、プラトンは囚われの身に
ディオニュシオス2世に教育を施すうえで、それを気にくわなかった者たちがいます。それが、彼を良いように使っていた部下たちです。彼らは、プラトンをけしかけたディオンを排除しようと画策します。
そして、ディオニュシオス2世に、彼が謀反を企てているなどというデタラメなことを告げたのです。それを受けたディオニュシオス2世は、彼を小舟に乗せ、シケリア島から追い出します。ようするに、島流しですね。
そして、ディオンに請われてやってきたプラトンは、アクロポリスの城門内に護衛付きで移されます。実質、囚人のような扱いになったわけです。その後、ディオニュシオス2世は彼と話していくうちに、純粋に尊敬の念を覚えるようになりました。
ずっと教えを受けたいと思っていましたが、カタルゴとの戦争が再会されたために、やむなくアテナイに返すことになります。しかし、戦争が落ち着いたら再びシケリアを訪れるという約束を取り付けました。
この時、ディオンも国に戻すという約束もしましたが、あいにくそれが果たされることはありませんでした。
紀元前361年 – 66歳「3回目のシケリア旅行」
約束通りシケリアに来たプラトン、今度は政争に巻き込まれる
ディオンがシケリアの地を踏むことはありませんでしたが、約束通りプラトンは3度目のシケリアを訪れます。ディオニュシオス2世から歓待を受けたようですが、すぐに政争に巻き込まれてしまい、プラトンはアクロポリスの外にあるアルケデモスの屋敷に軟禁されてしまいました。
アテナイに帰れない状況が続き、プラトンは1回目のシケリア旅行で出会ったアルキュタスに助けを求めます。プラトンの助けに答え、アルキュタスはディオニュシオス2世を牽制しました。
そのおかげで、プラトンはアテナイへと帰ることに成功します。しかし、またもディオニュシオス2世の教育は失敗に終ってしまったわけです。
紀元前353年 – 74歳「ディオン暗殺により哲人統治の夢が終わる」
長年の夢だった哲人統治が叶わなくなる
プラトンは良い国家を作るためには、善のイデアを知った哲学者が王となるべきだと考えていました。つまり、多くの知識を知り尽くした者が統治者になることで、良い国家ができると思ったのです。この哲人統治については、彼が執筆した『国家』に詳しく書かれています。
それに最も近いと思われていたのが、ディオンでした。しかし、ディオンはディオニュシオス2世との内戦中に、カリッポスというアテナイ人の友人に暗殺されてしまいます。これにより、生涯のうちに哲人王が国をおさめる姿を見れる可能性がなくなりました。
紀元前347年 – 80歳「自身の著作と教育に力を入れて亡くなる」
亡くなるまで教育に力を入れていた
3回目のシケリア旅行から、プラトンがどのような生活をしていたのかについての記録は、残念ながらありません。ただ、高齢になっていたのもあり、アカデメイアの教育と著作に力を入れていたのは確かでしょう。
紀元前347年、ちょうど80歳になった年に、プラトンは亡くなりました。どのような死因かは分かっていませんが、おそらく病死か老衰だったでしょう。
プラトンの関連作品
おすすめ書籍・本・漫画
国家
プラトンの代表作です。「正義」とは何かを国家という大きな枠組みで考え、どうすれば善い国になるのか、そのために必要なことは何かを述べており、イデア論についても書かれています。
饗宴
宴の席でエロスという概念について述べている本です。簡単に言えば恋愛話ですね。『饗宴』の翻訳としては、もっとも読みやすく書かれています。恋愛についての本なので、手始めとして読んでみると良いでしょう。
マンガで読む名作 ソクラテスの弁明
ひたすら文字を読み続けるのが辛いという人には、マンガから入ってみると良いでしょう。『ソクラテスの弁明』というプラトンの作品を、マンガで分かりやすく描かれているので、頭の中に内容がスーッと入ってきます。
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100分de名著 「饗宴 プラトン」(2013年)
プラトンの著作『饗宴』について解説しています。伊集院光と武内陶子をコメンテーターに、分かりやすいVTRで世界最古の恋愛論を語っています。
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ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ
ロック歌手を夢見るヘドウィグが、「真実の愛」を探すストーリーです。『饗宴』がモチーフになっており、同性愛などの偏見を抜きにて見ることをおすすめします。演技、合間にあるミュージカル、人間模様などに心奪われます。
関連外部リンク
プラトンについてのまとめ
プラトンは、善い哲学者が増えるようにと、アカデメイアを設立しました。彼が生きている内に夢が叶うことはありませんでしたが、後世にプラトンの意思を継ぐ哲学者を多く輩出します。
彼の作品がおよそ2400年経った今も読まれているのは、それだけ彼の思想は現代でも通ずるところがあるのでしょう。これを機会に、ぜひプラトンに興味を持ってみてはいかがでしょうか。