「モンサンミシェルってなに?」
「モンサンミシェルの特徴は?」
「モンサンミシェルの歴史について知りたい!」
この記事をご覧のあなたはそのようなことをお考えではないでしょうか。モンサンミシェルは「海に浮かぶ修道院」として有名なフランスの修道院です。カトリックの巡礼地の一つで、モン・サン=ミシェルとも表記されていますね。
サン=マロ湾に浮かぶ小島に建てられたため、満潮時には海上に孤立します。海面からそびえたつ威容は見るものに畏敬の念を抱かせたでしょう。そんなモンサンミシェルにはオムレツやジャンヌダルクに関するエピソードもあるんです。
今回は「西洋の驚異」と称えられたモンサンミシェルの特徴や立地条件、エピソード、歴史などについてまとめます。
この記事を書いた人
一橋大卒 歴史学専攻
Rekisiru編集部、京藤 一葉(きょうとういちよう)。一橋大学にて大学院含め6年間歴史学を研究。専攻は世界史の近代〜現代。卒業後は出版業界に就職。世界史・日本史含め多岐に渡る編集業務に従事。その後、結婚を境に地方移住し、現在はWebメディアで編集者に従事。
モンサンミシェルとは
モンサンミシェルとは、コタンタン半島とブルターニュ半島に挟まれたサン=マロ湾内の小島に作られた修道院です。フランス語で「モン」は山、「サン・ミシェル」は聖ミカエルのことで、モンサンミシェルは聖ミカエルの山という意味になります。
モンサンミシェルの中央には修道院が建っており、地上から修道院の塔上にある大天使ミカエル像までの高さはなんと150m。下から見上げると、その荘厳なたたずまいに圧倒されてしまうでしょう。
修道院は3つの階層から成り立っています。下層部にあるのは大階段や庭などです。その次の中層部には騎士の間や迎賓の間、死者を安置する聖エティエンヌ礼拝堂、創建当初のたたずまいを残す聖マルタン(マルティヌス)礼拝堂などがあります。そして、最上層部には修道院付属の教会や修道院長の部屋などがつくられました。
ロマネスクとは?建築・様式について簡単に解説【ゴシックとの違いや代表作も】
増改築が繰り返されたモンサンミシェルには様々な時代の建築様式がみられます。特に最上層部にある修道院付属教会には、本堂北側のロマネスク様式の部分や15~16世紀のゴシック様式で内陣があり、建築の歴史を知れますね。
一時、修道院が廃止され軍事施設に転用されましたが、その後修復され修道院としての機能を回復。1979年に世界遺産に指定されたモンサンミシェルは、フランス屈指の観光名所として多くの観光客を集めています。
モンサンミシェルの3つの特徴
1.もともとはケルト人の聖地
モンサンミシェルが建てられた島は、もともとケルト人の聖地とされた場所でした。ケルト人とは、アルプス以北に居住していた先住民族です。古代ローマ人はフランスに住むケルト人を「ガリア人」とよびました。
彼らは現在、モンサンミシェルの土台となっている島を「モン・トンブ」(墓の山)と呼んで信仰しています。ケルト人はドルイドとよばれる神官が祭祀を行う自然崇拝の宗教です。特定の山や川は彼らの信仰対象となるので、モンサンミシェルの土台の島となったモン・トンブもその一つだったのでしょう。
2.大天使ミカエル(ミシェル)のお告げで誕生
モンサンミシェルは大天使ミカエルのお告げによって誕生したとされます。708年、近隣のアヴランシュの司教だったオベールの夢に大天使ミカエルが現れ、「この岩山に聖堂を建てよ」と命じました。
しかし、オベールは夢のお告げが本当かどうか疑い、全く動きませんでした。すると、ミカエルはまた夢に現れ、「聖堂を建てよ」と繰り返します。ミカエルは3度オベールの夢に現れましたが、彼はお告げを信じませんでした。
全く動こうとしないオベールに苛立ったミカエルは、オベールの額に指を触れて強く命じます。翌朝、稲妻が走るような衝撃を受けて目覚めたオベールは自分の額にミカエルの指によってつけられた穴を発見し驚愕。ようやくお告げに従い島に聖堂を建てました。
3.1979年に世界文化遺産登録
モンサンミシェルは1979年に世界文化遺産に指定されました。指定された理由は、モンサンミシェルが建築上の傑作であり非常にまれなものであると考えられたからです。
モンサンミシェルには各時代の建築様式が用いられています。修道院北側の「ラ・メルヴェイユ」にはゴシック建築が、修道院付属教会にはロマネスク様式が用いられており、修道院に至る参道には19世紀に建てられた宿屋や飲食店がそのままの姿を残していますね。
西洋のあらゆる時代の建造物が共存しているという点でモンサンミシェルはとても素晴らしい建造物群だといえます。そのため、世界文化遺産に登録されたといってよいでしょう。