「公安と警察の違いって何?」
「実際、公安はどんな仕事をしているの?」
刑事ドラマなどで「公安」という組織を聞いた事がある人のなかには、公安が警察の一部なのか、別の組織なのか、気になる人も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では公安と警察の違いを、それぞれの仕事内容も交えわかりやすく解説します。また、公安や警察によく抱く疑問にもお答えするので、ぜひ参考にしてください。
この記事を書いた人
Webライター
Webライター、吉本大輝(よしもとだいき)。幕末の日本を描いた名作「風雲児たち」に夢中になり、日本史全般へ興味を持つ。日本史の研究歴は16年で、これまで80本以上の歴史にまつわる記事を執筆。現在は本業や育児の傍ら、週2冊のペースで歴史の本を読みつつ、歴史メディアのライターや歴史系YouTubeの構成者として活動中。
公安と警察の違いとは?
結論、公安は警察組織の一部です。したがって公安の職員も警察官という点では同じです。
警察組織の中で、「国家に対する反社会的な活動を取り締まる警備警察」の役割を担うのが公安です。警視庁や各都道府県に勤める警察官の中で、警察庁の場合は警備局、警視庁の場合は公安部、各都道府県の警察本部警備部に所属する人が公安警察官となります。
公安の取り締まり対象は、テロや政治犯罪、外国による対日工作などが挙げられます。情報を外部に漏らす事は許されず、他の部署の上層部すら公安の職務内容は知りません。
ちなみに、公安と呼ばれる組織は警備警察以外にも、警察組織を管理する「公安委員会」と、行政機関である「公安調査庁」があります。刑事ドラマなどで取り上げられるのは、最初に解説した「警備警察」であり、今回はこの警備警察について解説していきます。
公安の主な仕事内容
謎に包まれた公安ですが、その仕事内容は多岐にわたります。主な仕事内容は下記のとおりです。
- 公安捜査
- 外事情報部
- チヨダ
- 公安機動捜査隊
仕事①:公安捜査
公安捜査は、捜査対象の団体の違法行為の有無を調査する業務です。主な業務は捜査対象団体の集会の視察や、構成員を追跡など。捜査を行うのは、警視庁公安部や各道府県警察本部警備部に所属する「作業班」と呼ばれる公安警察官です。
一連の捜査は事件発生後ではなく、「事件を阻止する為」に行われています。捜査員がどこに紛れ込んでいるのか、何を調査しているのかは公になりません。暴力団やデモ団体、宗教団体の他、政党や自衛隊、大手メディアも捜査対象という噂もあります。
寝返りそうな構成員を、酒や食事で懐柔して協力者に仕立て情報共有する事は朝飯前。対象者が(公安捜査時点で)犯罪行為を行なっていない場合は、対象団体の所属者を別件で逮捕し、対象団体の家宅捜索をする事もあります。
諜報や盗撮を行う事もあり、一連の行為が人権侵害だと訴えられる事もありました。逆説的に言えば、「こうした捜査が行われているからこそ、日本の治安が守られている」とも言えます。
仕事②:外事情報部
外事情報部は警察庁警備局の一部門で、外事課と国際テロリズム対策課が存在します。外事課の外事技術調査室は、諸外国のスパイ活動を阻止する為、日本国内の諜報通信の傍受、暗号解などを担当します。
彼らは外国から発信される通信や、国内の工作員の通信内容を把握。また各都道府県に配属された外事課の警察は、不法滞在や外国人犯罪の捜査がメインです。
もう一つの国際テロリズム対策課は、国際テロ捜査を担当します。近年では、生物化学テロやサイバー攻撃など、テロは巧妙かつ複雑化しており、彼らの役割は重要です。
仕事③:チヨダ(ゼロ)
チヨダは公安で集められた情報を総括する業務です。彼らは警備局警備企画課に所属し、前述した作業班と呼ばれる公安警察官に指示や教育を行います。作業班達が捜査の過程で協力者を獲得したい場合、チヨダに申請する必要があります。
ちなみに彼らがチヨダと呼ばれるのは、警察庁警備局が東京都千代田区にある為で、現在でも正式な名称はわかりません。チヨダの存在が明るみに出たのは、オウム真理教事件などで公安の存在がクローズアップされた頃です。
ちなみに近年では公安の中でチヨダという名前が使われていません。2000年頃からは「ゼロ」という名前で呼ばれ始めているそうです。
仕事④:公安機動捜査隊
全国に存在する警察組織の中で、最も多くの公安警察官が所属するのが、警視庁の中にある公安部。この公安部に存在するのが、公安機動捜査隊です。公安機動捜査隊は爆発物等を用いたテロ事件の初動捜査や、生物テロなどの研究を担当しています。
彼らの本部は目黒区に存在しますが、要請があれば全国どこでも出動します。海外で大規模なテロが発生した時は、海外に隊員を派遣。これらの経験が、日本のテロ対策に大きく役立っているのです。
意外なところでは右翼団体や左翼団体の街宣活動の騒音の測定も彼らの仕事です。また2011年の福島原発事故では、現場付近の放射能量の測定も行なっています。