ヒップホップやラップに近しい音楽
ヒップホップの概念について解説しましたが、この他にも似たようなジャンルの音楽は存在します。その違いについてわからない人もいるのではないでしょうか。最後に以下の音楽の概論について解説していきますね。
- レゲエ
- R&B
- ニューウェーブ
レゲエ
レゲエは1960年代にジャマイカで生まれた音楽です。現在ではDJでトラックを流す事もありますが、元々はバンド演奏が主体。ギターの裏打ち、独特のベースライン、裏拍でドラムがキックを踏むなどの特徴があり、トランペット等の管楽器が加わる事もあります。
ヒップホップミュージックが打ち込みを中心としたトラックに「韻を踏んだラップ」を乗せるのに対し、レゲエは楽曲に合わせたメロディをつける事が多く、韻を踏む事はそれほど重視されません。またレゲエ特有の歌うような歌唱法を「ディージェイ」と呼びます。
なお、ヒップホップはカルチャーであるのに対し、レゲエは音楽を指します。ヒップホップにおけるラップと、レゲエの歌唱法であるディージェイが似ている為、混同する人が多いのかもしれません。
日本では1970年代からレゲエを取り入れた音楽が制作されています。2000年代に入るとケツメイシや三木道三が人気を博し、レゲエは日本のメジャーシーンに躍り出ます。
ただ同時期にRIP SLYMEやKICK THE CAN CREW等もブームとなった為、両者を混在する人も少なからずいたようです。
R&B
R&Bは「Rhythm&Blues」の略称で、ブルースやゴスペルなどのブラックミュージックから派生した音楽です。都会的なリズムや打ち込みの強いビートに、ブルース感の強いメロディが特徴で、ラップと異なり韻をそれほど意識せず、スローテンポで歌われます。
R&Bは1940年代にニューヨークやシカゴに居住する黒人から発祥し、1970年代にはソウルやファンクの音楽的要素を取り入れるようになります。現在のR&Bの原型が誕生したのは1980年代であり、日本でも久保田利伸などが活躍しました。
なお、ラップもレゲエも元を辿れば、ブルースなどを元にしたR&Bを下地にしています。これらの音楽は兄弟関係にあり、三者が似通っているのは偶然ではありません。
近年ではR&Bがラップや打ち込みの要素を逆輸入する事も多く、それぞれの音楽はさらなる進化と深化を続けています。
ニューウェーブ
ニューウェーブは1970年代後半のイギリスで、ポストパンクやディスコ、現在音楽や電子音楽を取り入れたロックンロールです。当時のイギリスはパンクロックの流行でハードロックが停滞しており、その派生からニューウェーブが生まれました。
ニューウェーブはロックの一つのジャンルに過ぎません。ただニューウェーブとラップの誕生の時期は似ており、ニューウェーブの人達はラップ特有のリズムなどを自らの音楽に取り入れていきました。
ニューウェーブの代表的存在であるセックス・ピストルズは、DJのアフリカ・バンバータとプロジェクト・かいせひタイムゾーンという大会に参加するなど、親交を深めていきます。
日本ではサカナクションがニューウェーブの流れを汲み、数々のヒット曲を生み出しました。彼らの楽曲にラップを盛り込んだ曲はありませんが、ヒップホップのトラック特有のベースラインを盛り込んだ楽曲もあり、ヒップホップの影響も少なからず受けています。
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ヒップホップとラップの違いに関するまとめ
今回は、ヒップホップとラップの違いを、それぞれの意味や生まれた起源・ルーツも交えて解説しました。ヒップホップは音楽やダンス、アートなどを包括したカルチャーであり、ラップはヒップホップ特有の歌唱法です。
ニューヨークの路地裏で生まれたヒップホップは、やがて世界を牽引する文化となりました。ヒップホップがここまで知名度を得たのは、先人達がヒップホップに真摯に向き合っていた事、それを啓蒙する事に邁進していた事が大きいでしょう。
日本にも数々の有名なヒップホップアーティストがいるので、興味のある人はこの機会に触れてみてはいかがでしょうか。今回の記事がそうした入り口になれば幸いです。