「ヒップホップとラップは何が違うんだろう?」
「レゲエやR&Bもヒップホップの一種なの?」
日本や世界で根強い人気を誇るヒップホップやラップ。90年代から現在に至るまで、ヒップホップやラップの分野では多くのヒット曲が生まれています。
ただ、ヒップホップとラップを混同している人も多いのではないでしょうか。実のところ、ヒップホップとラップには決定的な違いがあるのです。
この記事では、ヒップホップとラップの違いを、それぞれの意味や生まれた起源・ルーツも交えわかりやすく解説します。また、ヒップホップやラップに近しい音楽や日本を代表するヒップホップアーティストも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
この記事を書いた人
Webライター
Webライター、吉本大輝(よしもとだいき)。幕末の日本を描いた名作「風雲児たち」に夢中になり、日本史全般へ興味を持つ。日本史の研究歴は16年で、これまで80本以上の歴史にまつわる記事を執筆。現在は本業や育児の傍ら、週2冊のペースで歴史の本を読みつつ、歴史メディアのライターや歴史系YouTubeの構成者として活動中。
ヒップホップとラップの違いとは?
結論からいえば、ヒップホップは「ニューヨーク発祥の文化」であり、ラップは「歌唱法」を指します。同語のように思われていますが、実は意味合いは異なります。
ヒップホップはミュージックやダンス、ファッションなどの幅広いカルチャーであり、ラップはヒップホップにおけるカテゴリーの一つに過ぎません。ちなみにヒップホップのヒップとは「とんでいる」、ホップは「跳躍する」などの意味があります。
ヒップホップの特徴とルーツ
ヒップホップは、1970年代にニューヨークのサウスブロンクスというスラム街で誕生しました。この地にはストリート・ギャングの他、貧困なアフリカ系アメリカ人の若者達が多く住んでおり、彼らは当時流行りのディスコに行く事ができませんでした。
やがて若者達は公園に集まり、パーティーをするようになりました。このパーティーのBGMは家から持ってきたレコードです。ちなみにレコードが用意できない場合は、口や身体でリズムを刻む事もありました。
このパーティーでは「DJ」がターン・テーブル(レコード・プレーヤー)を街灯のコンセントに差し込み、その音楽に合わせてMCが「ラップ」を披露。更に「ダンサー」が踊り、「グラフィティアーティスト」が建物や列車に絵を描きました。
このパフォーマンスがヒップホップのルーツとされています。やがてヒップホップは、ニューヨークだけでなく世界中で支持され始め、音楽やファッションなどのあらゆる分野に影響を与える事になりました。
ヒップホップにおけるラップとは
ラップはバックビートや伴奏に韻(ライム)を踏み、口語に近い抑揚をつけて発声する歌唱法で、ラップをする人をMCやラッパーと呼びます。「韻を踏む」とは発音が似ている言葉を合わせて使う事であり、代表的な英語と日本語のライムは以下の通りです。
The rose is red, the violet’s blue,
sugar is sweet, and so are you.薔薇は赤く、すみれは青い。
Wikipedia
砂糖は甘く、そしてあなたも。
こちらの詩は「blue」と「you」と似た音韻の単語を語尾に合わせる事で、心地のよいリズムを生み出しています。
ずっと今まで勝手気ままで
うたまっぷ
やってきただけ なんて幸せ
年齢なんて無関係
やっぱ安定なんてつまんねぇ(よ)
お隣の友達もおとなしい大人になり
ここぞとばかり 小言ばかり
あいにくオレは物わかりのわりい方
遊ぼうぜアミーゴ
こちらの歌詞はKICK THE CAN CREWの「アンバランス」の歌詞ですが、同じ音韻の言葉が続いています。ただ、単に同じ音韻の言葉を並べるのではなく、その文章に意味を持たせるのがラップの醍醐味です。
またラップには用意した歌詞(リリック)ではなく、即興で歌詞を作り、その歌手と技術を競う「フリースタイル」と呼ばれる手法もあります。一つのテーマに合わせ、似た言葉を集めて意味のある文章にする必要がある為、奥深い手法です。
ちなみにラップが日本に輸入されたのは1980年頃の事。日本語は英語と文法や発声法が異なる為、従来の喋り言葉とはかけ離れた語調や文章になります。海外と日本、双方のラップを聴き比べる事で、それぞれのラップが「似て非なるもの」だとわかるでしょう。