三島由紀夫とはどんな人?生涯&年表まとめ【代表作品や死因、功績も紹介】

決行前夜

自衛隊市ケ谷駐屯地での衝撃的な事件の1週間前、三島は楯の会の森田・小賀・小川・古賀と共に半蔵門の東条会館で記念撮影をしました。

そして三島を含むメンバー5人は、11月23日、24日にパレスチナホテルの一室で蹶起のための行動訓練を行い、辞世の句を書きました。その後、新橋の料亭で最後の宴を行っています。また24日には、三島は旧知のマスコミ関係者に連絡を取り、明日10時頃、自分が希望する場所に来てほしいと連絡をしました。

決行の日

バルコニーにいる三島

11月25日、午前8時に起床した三島は、「天人五衰」最終回の原稿を「新潮」の編集者に渡すように手伝いの女性に託して出かけました。楯の会の制服を着用し、軍刀のように拵え直した日本刀とアタッシュケースを手にしていました。三島は、決行メンバーの小賀・古賀・小川に向けて、3人は決行後も生きながらえて法廷で楯の会の精神を陳述するよう命じた文書と現金を渡しました。

10時58分に 陸上自衛隊市ケ谷駐屯地の正門を通過しました。予てから訓練参加などを通じて自衛隊幹部と深い関わりを持っていた三島は、怪しまれることもなく総監室に案内されました。益田兼利総監が三島と談話するその隙を狙って、小賀らが総監を拘束、総監を人質にとって「要求を呑めば総監の命は助ける」と要求書を出しました。

自衛隊の説得に三島らが応じなかったため、自衛隊側は協議の結果、要求の1つにあった、自衛隊員に向けた三島の演説を認め、全隊員を本館前に集めました。総監室前のバルコニーに立った楯の会のメンバーは、6項目の要求を書いた垂れ幕を下げ、檄文を撒きました。12時、三島がバルコニーに現れ、檄文と同じ内容の演説を行いました。

三島由紀夫の自決

三島は戦後憲法の改正の必要性を訴えました。自衛隊を国軍とするためには憲法改正が必要で、そのための行動を共に起こそうと訴えかけますが、異変を聞きつけたマスコミのヘリコプターの爆音や自衛隊員から発せられる野次や怒号に遮られ、12時10分に演説を打ち切りました。三島は森田とともに皇居に向かって「天皇陛下万歳」と三唱後、総監室に戻り切腹して自決を果たしました。

切腹の前に三島は、人質に取った総監に向かって「恨みはありません。自衛隊を天皇にお返しするためです」と言ったそうです。

切腹した三島の介錯は森田が行いましたが、何度か刀を下ろすものの果たせず、結局古賀が果たしました。その後、森田も切腹、古賀が一太刀で介錯を果たしました。

残った3人は、2人の遺体を仰向けにして制服をかけ、首を並べて合掌の後、総監室を出て刀を自衛官に渡し警察官に逮捕されました。

三島由紀夫の死因は?三島事件とは?経緯や背景にある思想も解説

三島事件後

11月26日慶應大学法医学教室で解剖を終えた三島の遺体が自宅に帰り、自宅で密葬が行われました。
遺言により遺体には楯の会の制服を着せ、刀が添えられました。その日のうちに東京桐ケ谷の火葬場で荼毘に付されました。戒名は「彰武院文鑑公威居士」。

12月11日有志により、「三島由紀夫氏追悼の夕べ」が池袋豊島公会堂で開かれました。また1971年1月
24日には、葬儀委員長を川端康成がつとめ、築地本願寺で葬儀が執り行われました。警視庁の調べでは一般参列者は8200人にものぼったということです。

1月26日三島由紀夫研究会が発足し以後、「憂国忌」の開催など行っています。

三島由紀夫の関連作品

おすすめ書籍・本・漫画

仮面の告白

作家としての三島が評価を確立した作品です。自己の性欲の目覚めを告白的に語るというスタイルは、森鴎外の「ヰタ・セクスアリス」を思い起こしますが、鴎外があくまでも自己の制欲を分析的に乾いた視点で対象化したのに対し、三島の「仮面の告白」は自意識の底を抉り出すような作品になっています。

若きサムライのために

三島は「若者よ、高貴なる野蛮人たれ! 」と平和ボケや現状肯定を批判します。挑発的に語る三島の声に今こそ耳を傾ける時かもしれません。三島作品の中では、わかりやすい文体なので、おすすめです。

福田赳夫、福田恒存との対談は、非常に興味深いです。全共闘・反安保闘争が繰り広げられていた時代に書かれたものなので、その時代を知る材料になるのはもちろんですが、三島のメッセージの核は現代でも色褪せません。

三島由紀夫と最後に会った青年将校

三島に関する評論は文学サイドのものが圧倒的に多いのですが、この作品は自衛隊関係者による証言であり、三島の最後の行動を知る上で、非常に興味深いものです。著者は防衛大教授としての経歴もあり、その立場から三島の防衛論や日米安保体制への認識を相対化しています。最後の行動に向け、何が三島を突き動かしたのかその疑問にかられたなら一読したい作品です。

おすすめの動画

【HD映像】三島由紀夫 – “三島事件”最後の演説

三島の市ケ谷駐屯地での歴史的な演説です。決死の覚悟で演説を行う三島の声がヤジや怒号でかき消されてしまうことに、悲しさを感じます。幸いなことに映像として残た三島のメッセージは、戦後をまるで知らない今の若者にどう響くでしょうか。

三島由紀夫・伝説の討論会1/5 50年ぶり秘蔵映像発掘「VS東大全共闘」#1

三島は、東大全共闘を相手にした討論会に大変な気概を持って臨んだようです。護衛を拒否しましたが、その実、平穏に終わるとは思っていなかった言います。幸い身の安全が脅かされるようなことはありませんでしたが、表面的には対局にある全共闘との討論は、歴史的にも貴重な資料で、1960~70年代のまさに政治の季節の熱さを感じます。

おすすめの映画

「憂国」

三島が自主制作した短編映画です。忠誠と死とエロスというテーマを、幽玄な能の形式を用いて表現しています。海外でも高い評価を受けた作品で、三島の美意識の結晶を観ることができるでしょう。しかし、痛みや流血に弱い人は視聴要注意です。

「三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実」

この映画は2020年3月20日(金)に全国公開されます。1969年5月に東京大学駒場キャンパスで行われた作家・三島由紀夫と東大全共闘との討論会を軸にしたドキュメンタリーで、当時の関係者や現代の識者たちの証言とともに、三島の人物像が検証されます。ナビゲーターは東出昌大、監督は豊島圭介です。

おすすめドラマ

「命売ります」

三島の小説「命売ります」は1968年に発表されました。原作はユーモラスで娯楽要素の強いエンターテインメント小説です。「週間プレイボーイ」に連載されていたということで男性うけのよい内容です。

関連外部リンク

三島由紀夫についてのまとめ

三島由紀夫と同時代を生きた人たちに、私はなんとなく嫉妬を覚えます。ノーベル文学賞の候補に上がるほどの小説家でありながら、ボディビルダー・映画俳優・写真モデル、そして国の進路を悲憤慷慨する思想家で行動家。そのどれもが特有の美意識で貫かれており、自分の人生そのものを作品として完結させた、そんな存在は他にちょっと思い浮かびません。

私は美輪明宏さんの舞台「近代能楽集」を観に行ったことがあります。三島由紀夫がその美しさに惚れこんだ美輪さんによる演技と美しい世界観に鳥肌が立ちました。

三島の死から50年たつ今こそ、自分が理想とする究極の美意識に殉じた三島由紀夫の文学・映画・舞台・思想がより活発に再評価されることを期待します!

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